◇SH1859◇スルガ銀行、シェアハウス関連融資問題に関する経過報告と対応について公表(2018/05/24)

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スルガ銀行、シェアハウス関連融資問題に関する経過報告と対応について公表

――「相当数の行員が自己資金の偽装の可能性について認識」との社内調査結果――

 

 スルガ銀行は5月15日、シェアハウス向け融資をめぐるトラブルについて、社内調査結果等による経過報告と今後の対応について公表した。

 シェアハウスに関するトラブルの経緯をみると、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズでは、投資目的の所有者が銀行から資金を借りるなどして建設した物件を一括して借り上げて女子学生らに転貸し、所有者には一定の家賃を保証するサブリース方式で事業を行っていた。しかし、同社は昨年10月に、所有者に対して支払額の減額を突然通告し、今年1月には支払いを停止したとされ、融資の大半を行ったスルガ銀行への返済が滞るケースが多く発生しているとみられている。3月27日には、物件の所有者13人がスマートデイズらを相手取り、約2億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に提起した。

 その後、スマートデイズは4月9日、東京地裁に民事再生法の適用を申請したが、4月18日に棄却され、5月15日に破産開始決定を受けた。

 これに対して金融庁は、スルガ銀行に対して、3月に銀行法に基づく報告徴求命令を発出、4月には立入検査を実施したと報じられている。

 このような事態を受けて、スルガ銀行では、昨年12月にシェアハウス案件の対応のために「お客さま対応チーム」を発足して相談やアンケートなどを行うとともに、外部の弁護士で構成される「危機管理委員会」(委員長=久保利英明弁護士)を設置して事実関係の調査を行ってきた。そして5月15日、危機管理委員会による調査結果に基づき本件の経過報告と今後の対応について公表したものである。スルガ銀行では、さらに事案の徹底調査と原因の究明を行うために、独立した中立・公正な専門家による「第三者委員会」(委員長=中村直人弁護士)を同日に設置している。

 以下、スルガ銀行の危機管理委員会の調査結果と会社側の現時点での対応等の概要を紹介する。

 

シェアハウス関連融資の全体像

 今年3月末時点で、シェアハウス関連の融資残高は2,035億8,700万円、顧客は1,258人。

 

危機管理委員会が問題として指摘した事項

(1) 顧客に販売する不動産価格が転売により吊り上げられていたと推測されること (略)

(2) 自己資金の残高を証明する通帳の偽造・改ざんなど

  1. ① 通帳の偽造・改ざん
     スマートデイズ関連の販売会社により、融資を受けるに際して顧客がスルガ銀行に提出する自己資金の残高を証明する通帳等の偽造・改ざんが相当数行われていた。自己資金確認資料(通帳等)については、原本確認を行うべきこととなっていたが、その手続が省略されていた。
  2. ② 二重契約
     スマートデイズ関連の販売会社と顧客により、本来受けることのできる金額より多額の融資を受けるために、実際の売買契約書とは別に売買代金額を水増しした「銀行提出用」の売買契約書が作られていた事案も相当数存在する。
  3. ③ 行員の認識
     スルガ銀行の営業担当者が二重契約や自己資金の偽装について明確に認識していたことを直接示す物的証拠はない。しかし、複数の営業担当者は、顧客が提示した自己資金額について、「その年齢、収入等を踏まえると不自然さを感じた案件もあった」旨を述べているが、その疑いをさらに追及していくという対応はとられなかった。その他の事実からも、相当数の行員が、自己資金の偽装の可能性について認識していたと考えられる。

(3) フリーローンのセット販売 (略)

 

危機管理委員会が指摘する、今回の事態を招いた原因として考えられる事項

(1) いわゆるチャネル営業の問題点

 スルガ銀行は、シェアハウス案件に対する融資に当たって「チャネル営業」という手法(スマートデイズやその関連会社といった「チャネル」が個人投資家を紹介する手法)を活用してきた。チャネルは、スルガ銀行にとって(一見すると)便利な存在であった。しかし、実態からすると、本件のような不良チャネルの危険性を認識せず、チャネルとの一体営業にのめり込んでいったリスク意識の欠如が、今回の事態を招いた直接的な原因である。

(2) 内部統制の不全(審査機能の不全)

