会計士協会、「上場会社等における会計不正の動向(2020年版)」を公表
――上場会社等が公表した会計不正を集計――
日本公認会計士協会は7月17日、経営研究調査会研究資料第7号「上場会社等における会計不正の動向(2020年版)」をHPに掲載した(公表は7月15日付)。
本研究資料は、近年の会計不正の動向について、上場会社及びその関係会社が公表した会計不正を集計し、取りまとめたもので、2018年6月26日付の同5号「上場会社等における会計不正の動向」から公表を始めており、今回は、2019年6月13日付の同6号「上場会社等における会計不正の動向(2019年版)」に続く更新版である。
本研究資料では、会計不正の類型を、主に「粉飾決算」と「資産の流用」に分類しており、「2016年3月期から2020年3月期」(以下、「対象期間」という)にかけて各証券取引所における適時開示制度等で会計不正に関する公表のあった上場会社等167社を対象として集計している。
その構成と概要は、以下のとおりである。
「上場会社等における会計不正の動向(2020年版)」の構成
I 総論
1 本研究資料の作成の背景
2 本研究資料の作成の前提事項
II 会計不正の動向
1 会計不正の公表会社数
2 会計不正の類型と手口
3 会計不正の主要な業種内訳
4 会計不正の上場市場別の内訳
5 会計不正の発覚経路
6 会計不正の関与者
7 会計不正の発生場所
8 会計不正の不正調査体制の動向
9 会計不正と内部統制報告書の訂正の関係
【参考】会計不正の定義
「上場会社等における会計不正の動向(2020年版)」の概要
(1) 会計不正の公表会社数
対象期間に会計不正発覚の事実を公表した上場会社等は167社であり、おおむね毎期30社前後であったが、2020年3月期は46社と増加している。
(2) 会計不正の類型と手口
対象期間の会計不正282件のうち、不正の内容が判明するものを分類すると、「粉飾決算」が227件、「資産の流用」が55件であった。
(3) 会計不正の主要な業種内訳
対象期間の167社の会計不正のうち、会計不正が行われた事業が判明しているものを業種別に分類すると、卸売業とサービス業がそれぞれ21社、建設業が18社などとなった。
(4) 会計不正の発覚経路
対象期間の167社の会計不正のうち、不正の発覚経路が判明するものを分類すると、「内部統制等」が45社、「当局の調査等」が27社、「内部通報」が23社、「公認会計士監査」が23社、などとなった。
(5) 会計不正の関与者
対象期間の167社の会計不正のうち、不正の主体的関与者が判明するものを職掌上で分類すると、「役員」が84社、「従業員」が52社、「管理職」が30社であった。さらに、共謀の有無について判明するものを併せて分類すると、「役員及び管理職」の「内部共謀(従業員同士又は管理職や役員の指示の下、会計不正を実行)」によるものが60社、「役員及び管理職」の「外部共謀(協力会社等の外部と共謀して会計不正を実行)」によるものが30社、と多くなっている。
(6) 会計不正の発生場所
対象期間の167社の会計不正のうち、発生場所が判明するもの(重複があるため計170社)を分類すると、「本社」が81社、「国内子会社」が54社、「海外子会社」が35社であった。なお、2020年3月期については、国内子会社及び海外子会社において会計不正が発生する事例が多くなっている。
(7) 会計不正と内部統制報告書の訂正の関係
対象期間に会計不正を公表した167社のうち、84社が内部統制報告書の訂正報告を行っており、このうち74社が「粉飾決算」を理由とし、10社が「資産の流用」を理由としていた。また、不正調査終了後、内部統制の有効性を再評価した結果、内部統制報告書の訂正報告を行った会社の割合は、毎期おおむね50%程度であったが、2020年3月期は例年よりやや低い47.8%であった。
会計士協会、経営研究調査会研究資料第7号「上場会社等における会計不正の動向(2020年版)」の公表について(7月17日)
https://jicpa.or.jp/specialized_field/20200717fcg.html