中企庁、平成29年度における下請代金支払遅延等防止法の運用状況及び下請取引の適正化への取組等を公表
――公取委へ1件の措置請求、18業種の下請代金ガイドラインをHPで公開――
中小企業庁は8月27日、平成29年度における下請代金支払遅延等防止法の運用状況及び下請取引の適正化への取組等を公表した。
中小企業庁では、下請取引の公正化を図るとともに、下請事業者の利益を保護することを目的として下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」)に基づき対処しており、下請法違反の未然防止策や下請中小企業振興法に基づく「振興基準」の遵守等を通じて、下請取引の適正化を図っているところである。
平成29年度における取締り等の状況は、以下のとおりである。
なお、公正取引委員会による平成29年度における下請法の運用状況等については、5月31日に公表されている(後掲参照)。
平成29年度における下請代金支払遅延等防止法の運用状況
及び下請取引の適正化への取組等の概要
1. 下請法に基づく取締状況
(1) 措置請求
中小企業庁から公取委へ1件(平成28年度0件)の措置請求を行った。
(2) 書面調査等の状況
親事業者44,620社(平成28年度45,507社)に下請事業者74,927社(同255,148社)を加えた計119,547社(同300,655社)に対して書面調査を実施した。また、中小企業庁及び地方の各経済産業局では、下請事業者から下請法に違反するおそれのある事業者についての情報提供・申告の受付を随時行っており、平成29年度は179件(同129件)を受け付けた。
(3) 立入検査による改善指導の状況
958社(平成28年度1,006社)に対して立入検査を実施し、そのうち867社(同900社)に対して書面により改善指導を行った。また、違反が認められた親事業者のうち270件に対しては、減額した下請代金、支払遅延に係る遅延利息等について、合計で約2億5,100万円(同2億3,000万円)の返還を指導した。
違反の内容としては、実体規定関係の禁止行為の違反として「下請代金の支払遅延」、「下請代金の減額」が、また、手続規定関係の義務違反として発注時の書面の不備や未交付が多く見られ、これら禁止行為や義務違反に対し、改善指導を行った。下請法の違反行為が今後生じることのないよう、これらの親事業者に対して、社内における体制整備など再発防止についての指導を行った。
2. 下請かけこみ寺事業の実施状況
企業間取引に関する各種相談に対応するため、都道府県の協力の下、全国合計48か所に設置した下請かけこみ寺において、相談員による相談の受付6,838件(平成28年度6,583件)、弁護士による無料相談の受付601件(同627件)及び裁判外紛争解決手続(ADR)の調停申立14件(同21件)を受理した。
3. 取引条件改善に向けた取組
(1) 「中小企業・小規模事業者の活力向上のための関係省庁連絡会議」の開催
取引条件の改善、最低賃金の引上げ、生産性向上、長時間労働の是正、人手不足など、中小企業・小規模事業者を取り巻く諸課題に対応するため、平成29年9月に「中小企業・小規模事業者の活力向上のための関係省庁連絡会議」を内閣官房副長官の下に設置して、省庁横断的に必要な検討を行っている(後掲参照)。
(2) 世耕プラン等に基づく取組
親事業者と下請事業者双方の「適正取引」や「付加価値向上」、サプライチェーン全体にわたる取引環境の改善を目的として、平成28年9月に公表した対策パッケージ「未来志向型の取引慣行に向けて」(世耕プラン)(後掲参照)等に基づき、平成29年度においても様々な取組を実施した。
- ① 業種別の自主行動計画の策定等
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幅広い下請構造をもつ自動車等の業種に対して、サプライチェーン全体での「取引適正化」と「付加価値向上」に向けた自主的な行動計画の策定と着実な実行を要請し、平成30年4月末までに、12業種30団体が策定した。
- ② 取引調査員(下請Gメン)による訪問調査
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平成29年1月より、経産省において、全国に80名規模の取引調査員(下請Gメン)を配置して、全国の下請中小企業を訪問し、2,727件のヒアリングを実施した。ヒアリングで聞き取った内容については、個社又は業界団体にフィードバック等を行うなど改善につなげるとともに、下請法違反の疑いがある場合には、検査に移行するなど適正取引に向けた取組を強く促していく。
- ③ 型管理のアクションプランの公表(平成29年7月)
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経済産業省設置の研究会において、型の廃棄、保管料支払い、マニュアル整備等の具体的な「アクションプラン」を取りまとめた。「アクションプラン」の方針として、「不要な『型』を廃棄すること」「保管が必要な『型』の管理費用の支払等についての協議を行うこと」などを取り決めている。
- ④ 自主行動計画のフォローアップ調査結果及び下請Gメンによるヒアリング調査結果の公表(平成29年12月)