 前年比増収増益を継続しなくてはならないという全社的なプレッシャーから、事実上、営業が審査部より優位に立ち、営業部門の幹部が融資の実行に難色を示す審査部担当者を恫喝するなど、圧力をかけることも行われ、これに対して審査部門が抗し難いという状況が生じていた。

(3) ビジネスリスク分析の不全

 シェアハウス案件はアパートローンの延長としてしか捉えられず、新規ビジネスとしての事前のリスク評価はなされなかった。また、シェアハウス案件への融資を開始した後も、(シェアハウスへの入居率がビジネスの成否の重要なポイントであるにもかかわらず)入居率の確認等は業者からの申告任せにしていた。このようなリスク認識の不全および管理対応の不在が融資の増大を招いてしまった。

(4) 営業優位の風土によるコンプライアンス不在

 営業現場では融資実行残高至上主義が当然のこととされ、自らがリスクオーナーとしてコンプライアンスを実践する主体であるという意識は失われていた。審査もまた、営業優位という状況下、牽制機能を十分に発揮できていなかった。

 コンプライアンス部門についても、独立した立場で現場を牽制する機能を果たせていなかった。

 内部監査部門についても、シェアハウス案件のリスクに着目したリスクベースの監査を行っていなかった。

(5) リスク情報に対する感度の鈍さ (略)

(6) ガバナンスの不全

 2017年2月まで、取締役会、経営会議などで、スマートデイズ関連融資について議論がなされることはなかった。経営陣は、シェアハウス関連融資の全体的な規模感を把握しておらず、この問題に対するスルガ銀行としてのガバナンスは機能していなかった。

(7) 顧客本位の業務運営(コンダクトリスク)に対する意識の欠如 (略)

 

会社側の現時点での対応策

(1) 営業及び審査の体制

 チャネル管理に関しては、自社での調査能力を拡充させるなど質的な改良を加えつつ、外部調査機関も活用することによりさらなる厳正化を図る。また、審査機能を強化するとともに、営業部門内にも営業推進と業務管理の双方を統括する責任者を配置する。各営業店においては、所属長が規程に則ったプロセス管理を厳正に行うことで、初期の与信管理を徹底し、自律的統制機能を強化する。

(2) コンプライアンス体制

 コンプライアンスの再徹底はもとより、「お客さま本位の業務運営」を徹底、実践する態勢を構築する。

 自己資金の確認において通帳等の現物を確実に確認する仕組みを構築する等、厳正な融資審査が行われる態勢を強化する。

 従前は個人の営業実績にウエイトをかけた人事評価を行っていた点については、今年度より定性評価項目の割合を拡大させた人事評価を導入する。

(3) 経営管理体制

 会社全体のリスク管理態勢の適正化ならびに一層のガバナンス強化のため、取締役会、経営会議、執行会議の会議体の見直しを中心とした機構改革を行った。従前は執行役員のみが参加していた執行会議に取締役が出席することで、取締役によるモニタリングを強化し、営業推進上や業務面で発生している各種課題等をいち早く把握し、審議することで、ガバナンス機能を厳格に行使できる体制とした。

 また、顧客からの苦情等の申し出については、経営陣へ速やかに報告が上がる体制とするため、手続の見直しを行った。

 

  1. スルガ銀行、「シェアハウス関連融資問題」に関する経過のご報告と今後の対応について(5月15日)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2018/05/180515_1-1.pdf
  2. ○ 危機管理委員会による調査結果の要旨
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2018/05/180515_2.pdf
  3. ○ 第三者委員会設置に関するお知らせ
    https://www.release.tdnet.info/inbs/140120180515439073.pdf
  4.  
  5. スマートデイズ、民事再生手続開始申立てについてのお知らせとお詫び(4月9日)
    http://www.smt-days.co.jp/news/post2774/#post
  6. ○ 破産手続開始決定のお知らせ(5月15日)
    http://www.smt-days.co.jp/news/post2857/#post

  7. 東京地裁による民事再生手続申立の棄却決定に対する被害弁護団の「声明」(4月19日)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2018/05/suruga-smart20180419.pdf

    消費者庁、スマートデイズの破産手続開始決定に係る情報について注意喚起(5月15日時点)
    http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/caution_011/other_001/

 

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