政府、経済政策に関する今後の方向性に関して中間的な論点整理
――成長戦略では3年間の工程表を来夏までに決定へ――
政府は11月26日、成長戦略・地方創生・規制改革など今後の経済政策の方向性について審議する主要会議の合同会合を開催し、中間的な論点整理となる「経済政策の方向性に関する中間整理」(以下「中間整理」という)を取りまとめた。
当日の会合は、いずれも首相を議長として関係閣僚や民間の有識者らをメンバーとする「未来投資会議」「まち・ひと・しごと創生会議」「経済財政諮問会議」の3会議および規制改革推進会議(議長・大田弘子政策研究大学院大学教授)の計4会議から代表委員が出席し、合同会議として開かれたもの。事務方の説明は、日本経済再生総合事務局の事務局長代理補・新原浩朗氏(経済産業省経済産業政策局長)からなされた。
各会議の現時点における中間整理が今般の「中間整理」の主軸ともなっており、「第1章 はじめに」「第2章 成長戦略の方向性」「第3章 まち・ひと・しごと創生、地方創生の方向性」「第4章 消費税率引上げに伴う対応等」「第5章 財政運営の方向性」「第6章 規制改革の方向性」の全6章からなる(本稿では紙幅の都合上、第2章・第6章を主に紹介していく)。
経済政策の中核をなすと政府が位置付けているのが成長戦略であり、第1章では、首相が「3本柱で未来を見据えた構造改革に取り組んで」いくとする(1)Society 5.0の実現、(2)全世代型社会保障への改革、(3)地方施策の強化について課題を具体化した。
AIやIoTといった第4次産業革命がもたらすデジタル技術・データ活用の推進により国民一人ひとりの生活が目にみえて豊かになるとされる(1)Society 5.0の実現に向け、①フィンテックおよびキャッシュレス化に関する機能別・横断的な法制への見直し、決済手段の選択肢の多様化の環境整備などを図る。ほか、②地方における移動手段の確保、都市での混雑解消策を検討する次世代モビリティ、③各種行政手続や税・社会保険手続を自動化するなどのスマート公共サービス、④インフラの更新・長寿命化、財政的にも持続可能な次世代インフラについても諸課題が挙げられた。なお、未来投資会議「構造改革徹底推進会合」の今後の検討においては「Society 5.0の実現に向け、コーポレート・ガバナンスの強化、雇用・人材育成、中小企業や農林水産業の生産性向上といった課題についても検討を進める」とされている。
成長戦略の2本目の柱となる(2)全世代型社会保障への改革としては、①65歳以上への継続雇用年齢の引上げ、②中途採用拡大・新卒一括採用の見直しといった雇用制度の改革とともに、③疾病・介護予防および次世代ヘルスケアが課題となっている。
(3)地方施策の強化として掲げられるのは、①地方銀行・乗合バス等の経営統合などに対する競争政策上の制度創設・ルールの整備、②地方への人材供給、③人口急減地域の活性化、④地方経済を支えるものづくり等の中小企業の生産性向上。
①では、地方銀行・乗合バス等の地方基盤企業の経営統合に対する(ア)独占禁止法の適用のあり方(新たな制度創設または予測可能性をもって判断できるような透明なルールの整備)、(イ)独占禁止法の適用を判断する際、公正取引委員会の専門性を向上させるための専門の部署の設置、関係省庁による公式な意見表明制度の導入等によりその知見を公正取引委員会の審査プロセスに反映することについて検討するとともに、(ウ)乗合バス等については、複数事業者間で地域住民のためにサービス内容の調整を円滑に図ることができるよう、独占禁止法の適用の考え方を整理し、(エ)このような地方基盤企業に当たらないものの、地域の雇用維持等に影響を及ぼすその他の企業への独占禁止法等の適用をどう考えるか検討するものとしている。
これら第2章に掲げられる成長戦略に係る論点について政府では、3年間の「工程表」を含む実行計画を来年の夏までに閣議決定したい意向である。
第6章は「規制改革推進会議第4次答申(平成30年11月19日決定)」の記載に基づくもので、(1)第四次産業革命のイノベーション・革新的ビジネスを促す改革、(2)少子高齢化に対応した子育て・介護支援のための改革、(3)農業の成長産業化など地方創生の強化のための改革に大別される。答申の<実施事項>に掲げられた制度改革は「速やかに実行に移し、確実に実現していく」とされ、緊急に取り組むべき事項。
(1)で取り上げられているのは、①証券・金融分野と商品分野を一体的に取り扱う総合取引所の実現、②モバイル市場における適正な競争環境の整備、③電子政府の推進による事業者負担の軽減などで、うち①に関しては11月8日、規制改革推進会議が「総合取引所を実現するための提言」を取りまとめていたところである。
総合取引所については、おおむね2020年度ころの可能な限り早期に実現できるように現在の実行計画を前倒しすることとし、東京商品取引所と日本取引所グループ傘下の取引所との間の協議が円滑に進むよう、今年度末を目途に方向性について結論を得るべく、金融庁・経済産業省等において関係者との協議を行うものとされている。