経産省、カルタヘナ法に基づくリコーに対する行政処分を発表
――環境への拡散を防止して行う「第二種使用等」で社内体制および確認・報告手続に不備――
経済産業省は8月12日、いわゆるカルタヘナ法に基づいてリコー(本社・東京都大田区、東京証券取引所プライム市場上場)に対し、遺伝子組換え生物等の使用等に関する適切な措置を講じることを命ずる行政処分を同月9日に行ったと発表した。リコーにおいても12日、同法に基づく措置命令を受けたこととともに再発防止策などを発表している。
経済産業省およびリコーによると、法令違反と認められる事実は(ア)平成30年1月11日付通知「包括申請における拡散防止措置の確認について」(20171220商局第1号)第4(2)に規定する、生産前の社内安全委員会における審議・承認が行われていない遺伝子組換え微生物が17株存在していた、(イ)施設、設備や周囲の環境に拡散しないための拡散防止措置を経済産業大臣に個別で確認を受ける必要がある遺伝子組換え生物等について、上記通知第1(2)に規定する、包括申請の対象範囲でない供与核酸を組み込んだ遺伝子組換え微生物6株につき、担当者がすでに確認を受けていた包括確認の範囲に含まれると誤認し、個別に経済産業大臣の確認を受けなかった――などの4点。措置命令の内容は①社内安全委員会における使用前承認体制の整備、制度内容の従業員への周知徹底、②包括確認制度に基づき確認を受けたすべての遺伝子組換え生物等について使用実績等を漏れなく経済産業省に報告する社内体制の整備、③カルタヘナ法13条1項に基づく大臣確認に係る手続について従業員への教育の徹底など法令遵守体制の整備、④以上の措置に係る対策に関する経済産業大臣への書面による報告など――となっている。
リコーでは、バイオメディカル事業において提供するDNA標準プレートの製造に際してカルタヘナ法の求める手続が正しく行われなかったことに対するものであり「周辺環境や人体への影響はありません」などと補足。顧客・関係者へのお詫びを表明するとともに、外部専門家を含む社内調査委員会において策定した4点の再発防止策を公表した。
カルタヘナ法とは「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(平成15年法律第97号)のことで、1992年6月採択・1993年12月発効「生物の多様性に関する条約」および2000年1月採択・2003年9月発効「生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書」(カルタヘナ議定書)を踏まえた国内法整備のため、2003年6月10日に可決・成立、同月18日に公布。わが国によるカルタヘナ議定書の締結(2003年11月)を経て、同議定書がわが国に対して正式に発効する2004年2月19日に全面施行された。
その後、2010年10月採択・2018年3月発効「バイオセーフティに関する責任及び救済に関する名古屋・クアラルンプール補足議定書」を踏まえた改正などがなされており、カルタヘナ法は上記議定書および補足議定書の「的確かつ円滑な実施を確保し、もって人類の福祉に貢献するとともに現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与する」(同法1条)ものとして、生物多様性の確保に資する「遺伝子組換え生物等の使用等」の規制に関する措置を定める。
遺伝子組換え生物等の使用等に先立って使用形態に応じた規制が定められており、遺伝子組換え生物の環境中への拡散を防止しないで行う使用等を「第一種使用等」と、環境中への拡散を防止しつつ行う使用等を「第二種使用等」と定義(カルタヘナ法2条5項・6項)。第一種使用等に関する規制については同法第2章第1節(4~11条)に、第二種使用等については第2章第2節(12~15条)に定めており、たとえば第二種使用等をする者は「当該第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置が主務省令により定められている場合には、その使用等をする間、当該拡散防止措置を執らなければなら」ず(同法12条)、一方「前条の主務省令により当該第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置が定められていない場合(特定遺伝子組換え生物等の第二種使用等をする場合その他主務省令で定める場合を除く。)には、その使用等をする間、あらかじめ主務大臣の確認を受けた拡散防止措置を執らなければならない」とされている(同法13条1項)。
この場合の主務大臣(所管官庁)については、たとえば「経済産業省所管業種における産業目的での遺伝子組換え生物等の第二種使用(工業用酵素や試薬の生産等)」は経済産業大臣(経済産業省)、「経済産業省所管業種であっても研究開発に係る第二種使用」は文部科学大臣(文部科学省)などとなることから(経済産業省ウェブサイト「安全審査に関する情報(カルタヘナ法、バイオレメディエーション利用指針)」参照)、ほか農林水産省・厚生労働省などが公表するものを含め、申請マニュアルやQ&A・FAQを確認しておきたい。