◇SH2366◇債権法改正後の民法の未来73 追完権(2) 藤田増夫(2019/02/27)

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債権法改正後の民法の未来 73
追完権(2)

肥後橋法律事務所

弁護士 藤 田 増 夫

 

3 議論の経過

(2) 立法が見送られた経過

 (イ) 第21回会議

 追完権については、議論が熟していないこと等を理由に中間論点に残さない方向の意見も出た一方で、追完権を認める方向で見直してもよいのではないかという意見も出された。仮に売買の瑕疵担保責任において無催告解除を認める制度設計を採用する場合には、売主に追完権を認める意義があり得るという意見や、意思表示の瑕疵等を理由とした法律行為の無効・取消事由を拡張する場合においては、追完権の発想を応用することにより、契約の維持に利益を有する当事者に適切な救済手段を与えることが可能となり得るという意見があった。また、前回の会議で議論をしたことを踏まえ、追完権が債務者の追完利益を保護する制度として適切か否かという観点だけでなく、債務者の追完利益は他の制度によって十分に確保できると考えるかどうかの観点もあげて論点として残す方向の意見も出た[1]

 (ウ) 中間論点整理

 中間的な論点整理では、前回に引用したとおり、追完権を新設するか否かについて、追完権が債務者の追完利益を保護する制度として適切か否かという観点だけでなく、他の制度(例えば、催告解除の催告要件等)によって債務者の追完利益を十分に確保することができるか否かという観点からも、更に検討することとなった[2]

 なお、中間的な論点整理のパブコメの結果として、追完権の新設については、裁判所、弁護士会及び経済界等、消極的意見が大半を占めた[3]

 (エ) 第40回会議

  1. (A) 消極的意見
  2.   第40回会議においても、追完権の新設については、中間論点整理以前と同様、消極的意見が多かった。消極的意見としては、①様々な追完方法があること等から規範として機能する要件を定めることは困難であり、仮に抽象的な概念を使って要件を定めれば、紛争が増えてしまうのではないかという危惧がある旨の指摘のほか、②一旦不完全な履行をした債務者に一定の優先権的なものを与えること自体に疑問がある旨の指摘等がなされた。また、③追完権が問題となる場面は、填補賠償請求、解除、追完に代わる損害賠償が考えられるが、債務者側の追完の利益ということが考慮に入れられて制度設計される場合には、あえて追完権を立てる必要はなく、逆に追完権の独自の規定を置くのであれば、その3つの場面で仮に債務者側の利益を考慮するのであれば、それとの平仄を合わせるべきである旨の指摘もなされた[4]
     
  3. (B) 積極的意見
  4.   積極的な意見としては、①債務者としては、完全なものと思って給付したのにたまたま何か欠陥があって修補の問題が生じるという場合の利害調整の規定として追完権は意味があるのではないか、その意味があると考えてウィーン売買条約にも規定されているのではないか、との意見があった[5](なお、ウィーン売買条約は追完権についての規定を置いているが、追完権より解除権の方が優先する。)。また、②修理するとコストが掛かるが、新品で取り替えると簡単であるというときに、債権者には新品にすることに何の不都合もないのに、あくまで修理を請求するというような場合、代品に替えさせてほしいということが権利として言えた方がいいのではないか、あるいは逆の場合もあり、修理をすれば簡単に直せるのに、新品を請求される場合に、債権者に何の不都合もないのであれば、修理で追完できるという権利があってもいいのではないか、との意見があった[6]
     
  5. (C) 債務不履行の要件との関係に関する議論
  6.   債務不履行の要件を軽くして、それとの釣り合いで債務者の方にも一定の権利を与えた方がよいという考えは成り立ち得るとの意見が出されたのに対し、債務不履行責任を広げる意図はなく、債権者が取れる手段を丁寧に書いていくのであれば、債務者が取り得る手段についてもきちんと書かないとバランスを失するのではないかという疑念を持つとの意見も出された[7]。また、基本認識の部分については、あまり結論に影響を与えないので深入りしない方がよいとして、債務の本旨に従った履行をしていなかったから、本旨に従った履行を請求するだけであるから、それをゼロから本旨弁済を請求するのではなく、追完という枠内で処理しようというスキームになったとき、何が最も適切な追完なのか、あるべき状態へどう到達させるのかという、ある意味で非常に技術的な制度作りではないかと感じているとの意見も出た。
     
  7. (D) 契約各則における検討
  8.   追完権について積極・消極の両論が出ているが、ここで決定するというのではなく、もう一つの可能性として契約各則において必要に応じて個別的に規定を設けることも考えられるのであり、引き続き検討すべきである旨の意見が出された[8]


[1] 第21回議事録(37頁)、中間的な論点整理の補足説明(54~55頁)

[2] 中間的な論点整理の補足説明(30~31頁)

[3] 部会資料33-2(387~395頁)

[4] 第40回議事録(28~33頁)

[5] 第40回議事録(29~30頁)

[6] 第40回議事録(29~30頁)

[7] 第40回議事録(30~33頁)

[8] 第40回議事録(32~33頁)

 

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