SH2636 企業法務フロンティア「『投げ銭』サービスとこれからの送金サービス規制」 川本 拓(2019/06/28)

取引法務資金決済法・デジタル資産

企業法務フロンティア
「投げ銭」サービスとこれからの送金サービス規制

日比谷パーク法律事務所

弁護士 川 本   拓

 

1 投げ銭サービスの概要

 昨年のネット流行語大賞2018の金賞は「VTuber」だったようだが[1]、VTuberに限らず、SHOWROOM、17Live等、ライブ配信事業への注目が高まっている。その中でもライブ配信者への「投げ銭」ができるサービスは、視聴者の「投げ銭」が、ライブ配信者の支援になると同時に、ライブ配信を盛り上げることにもつながり、魅力あるコンテンツの提供を促進する[2]

 また、ライブ配信以外でも、より容易にファンがクリエイターをサポートできるOfuseのような「投げ銭」サービスは活発化してきている。Web空間でのコミュニケーションが生活に根付いたためか、その広まりには、クラウドファンディングと同じく、「お金に名前が付いてくる感覚」[3]を人々が求める時代意識を見ることができるかもしれない。

 これに対し、消費者庁は、昨年(2018年)12月14日、インターネット消費者取引連絡会において、「ライブ配信サービス(投げ銭等)」としてこのようなサービスを取り上げた[4]。そこでは、未成年者による配信や、広告としての利用といった問題のほか、「投げ銭」が視聴者から配信者への送金であることから、資金決済に関する法律(以下、「資金決済法」)上の論点も指摘されている。また、本稿では取り上げないが、ライブ配信事業の市場拡大と同時に、違法行為の生配信や著作権問題といったリスクも大きくなっているとされる[5]

 

2 問題となる法規制

 それでは「投げ銭」にどのような規制が適用されうるだろうか。

 銀行法4条1項、61条1号は、免許を受けずに「銀行業」を営むことを刑罰をもって禁じ、同法2条2項2号は、「銀行業」に「為替取引を行うこと」が含まれることを定めている。また、資金決済法により、銀行等以外の者は、資金移動業者として登録すれば、100万円以下の「為替取引」を行うことができる(同法37条、2条2項、同法施行令2条)。このように、「為替取引」は銀行等か資金移動業者にしか認められていない。

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