個人情報委、特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドラインの
一部改正案に関する意見募集を開始
岩田合同法律事務所
弁護士 池 田 美奈子
1 はじめに
個人情報保護委員会(以下「委員会」)は、令和3年6月23日、特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)(以下「ガイドライン(事業者編)」)の一部改正案、及び特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(行政機関等・地方公共団体等編)(以下「ガイドライン(行政機関等・地方公共団体等編)」。ガイドライン(事業者編)と総称して「ガイドライン」)の一部改正案に関する意見募集(以下「パブリックコメント」)を開始した[1]。
今般のガイドラインの改正案のポイントは、①特定個人情報の漏えい等が発生した場合の報告・本人通知[2]、及び②従業員本人の同意があった場合における転職時等の使用者間での特定個人情報の提供、の二つである。
本稿では、ガイドラインの改正案、及びその前提となる法令の改正について概説する。
2 特定個人情報の漏えい等の発生時の報告・本人通知(改正のポイント①)
現行の「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(平成25年法律第27号)(以下「番号法」)では、「特定個人情報[3]の漏えいその他の特定個人情報の安全の確保に係る重大な事態」が生じた場合に、委員会への報告が義務付けられているところ(同法29条の4)、令和2年に公布された個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」)等の改正法[4](以下「令和2年改正法」)により、報告対象が「特定個人情報の漏えい、滅失、毀損その他の特定個人情報の安全の確保に係る事態であって個人の権利利益を害するおそれが大きいものとして個人情報保護委員会規則で定めるもの」が生じた場合、とより具体化され、漏えい等の「おそれ」が生じた場合も含まれることとなった。また、委員会への報告を速報と確報の2段階で行うこととしたことに加え(令和2年改正法による改正後の番号法29条の4第1項)、本人への通知も義務付けられることとなった(同2項)。そして、上記の番号法の改正に伴い、報告対象事態、速報及び確報の2段階の報告の時間的制限、報告事項、本人通知事項等の詳細について定めた個人情報保護委員会規則(以下「規則」)も改正された(以下、改正後の規則を「改正規則」という)[5]。
今般のガイドライン(事業者編)の改正は、上記の改正後の番号法及び改正規則が令和4年4月1日に施行されることに先立ち行われるものである。漏えい等に関する報告等に関する考え方及び講ずべき措置等ついては、ガイドライン(事業者編)改正案の別添2にまとめられており[6]、報告対象事態については、以下の表のとおり具体例がいくつか例示されている[7]。
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(いけだ・みなこ)
岩田合同法律事務所アソシエイト。日本及び米国(NY州)弁護士。2007年東京大学法学部卒業。2009年University of Michigan Law School修了(LL.M.)。2010年早稲田大学法科大学院修了。約4年間、海事専門法律事務所に所属し、海事案件の経験も豊富に有する。
岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/
<事務所概要>
1902 年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。
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