◇SH2000◇実学・企業法務(第158回)法務目線の業界探訪〔Ⅳ〕建設・不動産 齋藤憲道(2018/07/30)

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実学・企業法務(第158回)

法務目線の業界探訪〔Ⅳ〕建設・不動産

同志社大学法学部

企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

〔Ⅳ〕建設(ゼネコン、戸建て、下請)、不動産取引

2. 建設・不動産取引には多くの規制がある

(1) 建築・都市計画の基本法である「建築基準法」(1950年制定)

3) 建築基準法改正の主な経緯

 建築基準法は、1950年の制定以降、大地震等の天災・事故・事件が発生する都度、改正が繰り返された。

 改正後の建築物は新基準に適合する耐震性・耐火性等を備えているが、建築物の耐用年数は長く、改正前の相対的に脆弱な建築物が街の中に多数残存していることへの対応策が課題である。

〔改正の経緯〕

1919年(大正8年)市街地建築物法制定(日本初の建築法)

1924年(大正13年)市街地建築物法改正(1923年の関東大震災を受け、筋交い等の耐震規定を新設)

1950年(昭和25年)建築基準法制定(1948年福井地震。床面積に応じた筋交いを入れる規定を導入)

1959年(昭和34年)耐火建築物等の規定・内装制限の新設、定期検査・報告制度の新設 等

1970年(昭和45年)8種の用途地域の規定、容積率規制・隣地斜線制限の全域適用、北側斜線制限の新設 等

1980年(昭和55年)政令で新耐震設計法を導入(二次設計の新設等)

  1. 〔要点〕
  2. ・ 大地震の安全性確認のための構造計算に「二次設計」を新設
  3. ・ 地震力の計算方法を改善
  4. ・ 木造、鉄筋コンクリート造、補強コンクリートブロック塀等の仕様規定を強化
  5. ※ 1977年(昭和52年)に建設省の総合技術開発プロジェクト「新耐震設計法の開発」完了
  6. ※ 1978年(昭和53年)の宮城県沖地震等の地震被害で新耐震設計法の妥当性が明らかになった。

1992年(平成4年)木造建築物に関する規制の見直し(準耐火構造、準耐火建築物の規定の新設等)、12種(以前は8種)の用途地域の規定等

  (注) 1992年に都市計画法が改正され、用途地域区分を8種から12種に細分化。

1995年(平成7年)阪神淡路大震災(1995年)を受け、接合金物(土台緊結、接手等)を奨励

1998年(平成10年)建築物の設計の自由度拡大・建築高コスト構造の是正の社会的要請に対応

  1. 〔要点〕
  2. ・ 建築基準の性能規定化(多様な材料・工法が採用可能に。特に、防火・避難関係。)
  3. ・ 法律で性能項目を定め、レベルを政令の基準で規定。基準の検証方法(計算法等)を規定
  4. ・ 従来の規定は基準を満たす例示仕様とし、設計者は性能検証と例示仕様のいずれかを選択
  5. ・ 以前は建築主事が行っていた建築確認、検査を民間の「指定確認検査機関」に開放
  6. ・ 中間検査を導入
  7. ・ 型式適合認定[1]制度を導入
  8. ・ 構造方法、建築材料、プログラムの認定規定[2]を新設

    1. 〔構造方法等の大臣認定プロセス〕
    2. 1 申請者が国土交通大臣に構造方法等の認定を申請(「申請書」を提出)
    3. 2 国土交通大臣は指定性能評価機関に「性能評価」の全部又は一部を行わせることができる
    4. 3 指定性能評価機関が、性能評価を実施して「性能評価書」を発行
    5. 4 申請者は、「申請書」に「性能評価書」を添付して同大臣に申請
    6. 5 国土交通省が「性能評価書」に基づいて審査を行い、「大臣認定書」を交付

2002年(平成14年)[3] 居住環境改善・適正土地利用の促進のため、制限を合理的・機動的にする。

  ・シックハウス症候群対策のための規制を導入
  ・建築物の形態規制を合理化: 容積率、建蔽率、敷地規模、斜線[4]、日影の規制の選択肢を拡大
  ・地区計画等の規制を見直し:  複雑化した規制を整理・合理化
  ・一定の複数建築物について同一施設内とみなし、制限(容積率規制、斜線規制)を緩和  

2006年(平成18年) 2005年に発覚した構造計算書偽装(耐震偽装)問題の再発防止策 

  1. 〔要点〕
  2. ・ 高さ20m超の鉄筋コンクリート造り建築物等に「指定構造計算適合性判定機関」(知事が指定。新設)  による構造計算適合性判定を義務付け
  3. ・ 3階建て以上の共同住宅に中間検査を義務付け
  4. ・ 罰則を強化(耐震基準等の重大な違反 罰金50万円を、懲役3年/罰金300万円(法人1億)に加重)
  5.  (注) 2006年改正により、全国で確認審査が大幅に遅延し、日本の経済が停滞した。

2014年(平成26年)以前より合理的かつ実効性の高い建築基準制度を構築

  1. 〔要点〕
  2. ・ 定期調査・検査報告制度を強化
  3. ・ 建築物の事故等に対する国・特定行政庁の調査体制を強化
  4. ・ 建築主が、指定構造計算適合性判定機関に直接申請し、審査者・申請時期を選択
  5. ・ 指定確認検査機関等による工事中の建築物の仮使用認定事務を創設(以前は、特定行政庁等のみ承認)
  6. ・ 新建築材料・新技術について大臣認定制度を創設
  7. ・ エレベーターの昇降路部分を容積率に算入しない


[1] 建築基準法68条の10

[2] 建築基準法68条の26第3項、2項。同法77条の56

[3] 都市計画法、都市再開発法、幹線道路の沿道の整備に関する法律、密集市街地における防災街区の促進に関する法律が、併せて改正された。

[4] 道路境界線(又は隣地境界線)からの距離に応じて建築物の各部分の高さを制限する。

 

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