SH4424 意外に深い公益通報者保護法~条文だけではわからない、見落としがちな運用上の留意点~ 第28回 中小企業の対応 金山貴昭(2023/04/25)

公益通報・腐敗防止・コンプライアンス

意外に深い公益通報者保護法
~条文だけではわからない、見落としがちな運用上の留意点~

第28回 中小企業の対応

森・濱田松本法律事務所

弁護士 金 山 貴 昭

Q 中小企業における公益通報者保護法

 中小企業であっても、公益通報者保護法が定める内部公益通報対応体制を構築しなければ同法違反となるでしょうか。

 

A 【ポイント】

常時使用する労働者の数が300人以下の事業者の場合には、内部公益通報対応体制の整備は努力義務ですので、このような事業者が内部公益通報対応体制を整備しなかったとしても、公益通報者保護法違反とはなりません。

ただし、「常時使用する労働者」に含まれる労働者を適切に把握する必要がある点や公益通報対応業務従事者を指定した場合には、当該従事者は刑事罰付きの守秘義務を負うことになる点には留意が必要です。

 

【解説】

 公益通報者保護法では、常時使用する労働者の数が300人を超える事業者に対して、内部公益通報対応体制の整備を義務付け、常時使用する労働者の数が300人以下の事業者に対しては努力義務としています(法11条3項)。そのため、常時使用する労働者の数が300人以下の企業の場合には、内部公益通報対応体制を整備していなくても、公益通報者保護法違反とはなりませんが、下記の点には留意が必要です。

 なお、公益通報者保護法では、公益通報したことを理由とした解雇の無効や不利益な取扱いの禁止等が定められており、これらの規定については、常時使用する労働者の数が300人以下の事業者に対しても適用されます。

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(かなやま・たかあき)

弁護士・テキサス州弁護士。2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業、2019年テキサス大学オースティン校ロースクール(L.L.M.)修了。2011年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2019年テキサス州弁護士会登録。2021年消費者庁制度課(公益通報制度担当)、同参事官(公益通報・協働担当)出向。
消費者庁出向時には、改正公益通報者保護法の指針策定、同法の逐条解説の執筆等に担当官として従事。危機管理案件の経験が豊富で、自動車関連、動物薬関連、食品関連、公共交通機関、一般社団法人等の幅広い業種の危機管理案件を担当。

 

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