◇SH3778◇知的財産戦略本部、改訂CGコードを踏まえたコーポレート・ガバナンス報告書の提出に向けて対応方針など示す――有効な開示・ガバナンス検討会における議論を反映、ガイドラインは年内取りまとめへ (2021/10/06)

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知的財産戦略本部、改訂CGコードを踏まえた
コーポレート・ガバナンス報告書の提出に向けて対応方針など示す

――有効な開示・ガバナンス検討会における議論を反映、ガイドラインは年内取りまとめへ――

 

 知的財産戦略本部(本部長・首相)は9月24日、8月に発足させた「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(座長・加賀谷哲之一橋大学商学部教授。以下「検討会」という)によって取りまとめられた「今後の知財・無形資産の投資・活用戦略の構築に向けた取組について~改訂コーポレートガバナンス・コードを踏まえたコーポレート・ガバナンス報告書の提出に向けて~」を公表した。

 「成長戦略実行計画(令和3年6月18日閣議決定)」において無形資産投資の促進などを目的とした「知的財産戦略の推進」が掲げられるところ、具体的な施策としては「企業の知財投資・活用戦略を見える化し、投資家等が活用しやすい環境を整備するため、コーポレートガバナンス・コードや価値協創ガイダンスの改訂を踏まえ、どのような形で知財投資・活用戦略を開示・発信することが有益であるかなどについて検討し、知財投資・活用戦略に関する開示・発信の在り方を示すガイドラインを2021年中に策定し、公表する」(知的財産推進計画2021〔7月13日・知的財産戦略本部決定〕21頁)こととされている。

 検討会は「ガイドラインの対象とすべき『知財』『知財投資』の範囲」「知財投資・活用戦略の開示範囲・内容の考え方」「知財投資・活用戦略の実行に向けたガバナンスの在り方」「知財投資・活用の指標の在り方」などを主な検討事項とするものとして企業・投資家関係者、学識経験者ら計16名の委員で構成され、オブザーバーとして金融庁企業開示課長・特許庁企画調査課長・東京証券取引所上場部長が名を連ねる。事務局は関係機関の協力を得て、内閣府知的財産戦略推進事務局、経済産業省経済産業政策局産業資金課が務めることとされた。立上げの当初から(ア)2021年内にガイドラインの取りまとめを予定していること、(イ)2021年12月末までの東証へのコーポレート・ガバナンスに関する報告書の提出を見据え、秋ころまでに対応の方向性を示すことを検討することが表明されており、8月6日の初会合開催後、8月26日・9月8日・9月22日と審議を行ってきた。

 今般公表された「今後の知財・無形資産の投資・活用戦略の構築に向けた取組について~改訂コーポレートガバナンス・コードを踏まえたコーポレート・ガバナンス報告書の提出に向けて~」(以下「CG報告書の提出に向けて」という)は上記(イ)の取組みを具体的に織り込んだもので、原案を9月22日の第4回会合で検討。「幅広い企業に伝えるメッセージとして、分かりやすい内容となっているか?」「投資家・金融機関側から見て、妥当な内容となっているか?」といった確認を経て9月24日、公表に至った。

 全体で5頁建てとなった「CG報告書の提出に向けて」は「(1)競争優位の確立に向けた知財・無形資産の投資・活用戦略の意義」「(2)改訂コーポレートガバナンス・コードを踏まえた対応」「(3)知財・無形資産の投資・活用戦略の構築に向けた対応例」の3項目で構成。(2)では、「知的財産への投資」を明記して情報開示・情報提供、取締役会の実効的な監督を求めるコーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」という)の本年6月改訂について(補充原則3-1③4-2②参照)、その冒頭で「企業に知財・無形資産の投資・活用に向けた取組を促していく上でまたとない好機であり、本検討会において策定するガイドラインは企業の取組の強力な後押しとなるものとする必要がある」と述べたうえで、提出すべきCG報告書での対応方針・姿勢を示す。

 知財投資の開示や取締役会による実効的な監督の実施に至っていない企業に対しては「そうした開示や監督をいかに進めるのか、さらにその前提となる知財・無形資産の投資・活用の現状を整理し、それらを戦略的にいかに実践していくかについての今後の計画や検討方針を説明すること」を示唆。「実施(comply)」とするか「実施していない理由を説明(explain)」とするかについても具体的に「本格的な知財・無形資産の投資・活用戦略の開示等に至っていないにもかかわらず『実施(comply)』という判断を行えば、投資家からは、不誠実な姿勢とみなされ、かえってネガティブな評価につながる可能性が高」いことなどを指摘した。

 上記(3)では「これから知財・無形資産の投資・活用戦略の構築に本格的に取り組んでいこうとする企業」を対象とし、次の4つのプロセスを進めていくことを例示している。①自社の現状のビジネスモデルと強みとなる知財・無形資産の把握・分析、②知財・無形資産を活用したサステナブルなビジネスモデルの検討、③競争優位を支える知財・無形資産の維持・強化に向けた戦略の構築、④戦略を着実に実行するガバナンス体制の構築。

 現状「知財投資・活用戦略に関する開示等に関するガイドライン(仮称)」とされているガイドラインの審議は11月予定の第7回会合で骨子案が、12月予定の第8回会合において原案がそれぞれ示され、その後、意見募集に付される方針が明らかにされている。

 

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