欧州委員会、アマゾン「マーケットプレイス」データを巡るEU競争法違反の疑いで正式調査を開始
――小売業者かつプラットフォーマーとして「二重の役割」を指摘――
EU(欧州連合)の欧州委員会は7月17日、アマゾンが自ら開設する「Amazonマーケットプレイス」(以下「マーケットプレイス」という)の出品者から得られるデータの利用に関してEU競争法に違反していないか、正式な調査を開始したと発表した。
インターネット小売り大手のアマゾンでは(a)アマゾン自身が販売している商品と(b)アマゾン以外の独立した小売業者(出品者)が出店というかたちで販売している商品とが混在して取り扱われている。(b)のように出品者がその商品を消費者に直接販売することができるように開設されている市場が「マーケットプレイス」であり、アマゾンは(a)の商品に関しては、これらを自社のウェブサイトで販売する小売業者とみることができるのに対し、(b)の商品については「マーケットプレイスの開設者・提供者」という立場にあることになる。
競争政策担当の欧州委員によると、今般の調査はアマゾンのこのような「二重の役割」に着目したもの。マーケットプレイスの提供者としてのアマゾンはプラットフォーム上の利用状況に関するデータを絶えず収集しており、欧州委員会の予備的調査によると、同社は出品者、その商品およびマーケットプレイスでの取引に関する競争上の機密情報を利用しているものと思われるという。
欧州委員会では徹底的な調査の一環として、次の点について調べるとしている(以下2点の箇条書きについて、駐日欧州連合代表部の<日本語仮抄訳>による)。
- ・ アマゾンの小売事業が他の販売者のデータを分析・利用することを可能にする、同社とマーケットプレイスを利用する小売業者の間の基本契約。欧州委員会は特に、小売業者としてのアマゾンが、マーケットプレイスで活動する他の小売業者の累積データを利用することが競争に影響を与えているのか、その場合どのような影響なのかに焦点を当てる。
- ・「Buy Box(ショッピングカートボックス)」を与える業者の選定におけるデータの役割と、マーケットプレイスでの小売業者の競争上機密となる情報がその選定に与える影響。「Buy Box」はアマゾンでは目に付くように表示されており、利用者が特定の小売業者の商品を直接自身のショッピングカートに入れることを可能にする。取引の大部分が「Buy Box」を通じて行われるため、それを獲得することがマーケットプレイスに出店する業者にとって重要であると見られる。
上記2点のうち前者の「データの分析・利用」を巡っては、たとえば、プラットフォーマーとしてのアマゾンがマーケットプレイスのあらゆるデータにアクセスすることが可能な場合、アマゾンは小売業者としてどの出品者よりも優位に立つことができるという点で反競争的な契約・行為と捉えられるだろう。
正式調査の今後については、欧州委員会のウェブサイト http://ec.europa.eu/competition/elojade/isef/index.cfm にある「Policy Area:」で「Antitrust / Cartels」にチェックを入れたうえ「Case Number:」に本事案の番号「40462」を入力し、本ページ下方・右側にある「Search」ボタンをクリックする → この操作により開いたページで「Case Number:」欄にある本事案番号「40462」をクリックすることにより、「Events:」として更新された状況が確認できることとなるようだ。適宜参考とされたい。