◇SH1968◇債権法改正後の民法の未来38 継続的契約(3・完) 中祖康智(2018/07/13)

未分類

債権法改正後の民法の未来 38
継続的契約(3・完)

中祖法律事務所

弁護士 中 祖 康 智

 

4 コメント

  1. ① 大阪弁護士会における議論
  2.    大阪弁護士会でも、本規律を設ける趣旨、すなわち当事者の少なくとも一方が契約の継続性に対して法的に保護されるべき信頼ないし期待を抱いている場合に、同当事者に何らかの法的救済を与えるべきであるということ、また、このことを事前に明らかにすることにより、継続的契約の解消の場面における紛争を未然に防止すべきであるということに対しては、特段の異論はなかった。
  3.    しかし、このことを明文で規律できるかどうかについては、前回述べたと同様、継続的契約及びこれに関する問題の多様性が問題視された。議論の際にも、「継続的契約」という用語が意味する契約の種類や範囲が各委員により区々であるという場面があった。
  4.    結局、紛争の未然防止の要請があることについては特段の異論はなかったものの、定義、要件及び効果のいずれについても具体的な規律として明文化できる立案はできず、不完全な規律はむしろ無用の紛争を惹起しないかと懸念する意見もあり、規律の内容については慎重な検討を要すべきであるとの意見が根強く残った。
     
  5. ② 参考になる視点
  6.    大阪弁護士会において指摘された問題点の多くも、継続的契約が多種多様なものであることに起因するものだった。議論の結果、継続的契約の多種多様性の考慮要素としては、次のようなものが挙げられることがわかった。
  7.  ア 継続的契約の類型について

    1. ・ 数量・金額等の内容が定まった取引を継続的に行うことを約した契約
    2. ・ 基本的な取引条件を定める基本契約に基づいて、継続的に個別取引の受発注が行われる契約
    3. ・ 基本契約が存在しないものの、個別取引の受発注の繰り返しにより継続的な取引関係が構築された契約
       
  8.  イ 継続性の保護の必要性の発生原因

    1. ・ 当初の合意内容に、取引関係を継続的に行うことが含まれている場合
    2. ・ 当事者の少なくとも一方が、取引関係の継続性を信頼して投資を行なったり、同取引関係に依存して事業を行なったりしている場合
    3. ※ 継続性の保護の必要性は、基本方針の定義にある「契約の性質」という文言には収まらず、いずれの当事者が契約関係の継続を主張するかによって変わりうる。
       
  9.  ウ 継続性の保護の態様(効果)

    1. ・ 取引の継続義務、個別契約の受発注義務を認め、取引関係を継続させる
    2. ・ 上記の様な解決が不可能ないし社会経済的に無意味な場合、損害賠償により解決する(前者の例として、受注義務を認めても受注者が調達も製造もできない場合、後者の例として、発注義務を認めても社会的に無用となってしまったもので使用も売却もできない場合)
  10. ③ 今後の対応
  11.    法制審で当初提案された継続的契約の定義である「契約の性質上、当事者の一方又は双方の給付がある期間にわたって継続して行われるべき契約」は、評価を含んだ定義ないし要件(規範的要件)であり、規律としての明確性に欠けるとの批判を受けることになった。
  12.    しかし、この提案は、継続的契約の解消が問題になった多くの裁判例においてとられている思考プロセス、すなわち、問題となっている契約が継続的契約にあたるか否かの判断をまず行い、継続的契約にあたる場合に、個別の事情を考慮し継続性の保護が必要か否かを判断する、という思考プロセスを踏まえたもので、このような思考プロセスは今後も維持されるものと考えられる。
  13.    したがって、今後も、上記②で挙げたような、継続的契約の類型や継続性の保護の必要性の発生原因、継続性の保護の態様(効果)等に着目しつつ、個別具体的な事情を勘案して、信義則等を駆使することで、当該契約が「継続的契約」に該当すること(または該当しないこと)や継続性の保護の要否を丁寧に主張立証したうえで、事案に即した解決方法を模索していくことが求められる。

 

タイトルとURLをコピーしました