公取委と経産省、令和2年度上半期における消費税転嫁対策の取組状況等を公表
――転嫁拒否行為に対し4件の勧告と225件の指導――
公正取引委員会と経済産業省は10月28日、令和2年度上半期における消費税転嫁対策の取組状況と今後の取組みについて公表した。
公取委等は、平成26年4月1日及び令和元年10月1日の消費税率の引上げを踏まえ、消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する観点から、「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」(平成25年法律第41号。以下「消費税転嫁対策特別措置法」)に基づき、消費税の転嫁拒否等の行為(以下「転嫁拒否行為」)に対する迅速かつ厳正な対処のための取組みと、転嫁拒否行為の未然防止のための取組みを進めてきたものである。
このうち、公取委の公表した令和2年度上半期における消費税転嫁対策に関する取組状況の概要は、以下のとおりである。
第1 転嫁拒否行為に対する迅速かつ厳正な対処のための取組
1 転嫁拒否行為に関する情報収集
⑴ 書面調査
転嫁拒否行為を監視するため、令和元年度に引き続き中小企業庁と合同で、中小企業・小規模事業者等(約280万名)に対する悉皆的な書面調査を実施するとともに、令和2年5月、大規模小売事業者・大企業等(約8万名)に対し、消費税転嫁対策特別措置法15条1項に基づく報告義務を課した書面調査を実施した。
⑵ 転嫁拒否行為等についての相談・情報収集
転嫁拒否行為等に関する事業者からの相談や情報提供を一元的に受け付けるための相談窓口を、本局および全国の地方事務所等に設置しており、令和2年度上半期においては、287件の相談に対応した。
⑶ 事業者および事業者団体に対するヒアリング調査
令和2年度上半期においては、444名の事業者および442の事業者団体に対してヒアリング調査を実施した。
⑷ 移動相談会
令和2年度上半期においては、全国で29回実施した。
⑸ 下請法の書面調査等の活用
「下請代金支払遅延等防止法」(昭和31年法律第120号。以下「下請法」)の書面調査等を通じて、転嫁拒否行為に関する情報も併せて収集し、転嫁拒否行為に関する情報が得られた場合には、速やかに調査を行うとともに、消費税転嫁対策特別措置法に基づく調査において、下請法に違反する事実が判明した場合には、下請法に基づき迅速かつ厳正に対処するなど、下請法と一体的に効率的な運用を行っている。
2 転嫁拒否行為に対する処理状況
令和2年度上半期において、公取委は4件の勧告を行い、公取委および中企庁は225件の指導を行った。
この措置件数について行為類型別に分類すると、買いたたき(消費税転嫁対策特別措置法3条1号後段)が231件、減額(同条1号前段)が25件、商品購入・役務利用・利益提供の要請(同条2号)が1件、本体価格での交渉拒否(同条3号)が1件となっている(合計258件)(1件の事件において複数の違反行為類型について勧告または指導を行っている場合があるため、令和2年度上半期における措置件数とは一致しない)。
3 特定供給事業者が被った不利益の原状回復の状況
令和2年度上半期において、転嫁拒否行為によって特定供給事業者(=①大規模小売事業者に継続して商品または役務を供給する事業者、②資本金等の額が3億円以下である事業者、個人事業者等)が被った不利益については、特定事業者(=①大規模小売事業者、②特定供給事業者から継続して商品または役務の供給を受ける法人事業者(大規模小売事業者を除く))119名から、特定供給事業者40,662名に対し、総額3億8,181万円の原状回復が行われた。
第2 転嫁拒否行為の未然防止のための取組
1 消費税転嫁対策特別措置法等に係る説明会等
⑴ 説明会等の開催
消費税転嫁対策特別措置法とともに、「消費税率の引上げに伴う価格設定について(ガイドライン)」(平成30年11月28日公正取引委員会ほか関係省庁連名)等の内容について広く周知するため、事業者および事業者団体を対象として、公取委主催の説明会を実施しており、令和2年度上半期において、29回の説明会を実施した。
⑵ 消費税転嫁対策特別措置法に係るeラーニング資料の公開
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、前記(1)の説明会等への参加を見合わさざるを得ない事業者が存在する可能性等を考慮し、事業者がいつでも消費税転嫁対策特別措置法の内容を学ぶ機会を提供するため、同法に係るeラーニング資料(音声解説付)を作成し、ウェブサイト上に公開した。
2 講師派遣(略)
3 広報活動(略)
第3 転嫁カルテル及び表示カルテルの届出
令和2年度上半期においては、転嫁カルテルについては1件の届出を受け付けた。令和2年9月末現在で、届出件数は、転嫁カルテルについては203件、表示カルテルについては140件となっている。また、届出に関する相談については、令和2年度上半期において、2件対応した。
第4 今後の取組
1 個人事業者に対する悉皆的な書面調査の実施
令和2年度においては、上半期に実施した中小企業・小規模事業者等(約280万名)に対する悉皆的な書面調査(前記第1の1⑴参照)および大規模小売事業者・大企業等(約8万名)に対する書面調査(前記第1の1⑴参照)と併せて、10月以降、中企庁と共同で、個人事業者(約350万名)に対する悉皆的な書面調査を実施していく。
2 事業者及び事業者団体に対するヒアリング調査
従来から、様々な業界における転嫁拒否行為に関する情報や取引実態を把握するため、事業者および事業者団体に対するヒアリング調査を実施してきているところ、消費税率10%への引上げに係る転嫁拒否行為に関する情報収集のため、引き続き、事業者および事業者団体に対するヒアリング調査を実施していく。
3 転嫁拒否行為に対する迅速かつ厳正な対処
消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する観点から、上記の書面調査やヒアリング調査等によって把握した転嫁拒否行為に対して、引き続き、消費税転嫁対策特別措置法に基づき、迅速かつ厳正に対処していく。
4 転嫁拒否行為等についての相談対応
公取委の本局および全国の地方事務所等に設置した相談窓口において、事業者から寄せられる転嫁拒否行為等に係る相談や情報提供に適切に対応していく。
5 消費税転嫁対策特別措置法の周知
事業者団体等が開催する説明会等への公取委事務総局の職員の講師派遣を通じて、引き続き、消費税転嫁対策特別措置法の周知に努めていく。
公取委、令和2年度上半期における消費税転嫁対策の取組状況及び今後の取組について(10月28日)
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2020/oct/201028tenka.html
○経産省、令和2年9月末までの消費税転嫁対策の取組状況を取りまとめました
https://www.meti.go.jp/press/2020/10/20201028004/20201028004.html