◇SH3357◇最一小判 令和2年3月19日 不動産取得税賦課決定処分取消請求事件(山口厚裁判長)

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 固定資産評価基準により隣接する2筆以上の宅地を一画地として認定して画地計算法を適用する場合における各筆の宅地の評点数の算出方法

 固定資産評価基準により隣接する2筆以上の宅地を一画地として認定して画地計算法を適用する場合において、各筆の宅地の評点数は、画地計算法の適用により算出された当該画地の単位地積当たりの評点数に、各筆の宅地の地積を乗ずることによって算出される。

 地方税法73条の13第1項、73条の21第2項、388条1項、固定資産評価基準第1章第3節一、二(一)1、別表第3の1、2

 平成31年(行ヒ)第99号 最高裁令和2年3月19日第一小法廷判決 不動産取得税賦課決定処分取消請求事件 破棄自判(民集74巻3号登載予定)

 原 審:平成30年(行コ)第24号 大阪高裁平成30年11月15日判決
 原々審:平成28年(行ウ)第218号 大阪地裁平成30年1月24日判決

1 事案の概要

 本件は、共有地の共有物分割により分筆後の土地に係る他の共有者の持分を取得したX1が、Y(大阪府)の府税事務所長(以下「所長」という。)から不動産取得税賦課決定処分(以下「本件処分」という。)を受けたことについて、X1から訴訟を承継したX2が、上記の取得に対しては地方税法(以下「法」という。)73条の7第2号の3の規定により不動産取得税を課することができず、本件処分は違法であると主張して、Yを相手に、その取消しを求めた事案である。

2 事実関係等の概要

 (1) ア 法73条の7第2号の3は、共有物の分割による不動産の取得に対しては、当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分(以下「持分超過部分」という。)の取得を除き、不動産取得税を課することができないと規定する。

 イ 法73条の21第2項は、道府県知事は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産については、法388条1項の固定資産評価基準によって、不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとすると規定する。

 ウ 固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号。以下「評価基準」という。)は、第1章第3節において、主として市街地的形態を形成する地域における宅地については、市街地宅地評価法によって各筆の宅地について評点数を付設し、これを評点1点当たりの価額に乗じて、各筆の宅地の価額を求めるものとしている。市街地宅地評価法とは、標準宅地の単位地積当たりの適正な時価に基づいて付設した路線価を基礎として、画地計算法(評価基準別表第3)を適用して各筆の宅地の評点数を付設するというものである。

 この画地計算法につき、評価基準別表第3の2は、各筆の宅地の評点数は、一画地の宅地ごとに画地計算法を適用して求めるものとし、この場合において、一画地は、原則として、土地課税台帳又は土地補充課税台帳に登録された1筆の宅地によるものとするが、1筆の宅地又は隣接する2筆以上の宅地について、その形状、利用状況等からみて、これを一体を成していると認められる部分に区分し、又はこれらを合わせる必要がある場合においては、その一体を成している部分の宅地ごとに一画地とするものとしている。そして、同別表の3以下は、路線価に当該画地の状況に応じた所定の補正率を乗じて単位地積当たりの評点数を求め、これに当該画地の地積を乗じて当該画地の評点数を求めるものとしている。ただし、隣接する2筆以上の宅地を一画地として認定して画地計算法を適用する場合に、各筆の宅地の評点数をどのように算出するかについて、評価基準は明示的な定めを置いていない。

 (2) ア X1及びその弟であるX2は、大阪府内の土地を持分各2分の1の割合により共有していた。両名は、同土地の共有物分割を行うこととし、同土地を本件土地1(地積617㎡)及び本件土地2(同566㎡)(以下、併せて「本件各土地」という。)に分筆する登記をした上、本件土地1についてはX1がX2の持分全部を取得し(以下、この取得を「本件取得」という。)、本件土地2についてはX2がX1の持分全部を取得して、その旨の各持分全部移転登記をした。

 イ 本件各土地は、分筆の前から、構造物等により物理的に区分されておらず、連続して舗装されるなどして、全体が駐車場として一体的に利用されている。

 ウ 大阪府知事から権限の委任を受けた所長は、本件土地1が本件取得時において固定資産課税台帳に価格が登録されていない不動産であったことから、法73条の21第2項に基づき、評価基準により本件土地1の価格を算定した上、同価格は分筆前の土地の価格の2分の1相当額を超えているから、本件取得には持分超過部分の取得が含まれるとして、X1に対し、本件処分をした。

