◇SH2334◇伊藤忠商事、デサント株式に対する公開買付けを開始 (2019/02/13)

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伊藤忠商事、デサント株式に対する公開買付けを開始

――大企業間では異例の敵対的TOBとして進行――

 

 伊藤忠商事(東京都港区、東証第一部上場)は1月31日、同社の完全子会社であるBSインベストメント株式会社(東京都港区)と連名で、BSインベストメントを公開買付者とし、デサント(大阪府大阪市天王寺区、東証第一部上場)の普通株式を対象として金融商品取引法上の公開買付けによりデサント株式を取得することを決議したと発表した。

 伊藤忠商事は同日現在でデサント株式の30.44%を所有する筆頭株主であり、本公開買付けの対象者(デサント)を持分法適用関連会社とする。デサントでは取締役会長に伊藤忠商事の出身者が就任しており、伊藤忠商事が派遣する取締役としてもう1名が伊藤忠商事の執行役員を兼務するかたちで就任している。本公開買付けの届出当初の期間は1月31日~3月14日の30営業日で、買付予定数および買付予定数の上限は7,210,000株(所有割合にして40.00%)、買付代金は20,188百万円。議決権の過半数を取得して子会社化することは企図していない。買付け等の価格は普通株式1株につき2,800円となっている。

 買付け等の価格の算定根拠については独立した第三者機関としてのファイナンシャル・アドバイザーに依頼、1株当たりの価値の範囲として①市場株価平均法:1,862~2,142円、②類似会社比較法:2,108~2,277円、③DCF法:2,506~3,399円を得ており、「対象者経営陣からの賛同を事前に取り付けていないことから対象者及びその株主の皆様が納得できる価格を提示する必要性が相対的に高いと思われること」など諸事情を総合的に勘案のうえ、前営業日となる1月30日の対象者株式終値1,871円に対しては49.65%のプレミアムを加えた価格とした。

 なお、本発表の時点で「対象者が、株主との建設的な対話の重要性を再認識し、また、各投資家の判断に基づく上場株式の売買の機会を不当に制約することにならないよう、本公開買付けに賛同されることを期待して」いると表明。

 伊藤忠商事によると、デサントの業績が韓国事業に過度に依存している状況下、韓国事業の市況低迷に起因して業績見通しが悪化したことで、伊藤忠商事としてはデサントの企業価値が毀損するおそれが増したと判断せざるをえなくなり「2018年6月に改めて事業戦略に関する問題提起や方針の見直し、改善策の検討、実施を強く要請したものの、対象者の経営陣において真摯に検討する姿勢が見られなかったため、対象者の経営陣に危機意識を持たせ、伊藤忠商事からの指摘に対して真摯に対応することを期待」して、同年7月・8月・10月と総計3,719,300株のデサント株式の買増しを行ってきた。

 しかしながら、伊藤忠商事の指摘に対して明確な回答が示されることはなく、同年8月30日には伊藤忠商事から派遣されている非常勤の取締役に事前に何らの連絡や説明もないままにワコールホールディングスとの包括的業務提携契約の締結に関する議題が緊急動議として取締役会に付議されるなど「対象者の成長戦略及び施策について伊藤忠商事らと対象者とが建設的に協議を行える関係ではなくなってしまってい」ると指摘するとともに、BSインベストメント名による公開買付説明書においても、公開買付けの実施に至った背景・理由となる「経営上の問題」として、①中期経営計画の目標未達と韓国事業への過度な依存、②コーポレート・ガバナンス体制の脆弱性、③現経営陣の社員軽視の可能性(=進行していたデサントの非公開化に係る協議がデサント従業員の士気を大幅に低下させるなど。伊藤忠商事の反対を受け、協議先の投資ファンドからは1月31日、検討中止の報告が伊藤忠商事になされた)を掲げ、筆頭株主の責務として「対象者の取締役の見直し等を中心としたコーポレート・ガバナンスの再構築及び強化が急務」と主張している。

 また、本公開買付けの成立後は(ア)次世代の有能なデサント社内人材を積極的に登用すること、(イ)社外取締役を含む取締役会の構成を大幅に刷新することを軸としてガバナンスの再構築などを行い、このような協議がデサント側と整わない場合には定時株主総会において取締役・監査役選任議案等を株主提案する可能性があるとするとともに、経営体制の見直し後においては(A)日本事業の建て直し、(B)海外事業の強化といった施策が実現できるとした。

 一方のデサントは2月7日、本公開買付けに対して反対の意見表明を公表。伊藤忠商事関係の2取締役以外の取締役8名・監査役3名の全員一致により「本公開買付けに対して反対し、当社の株主の皆様には本公開買付けに応募されないようお願いする旨の意見」の表明について決議したとするものである。

 デサントによると、本公開買付けが同社に対して何ら事前の連絡もないまま一方的に開始されていることのほか、①本公開買付けは強圧的な手法により一般株主に対して正当な保障なく伊藤忠商事による当社の経営のリスクを負わせるものであること、②当社の現経営陣による実績は高く評価されている一方、本公開買付け成立後は伊藤忠商事グループの利益を優先した経営がなされ、当社の企業価値が毀損する可能性が高いこと、③本公開買付け後、株主共同の利益のためのガバナンス体制の構築は困難となること、④本公開買付けは不適切な情報開示の下で行われる、不誠実な提案であること(=伊藤忠商事らの指摘が「事実誤認に基づくもの又は事実を不当に歪曲した誤導的記載」であるとする主張)、⑤伊藤忠商事らおよび当社から独立する社外役員も、反対意見の表明を支持していることといった5点を具体的に掲げ、反対理由を説明。伴って同日、この意見表明に関して全28頁建てによるカラー図表付きの「補足資料」をも公表し、関係者への周知をひろく図っている様子が窺える。

 デサントは翌8日、「当社労働組合からの声明文受領についてのお知らせ」と題し、オール・デサント労働組合中央執行委員会名による文書を発表。本公開買付けが、①当労働組合の理念に基づいて大切にしている現在の労使関係等とはその方向性が異なること、②経済合理性のみで施策が決定されるなどの危惧があること、③伊藤忠商事から提案される公開買付け後の施策について「大半において我々が着手済みのものに対して伊藤忠が関与していくという内容がほとんどで、結果としてコスト競争力が失われ、お客様に適正な価格で高付加価値の商品を提供できなくなることを懸念する」とともに、当社株式の保有比率を上げないと着手できないという施策でもないと指摘。労働条件・環境に重大な影響が及ぶことを懸念せざるをえないとして本公開買付けを受け入れることはできないと表明するとともに、両社の経営陣が敵対的ではなく建設的な協議のもと平和的解決に導くことを強く望むとしている。

 伊藤忠商事はデサントによる反対意見の表明を受けて8日、本公開買付けを継続する方針に変わりはなく、終了後はデサント経営陣と誠意をもって対話し、企業価値向上を目指していくと発表した。

 

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