◇SH2196◇コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(118)雪印乳業㈱グループの事件を組織論的に考察する㉘岩倉秀雄(2018/11/16)

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コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(118)

―雪印乳業(株)グループの事件を組織論的に考察する㉘―

経営倫理実践研究センターフェロー

岩 倉 秀 雄

 

 前回は、牛肉偽装事件の経緯について述べた。

 雪印食品(株)は、食中毒事件の影響とBSEによる消費者の牛肉買控えが重なり大幅に経営が悪化、期末には多額の評価損や販売損の発生が見込まれていたが、事件前のミートセンター長会議では、具体的な対策は検討されなかった。

 一方、食肉業界では、国が全頭検査前に屠畜処理された国産牛肉を買い上げる制度の実施を検討しているとの情報が出回り、国産牛肉の買取価格が、当時のオーストラリア産牛肉より2~3割高かったので、雪印食品(株)は販売見込みのない輸入牛肉を買い上げさせたいと考えた。

 関西ミートセンター(西宮冷蔵により告発)、本社ミート営業調達部、関東ミートセンターが中心になり、輸入牛肉を国産牛肉に偽装しその一部を日本ハム・ソーセージ工業協同組合に買取り申請、代金の一部約1億9,500万円を受け取った。

 2002年1月22日午後、雪印食品本社広報室に新聞社から偽装工作の疑いの問合せが入ったため、直ちに調査・確認したところ、関西ミートセンター長が深夜に偽装工作の事実を認めた。

 1月23日朝、新聞各紙に雪印食品の国産牛肉詰め替えの記事が掲載され、雪印食品(株)社長の吉田升三は、午後記者会見を開き、事実関係を全面的に認め謝罪すると共に、社内調査委員会の設置を発表した。

 同席した担当専務は「虚偽申請はセンター長が独断で行ない、これを知る上司はいなかった」と述べ、会社の関与を否定した。

 一方、詰め替え作業の現場となった西宮冷蔵の社長は、同日午前に記者会見を行い、告発の経緯や理由を説明した。

 今回は、事件発覚後の経緯と当局の捜査について考察する。

 

【雪印乳業(株)グループの事件を組織論的に考察する㉘:事件発覚後後の経緯と当局の捜査】
(『雪印乳業史 第7巻』429頁~430頁)

1. 生肉事業からの撤退と社長交代

 雪印食品による1月23日の記者会見後、農水省より社長に事実関係の確認があり、社長は事実を認めた。

 翌日の衆議院予算委員会で、当時の武部農水大臣は「告訴も検討する」と発言した。

 1月25日、雪印食品は農水省より5項目の指示・通達(①事実の徹底究明、②市場隔離肉の補助金に拠らない処分・焼却、③行動規範の策定及びその社内における周知徹底、④周知・徹底されたと認められるまでの間、牛肉関係営業の自粛、⑤監督責任者を含む責任者の厳正な処分)を受けた。

 1月29日、社長の吉田は、雪印食品本社での記者会見で、生肉事業からの撤退と、1月31日付けで社長及びデリカハム・ミート事業担当専務の辞任を発表した。同時に、海外商品担当の取締役岩瀬弘士郎を社長とする新体制を発表したが、社長を除く6名の役員は、2002年6月の株主総会で退任することになっていた。

 

2. 次々と発覚する不正事実

 2002年1月24日から28日にかけて行なわれた社内調査委員会による調査や、報道後から2月にかけて行なわれた農水省及び保健所の事情聴取により、BSE対策のオーストラリア産牛肉詰め替え以外にも不正の事実が明らかになった。

 1月24日、オーストラリア産牛肉詰め替えに使用された加工用のシールは、関西ミートセンターの依頼で、同社子会社の北陸雪印ハム㈱が偽造し偽装に関与していたことが判明した。また、26日には関西ミートセンターが日本ハム・ソーセージ工業協同組合に虚偽申請した13.8トンのうち、1.4トンは実物が存在しない水増し請求であったことも判明した。関西ミートセンターは、日本ハム・ソーセージ工業協同組合との買い取り契約後、申請不足分1.4トンの存在に気付き、不足分の穴埋めのため、西宮冷蔵に対し1.4トン分の在庫証明書の偽造を指示して作成させた。

 また農水省の調査で、関西ミートセンターでは、少なくとも約2年前から北海道産などの牛肉を熊本、奈良県産とする偽装工作を、狂牛病発生前は月に1回~3回、発生後は5回~10回の頻度で行なって出荷していたことが判明、さらに、外国産の豚肉を国産と偽り、乳牛を和牛と偽る等の不正行為が確認された。

 雪印食品(株)は、2002年2月16日社告を掲載し、一連の不祥事に対する謝罪を行った。

 

3. 牛肉偽装事件にかかわる当局の捜査

 牛肉偽装事件発覚直後から、兵庫県警が詐欺容疑で捜査する方針を発表したことは既述した通りであるが、報道発表翌日の2002年1月24日、兵庫県警は詐欺容疑で捜査を開始し、更に補助金適正化法違反容疑でも捜査を行った。

 また、同日、東京都中央区、大田区の保健所が、食品衛生法表示違反容疑で雪印食品(株)本社等を立入調査した。

 1月29日、兵庫県警は、賞味期限を表示する牛肉のラベルを貼り替えた疑いで、食品衛生法に基づき関西ミートセンターに立ち入り調査を行った。

 翌30日には、警視庁、兵庫県警、埼玉県警が合同捜査本部を設置、2月1日、農水省が関西ミートセンター長を詐欺容疑で兵庫県警に刑事告発、告発を受けた合同捜査本部は、2月2日、詐欺容疑で本社を始め全国十数か所に家宅捜査を行った。

 なお、合同捜査本部は、2月6日、両罰規定のある食品衛生法違反の疑いでも捜査する方針を発表した。

 次回は、親会社雪印乳業(株)への影響と会社の解散について考察する。

 

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