 上記の本件土地1の価格は、①本件各土地につき、その形状、利用状況等からみて一体を成しているとして、一画地と認定した上、②これと接する街路の路線価を基礎に画地計算法を適用して、本件各土地の1㎡当たりの評点数を算出し、③これに本件各土地の地積及び評点1点当たりの価額を乗じて、本件各土地の評価額を算出し、④これに本件土地1と本件各土地との地積比(617㎡/1183㎡)を乗ずることにより、算定されたものであった。

3 訴訟の経過

 (1) 1審においては、主として、①持分超過部分の有無を法73条の21により決定される価格により判断することの適否、及び②本件各土地を一画地と認定することの適否が争点となったところ、1審は、いずれも適法と判断して、請求を棄却した。

 (2) X1が控訴したところ(なお、X1は原審係属中に死亡し、単独で相続したX2が訴訟を承継した。)、原審は、上記①及び②については1審の判断を維持したが、要旨次のとおり判断し、本件処分は違法であるとして、請求を認容した。

 本件処分において、本件土地1の価格は、一画地として認定された本件各土地全体の評点数を算出した上、これを地積比であん分する方法(以下「地積あん分の方法」という。)によって算定されているが、持分超過部分の有無を判断する場合には、より慎重な方法によって算定する必要がある。そして、一画地を構成する各筆の土地が所有者を異にする場合には、それぞれの土地の価格の割合であん分する方がより公平に適する。また、本件において地積あん分の方法によれば、地積の大きい本件土地1について必然的に持分超過部分が生ずることは明らかであった。このような場合において、本件処分が、他の合理的な計算方法を試みることなく、漫然と地積比に従ってあん分計算をして本件土地1の価格を算定したことには、違法がある。

 (3) 最高裁第一小法廷は、本件を上告審として受理した上、判決要旨のとおりの判断を示し、持分超過部分の有無及び額を判断する場合等であってもこれと別異に解する理由はないとして、原審の上記判断を否定し、結論としても本件処分に違法はないとして、原判決を破棄して控訴を棄却する旨の自判をした。

4 説明

 (1) 不動産取得税の課税標準について

 ア 不動産取得税の課税標準である不動産の価格(法73条の13第1項)とは、適正な時価をいうものとされている(法73条5号)。このことは、固定資産税の課税標準である土地又は家屋の価格(法349条1項)について、適正な時価をいうものとされている(法341条5号)のと同様である。

 イ 道府県知事は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については、原則として当該価格により不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとされているが(法73条の21第1項)、その登録がされていない不動産については、評価基準によって、不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとされている(同条2項)。

 ウ 道府県知事が法73条の21第2項に基づき評価基準によって不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定して行った同税の賦課決定は、当該価格が法73条5号にいう適正な時価すなわち客観的な交換価値を上回る場合には、違法となる(最二小判平成16・10・29集民215号485頁参照)。また、固定資産課税台帳に登録された価格の決定に係る最二小判平成25・7・12民集67巻6号1255頁の判示の趣旨は、道府県知事が同項に基づき評価基準によって不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定する場合にも同様に当てはまるから、その価格が評価基準によって決定される価格を上回る場合にも、その価格の決定は違法となり、これに基づく不動産取得税の賦課決定も違法となるものと解される。

 (2) 共有物分割に係る不動産取得税の課税について

 ア 共有不動産の分割により他の共有者が有していた持分を取得することも、法73条の2第1項にいう「不動産の取得」に当たる(最三小判昭和53・4・11民集32巻3号583頁)。もっとも、共有物を持分に応じて分割しても、その所有権の移転はいわば形式的なものと考えられることから、法73条の7第2号の3は、立法上の措置として、共有物の分割による不動産の取得につき、持分超過部分の取得を除き不動産取得税を非課税としている。

 イ 持分超過部分の取得は不動産取得税の課税の対象となるところ、本件では、持分超過部分の有無及び額をどのように判断すべきかが争われ、1審及び原審は、これを不動産取得税の課税標準となるべき価格(法73条の21の規定により決定される価格)を基準にすべきものと解した。本判決も、この解釈を前提とするものである。

