◇SH2379◇法務省、民法第四百四条第三項に規定する期及び同条第五項の規定による基準割合の告示に関する省令案 大久保直輝(2019/03/06)

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法務省、「民法第四百四条第三項に規定する期及び同条第五項の規定による基準割合の告示に関する省令案」に関する意見募集

岩田合同法律事務所

弁護士 大久保 直 輝

 

 法務省令案に対する意見公募を機に、改正民法による法定利率の適用等について、改めて解説を行います。

 

1 債権法改正

 平成29年5月26日、第193回国会において、「民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)」が成立し(以下同法律による改正後の民法を「改正民法」という。)、民法の債権関係の各規定が改正されることとなった。同法により、民法404条(法定利率)の規定も改正されることとなる(平成32年4月1日施行。)。

 

2 改正民法による法定利率

 法定利率に関する改正のポイントは大まかに、法定利率の年率3パーセントへの引き下げ及び緩やかな変動制の採用といえよう。

 第一のポイントである法定利率の年率3パーセントへの引き下げの概要は以下のとおりである。すなわち、 改正前の民法においては、法定利率は年5分、すなわち年率5パーセントとされていた(但し、商行為によって生じた債権に関しては、法定利率は年6分、すなわち年率6パーセントとされていた(商法514条))のに対し、改正民法は、法定利率を年率3パーセントへ引き下げる(改正民法404条2項)とともに、商事法定利率を廃止した。改正の背景として、法定利率が市中金利を大きく上回る状態が続いていることが指摘されており、利息や遅延損害金の額が著しく多額となる一方で、中間利息の控除の場面では、不当に賠償額が抑えられるなど、当事者の公平を害する状況が存するとされている(右の図は、法務省民事局「民法(債権関係)の改正に関する説明資料-主な改正事項-」12頁から引用したものである。)

 第二のポイントである緩やかな変動制は、市中金利が今後とも大きく変動する可能性があるために、将来法定利率と市中金利が大きくかい離する事態を避ける一方で、法定利率が頻繁に変動することへの対応の社会的コストを避けるために採用されたものである。その内容は、概要次のとおりである。すなわち、法務省令で定めるところにより、法定利率は、3年を1期とし、1期ごとに、改正民法404条4項の規定により変動する(改正民法404条3項)。変動の仕組みについてみると、銀行が行った短期貸付けの平均をもとに「基準割合」を算出し(改正民法404条5項)、各期における法定利率は、変動があった期のうち直近のもの(直近変動期)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(1パーセント未満切捨て)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算して算定することとされている(改正民法404条4項)。基準割合の算出方法についてみると、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付(貸付期間が一年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を60で除して計算した割合(0.1パーセント未満切り捨て)として、法務大臣が告示するものをいう(改正民法404条5項)。要するに、①3年ごとに法定利率を見直す、②貸出約定平均金利の過去5年間の平均値を指標とする、③この数値に前回の変動時と比較して1パーセント以上の変動があった場合にのみ、1パーセント刻みの数値で法定利率が変動する、ということである(法務省民事局「民法(債権関係)の改正に関する説明資料―主な改正事項―」13頁参照)。

 

3 意見公募手続

 今回意見公募が行われる省令案は、改正民法404条3項及び5項の委任に基づき、改正法の施行後最初の期が平成32年(2020年)4月1日から3年間であること及び各期の基準割合の告示の時期をその期の初日の1年以上前とすることとするものである。法務省による概要説明によれば、最初の期の初日を定めた趣旨は、改正法の施行日と第1期の初日が一致していることが簡明であること、施行日は年度の変わり目であり、国民にとってもわかりやすく、実務上も対応することが比較的容易であると考えられること、にあるとされ、各期の基準割合の告示の時期は、十分な周知期間を設けるために定められるものとされている。告示については官報のほか、法務省ホームページへの記載を行うことも検討されているようである。

 

4 終わりに

 法定利率の変動まで、約1年となり、今般の省令案に対する意見公募も相俟って、改正民法の施行がいよいよ目前に迫ってきたことが実感されるものと思われる。今回は、実務上の影響が大きいと思われる法定利率の定めに関し、改めて改正民法の内容に関する説明を行った。法定利率についていえば、法定利率が変動することにより様々な利率の債権が混在すれば債権管理のコストが増すことから、契約上の債権に関して発生する利率に関しては、できるだけ、利率を契約で定めることが望ましいと考えられる。各企業においては、この点に関する対応を含めて、今一度、改正民法への対応状況の見直しが求められることと思われる。

以上

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