厚労省、職場における新型コロナウイルス感染症への感染予防、
健康管理の強化について、経済団体などに協力を依頼
岩田合同法律事務所
弁護士 徳 丸 大 輔
厚生労働省は、令和2年5月14日付けで、「職場における新型コロナウイルス感染症への感染予防、健康管理の強化について」と題する文書を発出し、新型コロナウイルス感染症、健康管理の強化について、経済団体などに協力を依頼した。
当該書面は、①労務管理の基本的姿勢、②職場における感染予防対策の徹底について、③風邪症状を呈する労働者等への対応について、④新型コロナウイルス感染症の陽性者等が発生した場合の対応について、⑤新型コロナウイルス感染症に対する正しい情報の収集等の5つの大項目に分かれている。
このうち、②職場における感染予防対策の徹底についての項目では、「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」[1](以下「本チェックリスト」という。)を提示した上で、本チェックリストを活用し、職場の状況を確認した上で、職場の実態に即した、実行可能な感染拡大防止対策を検討することを求めている。
本チェックリストの項目は下表のとおりであり、それぞれの項目において、具体的な検討点が挙げられている。
大項目 |
1 感染防止のための基本的な対策 |
2 感染防止のための具体的な対策 |
3 風邪症状が出た場合等の対応 |
4 新型コロナウイルスの陽性者や濃厚接触者が出た場合等の対応 |
5 感染防止に向けた行動変容 |
なお、本チェックリストは、職場における新型コロナウイルスの感染症の拡大を防止するための基本的な対策の実施状況について確認することを目的とするものであり、項目の中には、業種、業態、職種等によっては対応できないものがあるかもしれないため、すべての項目を実施できないからといって、対策が不十分ということではなく、職場の実態を確認し、全員(事業者と労働者)がすぐにできることを確実に実施することが大切である旨の注記がされている。
また、確認した結果は、衛生委員会等に報告し、対策が不十分な点があれば調査審議の上改善につなげ、その結果について全ての労働者が確認できるようにすること(衛生委員会が設置されていない事業場においては、事業者による自主点検用とすること)との注記もされている。
この点、本チェックリストに基づく確認結果は、都道府県労働局、労働基準監督署に報告する必要はないとされており、事業者に何らかの法的義務を課すものとは解されない。もっとも、従業員が就業中に新型コロナウイルス感染症に感染・発症し、休業した場合も労災に該当するところ、このような労災が発生した場合における事業者の責任を検討する際には、本チェックリストに基づく検討の実施状況が一つの要素となる可能性はあるように思われる。
5月25日に新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が全面解除されたため、今後、外出自粛や休業要請の緩和に伴い、職場復帰が進められる事業場も多いことが予想されるが、職場における新型コロナウイルス感染症の拡大防止策を検討する上で本チェックリストが有益と思われたため、紹介する。
以 上