 (3) 本件の問題の所在

 ア 前記(2)イによれば、本件取得に係る持分超過部分の有無及び額は、本件土地1に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を基準に判断すべきものである。そして、本件土地1につき、本件取得当時、固定資産課税台帳に価格は登録されていなかったから、法73条の21第2項により、評価基準によってその価格を算定すべきことになる。

 評価基準により本件土地1の価格を算定するに当たり、本件各土地はその形状、利用状況等からみて一体を成していることから、これを一画地として認定して画地計算法を適用するのが相当であるところ(1審及び原審はその旨判断しており、本判決もこれを前提とするものである。)、このように隣接する2筆以上の宅地を一画地として認定して画地計算法を適用する場合に、各筆の宅地の価格をどのように算出するかについて、評価基準は明示的な定めを置いていない。

 イ 2筆以上の宅地を一画地として認定して画地計算法を適用することにより算出された価格の適否が争われた下級審裁判例は、いずれも、当該画地の単位地積当たり評点数に各筆の宅地の地積を乗ずる方法により各筆の宅地の価格を算出することについて、評価基準に従った適法なものと判断している(神戸地判平成7・12・25判自149号27頁、東京高判平成19・9・27裁判所HP等)。また、固定資産の評価実務上も、一般的に上記方法が採られているものと考えられる(固定資産税務研究会編「固定資産税実務提要」(ぎょうせい、1974)2098頁は、このような場合の各筆は同一単価となると説明している。)。

 本件処分が採用した地積あん分の方法は上記方法と算定結果を同じくするものであるところ、これを違法とした原審の判断は、持分超過部分の有無を判断する場面に限ったものであるとはいえ、これまでの評価実務及び裁判例と考え方を異にするものであった。

 (4) 本判決の判断

 ア 本判決は、評価基準により隣接する2筆以上の宅地を一画地として認定して画地計算法を適用する場合において、この場合の各筆の宅地は一体を成している当該画地の構成要素にすぎないこと等からすれば、算出された当該画地の単位地積当たりの評点数は当該画地全体に等しく当てはまるものと解するのが相当であるとして、判決要旨のとおり、各筆の宅地の評点数は、画地計算法の適用により算出された当該画地の単位地積当たりの評点数に、各筆の宅地の地積を乗ずることによって算出されると判断した。また、本判決は、これを一画地を構成する各筆の宅地と当該画地との関係でみると、各筆の宅地の評点数又は価格は地積あん分の方法によって算出されるということもできるとした。

 本判決は、評価基準により隣接する2筆以上の宅地を一画地として認定して画地計算法を適用する場合について、これまでの評価実務及び裁判例において採用・是認されていた算定方法が評価基準に従ったものとして一般的に肯定できることを明らかにしたものといえる。

 イ また、本判決は、共有物の分割による不動産の取得に係る持分超過部分の有無及び額の判断のため、法73条の21第2項に基づき評価基準によって当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を算定する場合や、一画地を構成する各筆の宅地の所有者が異なる場合であっても、別異に解する理由はないとして、このような場合に地積あん分の方法によることは違法であるとした原審の判断を否定した。

 これらの場合にも前記アの理由が同様に妥当することや、これらの場合につき法及び評価基準に特段の定めは置かれていないこと等が考慮されたものと考えられる。

 ウ 以上を踏まえて、本判決は、所長が算定した本件土地1の価格について、①評価基準の定める評価方法に従って決定される価格を上回る違法があるとはいえないし、②客観的な交換価値としての適正な時価を上回る違法があるというべき事情もうかがわれないとして、これを基礎としてされた本件処分に違法はないとした。

 前記(1)ウのとおり、道府県知事が評価基準によって不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定して行った同税の賦課決定は、当該価格が評価基準によって決定される価格を上回る場合又は客観的な交換価値としての適正な時価を上回る場合に違法となるところ、そのいずれの場合にも当たらないとしたものである。そのうち上記②は、上記①の判断を前提に、評価基準の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものではなく、又はその評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情が存する場合(前掲最二小判平成25・7・12参照)には当たらないことをいう趣旨と解される。

5 本判決の意義

 本判決は、評価基準に明示的な定めがなく、そのためこれまでも訴訟で争われることのあった事項について、これまでの評価実務及び裁判例と異なる原審の判断を是正するとともに、最高裁として明示的な解釈を示したものであり、実務上重要な意義を有するものと考えられる。

 

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