◇SH3460◇公取委、米グーグルと米ウェアラブル端末メーカーとの企業結合を巡り審査結果を公表――一定の健康管理データにつき買収後10年間の使用制限などを条件として承認 (2021/01/27)

未分類

公取委、米グーグルと米ウェアラブル端末メーカーとの
企業結合を巡り審査結果を公表

――一定の健康管理データにつき買収後10年間の使用制限などを条件として承認――

 

 公正取引委員会は1月14日、デジタル広告・インターネット検索大手グーグルがウェアラブル端末メーカーであるフィットビットを実質的に買収しようとする企業結合を巡り、デジタル広告へのデータ利用に関する問題解消措置など複数の問題解消措置を前提とすれば一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないとする審査結果を公表した。欧州委員会などすでに同様の判断を示していた海外競争当局もあり、両社は同日のうちに買収が正式に完了したと発表している。

 本事案は、米国に本社を置くグーグル・エルエルシー(本稿では単に「グーグル」といい、最終親会社であるアルファベット・インク(本社米国)とすでに結合関係を有する企業の集団を「グーグル・グループ」という)と、同じく米国に本社を置き主に腕時計型ウェアラブル端末の製造販売業を営むフィットビット・インク(同様に「フィットビット」といい、同社とすでに結合関係を有する企業の集団を「フィットビット・グループ」という。また、両グループを併せて「当事会社グループ」という)が、(a)グーグルが新たに子会社を設立し、(b)当該子会社を消滅会社、フィットビットを存続会社として合併した後、(c)上記(b)の対価としてグーグルがフィットビットの株式に係る議決権の全部を取得することを計画したものである(当事会社グループにより、2019年11月1日公表)。

 公取委としては(A)フィットビット・グループの国内売上高合計額が50億円を超えないため、独占禁止法10条2項、15条2項の届出要件を満たさないものの、(B)本件行為はグーグル・グループがフィットビット・グループを実質的に買収するものであり、本件行為に係る対価の総額が400億円を超えると見込まれ、かつ、(C)本件行為が国内の需要者に影響を与えると見込まれたことから、企業結合審査を行った。欧州委員会などの海外競争当局も審査を行っていたため、これら海外当局とは情報交換を行いつつ、審査を進めたという。

 グーグル・グループはデジタル広告事業、インターネット検索事業、クラウドサービス事業、ソフトウェア提供事業およびハードウェア提供事業といった多岐にわたる事業を営む。一方のフィットビット・グループは、日本市場における時計型ウェアラブル端末製造販売業の市場シェア(2019年の台数ベース)が約10%で第3順位。公取委による今般の審査では、競争上の懸念が生じうる企業結合の形態として、(1)腕時計型ウェアラブル端末用OS提供事業(グーグル・グループの事業)および腕時計型ウェアラブル端末製造販売業(フィットビット・グループの事業)、(2)スマートフォン用OS提供事業(グーグル・グループの事業)および腕時計型ウェアラブル端末製造販売業(フィットビット・グループの事業)、(3)健康関連データベース提供事業(当事会社グループの事業)および健康関連アプリ提供事業(当事会社グループの事業)、(4)健康関連データベース提供事業(当事会社グループの事業)およびデジタル広告関連事業(グーグル・グループの事業)――の4形態について検討が行われた。

 そのうえで「一定の取引分野の画定」にあたっては、腕時計型ウェアラブル端末、OS、健康関連アプリ、健康関連データベース提供事業、デジタル広告関連事業の5項目について、それぞれ「商品役務範囲」および「地理的範囲」を画定。また「本件行為が競争に与える影響」の検討を巡っては、当事会社グループからの本件問題解消措置の申出につきその効果を踏まえながら、次の各結合形態について(α)当事会社グループの地位、(β)提供拒否・利用拒否等の問題が生じる可能性などを仔細に検討した。①腕時計型ウェアラブル端末用OS提供事業を川上市場、腕時計型ウェアラブル端末製造販売業を川下市場とする垂直型企業結合、②スマートフォン用OS提供事業を川上市場、腕時計型ウェアラブル端末製造販売業を川下市場とする垂直型企業結合、③健康関連データベース提供事業を川上市場、腕時計型ウェアラブル端末用健康関連アプリおよびスマートフォン用健康関連アプリをそれぞれ川下市場とする垂直型企業結合、④健康関連データベース提供事業とデジタル広告関連事業の混合型企業結合。

 上記「本件問題解消措置」は、これらのうち②・③・④に関して申出があったとされている。具体的にみると、②については「Android APIの提供拒否等に関する問題解消措置」が評価対象とされ、その内容は、グーグル・グループが「一定のAndroid API(コア相互運用性API)へのアクセスを、アクセス料無料で、AOSPの一環として提供するその他全てのAndroid APIに適用されるものと同一のライセンス条件により、かつ、当事会社グループと非差別的に、本件行為実行日から10年間、維持する」ものなど。同様に、③は「Web APIの提供拒否等に関する問題解消措置」により「当事会社グループが提供するWeb APIを通じたGoogleグループ(編注・本稿でいう「グーグル・グループ」と同義。以下同様)以外の健康関連アプリ提供者に対する一定の健康関連データ(サポート対象測定身体データ)の提供を、需要者である一般消費者の同意を条件とし、問題解消措置に示した規約に基づき、無料で、本件行為実行日から10年間維持する」ものであり、さらに、④に係る「デジタル広告へのデータ利用に関する問題解消措置」によっては、グーグル・グループが「一定の健康関連データ(測定身体データ及び健康・フィットネス活動位置データ)をGoogleグループのデジタル広告関連事業において使用しないこと」などを「本件行為実行日から10年間継続する。また、この期間は、問題解消措置の規定に従い、延長(最長で更に10年間)され得る」こととする。公取委は、これらのいずれの措置についても「当事会社グループから提示された本件問題解消措置は適切なものである」と評価している。

 なお、本事案では「その他の本件問題解消措置」として、これらの各問題解消措置に絡む「公正取引委員会に対する定期報告」が課せられた。当事会社グループが、本件行為実行日から10年間、公取委に対して半年に一度、独立した第三者(監視受託者)が各問題解消措置の遵守状況を監視した結果を報告するという内容のもので、公取委はこれについても「本件問題解消措置の履行監視の観点から適切な措置であると認められる」と評価。

 以上の一切を踏まえた「結論」として、今般「当事会社グループが本件問題解消措置を講ずることを前提とすれば、本件行為が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した」ものである。

 

タイトルとURLをコピーしました