◇SH3663◇消費者庁、「アフィリエイト広告等に関する検討会」の初会合を開催――不当表示が生じない広告の実施に向けて対応策を検討、2021年中に一定の結論 (2021/06/23)

未分類

消費者庁、「アフィリエイト広告等に関する検討会」の初会合を開催

――不当表示が生じない広告の実施に向けて対応策を検討、2021年中に一定の結論――

 

 消費者庁は6月10日、「アフィリエイト広告等に関する検討会」(座長・中川丈久神戸大学大学院法学研究科教授)の初会合を開催した。アフィリエイト広告の状況・課題を明らかにしたうえで不当表示が生じない広告の実施に向けた対応策を検討し、2021年中を目途として一定の結論を得る。

 近時市場規模が年々増大するアフィリエイト広告(アフィリエイト・プログラムを利用した成果報酬型の広告)においては「広告主ではないアフィリエイターが表示物を作成・掲載するため、広告主による表示物の管理が行き届きにくい」「アフィリエイターが成果報酬を求めて虚偽誇大広告を行うインセンティブが働きやすい」といった不当表示につながりやすい特性があるとされ、一方では当該特性により広告主の責任意識が希薄であるとする指摘がなされる。また、消費者にとってはアフィリエイト広告であるかが外見上判別できない場合もある。

 2020年8月19日付で取りまとめ・公表された「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会報告書」においては「今後の検討課題」として「アフィリエイト広告における違反行為への対応」を挙げ、「通信販売の販売業者等がアフィリエイターに広告表示の内容の決定を委ねているような場合に販売業者等がアフィリエイト広告の不当表示の責任を負うという点に関する解釈上の整理の明確化に加え、アフィリエイトサービスプロバイダー(ASP)の法的な位置付けの整理を検討」と表明された。消費者庁にあっても本年3月1日には消費者安全法に基づき「虚偽・誇大なアフィリエイト広告に関する注意喚起」を、3月3日には複数のアフィリエイトサイトを表示媒体とする商品の表示が優良誤認に該当するとして「景品表示法に基づく措置命令」を発出するなど個別事案への対応を進めるとともに現在、アフィリエイト広告等に関する実態調査を実施している。

 今般の検討会は「この実態調査と並行し、さらに関係者から実態や課題について聴取してアフィリエイト広告の状況及び課題を明らかにし、不当表示が生じない健全な広告の実施に向けた対応方策を検討する」として5月28日、その開催が発表されたもので、大学教授・弁護士・業界関係者・消費者団体関係者ら計11名で構成(消費者庁長官が委嘱、座長はあらかじめ指名)。オブザーバーとして警察庁・国民生活センター・東京都が参加し、消費者庁表示対策課が事務局を務める。初回となる6月10日会合では「検討課題提示、フリーディスカッション」が行われた。

 会合を通じた「主な検討事項」として掲げられるのは(1)景品表示法の適用等に関する考え方、(2)不当表示の未然防止等のための取組み。「景品表示法の考え方」として、(ア)事業者が同法の表示規制の対象となるためには、当該事業者の(i)供給主体性とともに(ii)表示主体性が認められることが必要となる(初会合当日の資料4「アフィリエイト広告をめぐる現状と論点(事務局資料)」参照)。事務局は(i)の関連で、たとえばフランチャイズの本部が行う表示等に関して「本部自体は消費者との間で当該商品等の売買契約の当事者ではない場合でも、この要件を満たすと判断された処分事例」を、また(ii)の関連では、平成20年5月23日東京高裁判決の概要として「景品表示法の表示規制の対象となる表示の主体とは、問題となる表示の内容の決定に関与した事業者であると解される。そして、表示内容の決定に関与した事業者とは、①自らもしくは他の者と共同して積極的に表示の内容を決定した事業者のみならず、②他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた事業者、③他の事業者にその決定を委ねた事業者も含まれる」旨を紹介した。

 事務局からはまた、(イ)「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(平成26年11月14日内閣府告示第276号)から同指針における7つの措置を掲出。そのうえで「速やかに景品表示法違反を発見する監視体制の整備及び関係従業員等が報復のおそれなく報告できる報告体制を設け、実施すること」など3つの措置を「不当表示等の防止のために有用」な措置として示した。

 ほか、(ウ)「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(平成25年12月24日制定、28年6月30日全部改定、令和2年4月1日一部改定・消費者庁)および「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」(平成23年10月28日公表、24年5月9日改定・消費者庁)において「アフィリエイト広告に言及」する箇所の明示がなされている。

 初会合において具体的に検討課題として提示されたのは、上記(1)景品表示法の適用等に関する考え方に関し、次の2点である。①広告主・ASP・アフィリエイター等、アフィリエイト広告の作成関係者の意識を高めるとともに立場に応じた役割を果たすべきではないかと考えられるところ、どのような対応が考えられるか。②広告主がアフィリエイト広告上の表示の内容に最終的に責任を負うことを踏まえ、広告主による不当表示の未然防止に向けた管理がより一層行われるようにするために、どのような対応が考えられるか。

 また、上記(2)不当表示の未然防止等のための取組みに関しては、他の関係者たる事業者・事業者団体・消費者等の取組みも重要であること、不当表示の防止に向けて取り組んでいる広告代理店やASP、媒体社があることも踏まえた課題として、①悪質なASPやアフィリエイターが排除され、不当表示の防止に向けて積極的に取り組んでいるASPやアフィリエイターが選ばれるようにするため、アフィリエイト広告の全関係者が行う取組み(ベストプラクティス)は何か、②消費者にとってアフィリエイト広告が広告として認識されにくい場合があることに対し、認識しやすくする取組みは有益か、どのような方策があるか、③そのほか不当表示の未然防止等のために考えられることはあるかといった提示がなされている。

 今後、第2回・第3回会合における「関係者の関与の実態、不当表示等の問題事例、対策等に関する関係者ヒアリング」の実施、第4回会合以降の論点整理が予定される。各会合の資料は原則として検討会終了後すみやかに公表するものとされている。

 

タイトルとURLをコピーしました