意外に深い公益通報者保護法
~条文だけではわからない、見落としがちな運用上の留意点~
第23回 公益通報者の保護(5)
森・濱田松本法律事務所
弁護士 金 山 貴 昭
Q 範囲外共有の禁止等
指針では、守秘義務とは別に、範囲外共有や通報者の探索を禁止していますが、守秘義務と範囲外共有や通報者の探索とはどのような関係にありますか。
A 【ポイント】
これらのルールは、いずれも公益通報者を特定させる事項の取り扱いに関するルールですが、義務の主体や内容が異なります。守秘義務は、公益通報対応業務従事者に指定されている者に対して課される公益通報者保護法上の義務(同法12条)で、違反者には刑事罰が科されます。他方、範囲外共有の禁止は、公益通報対応業務従事者に指定されていない者が、必要最小限の範囲を超えて公益通報者を特定させる事項を第三者に共有することを禁止することで、法定指針では、事業者に対して、範囲外共有を防止するための措置(違反者への懲戒処分等)をとることを義務づけています。また、通報者の探索の禁止は、公益通報者と特定させる事項を認識していない者が、公益通報者を特定しようとすることを禁止することで、法定指針では、事業者に対して、通報者の探索を防止するための措置(違反者への懲戒処分等)をとることを義務付けています。 |
【解説】
公益通報したところ、公益通報者が誰であるかを社内の従業員が広く認識できてしまうと、公益通報者は安心して通報することができなくなります。そのため、公益通報者保護法は、誰が公益通報者であるかを認識することができる者の範囲が不必要に広がらないよう、公益通報対応業務従事者に対し守秘義務を課すとともに、法定指針において、範囲外共有と通報者の探索が行われないようにするための措置を講ずることを義務付けています。以下、それぞれの義務の内容について、説明します。
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(かなやま・たかあき)
弁護士・テキサス州弁護士。2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業、2019年テキサス大学オースティン校ロースクール(L.L.M.)修了。2011年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2019年テキサス州弁護士会登録。2021年消費者庁制度課(公益通報制度担当)、同参事官(公益通報・協働担当)出向。
消費者庁出向時には、改正公益通報者保護法の指針策定、同法の逐条解説の執筆等に担当官として従事。危機管理案件の経験が豊富で、自動車関連、動物薬関連、食品関連、公共交通機関、一般社団法人等の幅広い業種の危機管理案件を担当。
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