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昨秋、経産省所管の6業種18団体自ら「自主行動計画」のフォローアップ調査を行った結果と、下請Gメンによる下請中小企業ヒアリングの結果を突き合わせ、昨年12月に公表した。調査結果では、自動車業界を中心に、手形払いの現金化など「自主行動計画」に基づく取組により着実に成果が出てきている一方、改善の動きが鈍い業界も見受けられた。
- ⑤ 更なる取組の要請(平成30年1月~)
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上記の調査結果を踏まえ、取組の鈍い業界については、世耕大臣より、直接、業界トップに対しさらなる改善努力を要請。また、自主行動計画の策定業種拡大を図っていく。下請Gメンヒアリング調査等で明らかになった金型の分割払い問題など新たな課題に対して、関係省庁と連携して対応していくとともに、下請中小企業振興法「振興基準」の改正などについても検討していく。
- ⑥ 下請等中小企業における取引条件の改善状況調査(調査期間:平成30年1月~3月)
- 受注側事業者60,450社、発注側事業者6,150社を対象に「世耕プラン」に基づく関連法令の基準改正等とこれを踏まえた「自主行動計画」の浸透状況を調査する目的で実施した。また、今回の調査では、現在直面している人手不足の状況や「働き方改革」にかかる影響などについても併せて調査を行った。
4. 下請取引の適正化等に係る通達の発出
平成29年11月15日には、下請事業者との十分な協議による適切な対価の決定、年末の金融繁忙期における資金繰りへの配慮など、下請取引の適正化を要請するため、親事業者約21万社及び関係事業者団体約650団体に対して、経済産業大臣及び公正取引委員会委員長の連名で文書を発出するとともに、下請中小企業振興法に定める「振興基準」の遵守、下請事業者への配慮等を行うよう、関係事業者団体892団体に対して、経済産業大臣名(他省庁所管の業界については主務大臣との連名)で文書を発出した(後掲参照)。
5. 下請取引ガイドラインの策定・普及啓発
業種横断的な下請法のルールを各業種に浸透させ、親事業者と下請事業者の間の望ましい取引関係を構築するためには、各業種の取引慣行に応じて具体的に解説したガイドラインの役割が重要である。現在、18業種(①素形材、②自動車、③産業機械・航空機等、④繊維、⑤情報通信機器、⑥情報サービス・ソフトウェア、⑦広告、⑧建設、⑨トラック運送、⑩建材・住宅設備、⑪放送コンテンツ、⑫金属、⑬化学、⑭紙・紙加工品、⑮印刷、⑯アニメーション制作、⑰豆腐・油揚製造、⑱牛乳・乳製品製造)で策定した下請取引ガイドラインについて、中小企業庁Webサイト上で公表している(後掲参照)。
さらに、下請取引ガイドライン説明会を全国合計170回開催し、3,625名が参加した。説明会では、下請法や独占禁止法の概要、各業種において問題となる取引慣行事例、親事業者と下請事業者の望ましい取引事例等の説明を行った。
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中企庁、平成29年度における下請代金支払遅延等防止法の運用状況及び下請取引の適正化への取組等をまとめました(8月27日)
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/2018/180827shitauke.htm -
○ 概要版
https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2018/09/180827shitauke1.pdf -
○ 詳細版
https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2018/09/180827shitauke2.pdf -
○ 下請取引ガイドライン
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/guideline.htm -
経産省、平成29年度における下請代金支払遅延等防止法の運用状況及び下請取引の適正化への取組等をまとめました(8月27日)
http://www.meti.go.jp/press/2018/08/20180827005/20180827005.html -
公正取引委員会、平成29年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組等(5月31日)
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h30/may/180531.html -
中小企業・小規模事業者の活力向上のための関係省庁連絡会議
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/katsuryoku_kojyo/ -
未来志向型の取引慣行に向けて(2016年9月15日)
http://www.meti.go.jp/press/2016/09/20160915002/20160915002-2.pdf -
参考
SH1515 経産省と公取委、下請取引の適正化等について要請を行う--下請法の遵守、消費税の転嫁の確保等を要請--(2017/11/27)
https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=4925643