◇SH2953◇平和不動産、従業員の会社資産不正流用を巡り社内調査結果を公表――上席部長らの二重就業による不正を認定、再発防止策は計13項目に (2020/01/08)

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平和不動産、従業員の会社資産不正流用を巡り社内調査結果を公表

――上席部長らの二重就業による不正を認定、再発防止策は計13項目に――

 

 証券取引所ビルのオーナー企業であり市街地再活性化事業を展開する平和不動産(本店・東京都中央区、東証市場第一部・名証・福証・札証上場)は12月13日、同社従業員による会社資産の不正流用を巡って社内調査委員会の調査報告書(開示版)を公表するとともに再発防止策を発表した。

 同社は2020年3月期第2四半期決算の発表を翌日に控えた10月30日、決算発表の延期、その理由として従業員による会社資産の不正流用の疑義を認識したことを公表。2019年8月から実施の税務調査の過程で判明、10月11日に社内調査委員会を設置して調査を実施し、関係者に対する事情聴取等を行っているとした。併せて公表した社内調査体制は「経営陣の関与する組織的不正の疑義は生じていないため、調査の効率性及び迅速性の観点から、調査体制としては社内調査委員会としつつ、不正調査等に豊富な経験を有する外部専門家(弁護士・会計士)も委員に加える」とされ、同委員会は同社代表取締役を委員長として2取締役および常勤監査役、大手法律事務所弁護士、監査法人系コンサルティング会社公認会計士の計6名により構成された。

 12月13日の発表は前日12日の調査報告書受領を受けたもので、12日時点では「調査報告書(要約版)」を明らかにするとともに今後の対応方針を発表している。決算への影響については177百万円を不正関連損失として特別損失に計上する予定であるとしつつ、過年度修正は行わないと表明。

 13日付の「調査報告書(開示版)」によると、本件は、同社が不動産取引の仲介手数料を支払った仲介業者等から同社不動産ソリューション部所属の従業員または従業員が実質的に経営する会社が金銭を受領している旨のキックバックに関する疑義を税務調査の過程において認識し、また、10月上旬には従業員がその会社で運営する店舗の内装工事を同社が保有する不動産の修繕工事に係る費用の一部で賄っている旨の工事費流用に関する匿名の通報を受けたことから判明しており(以下、併せて「本件不正行為」という)、本件調査の過程で関与した疑いのある者が拡大したことなどから四半期報告書の延長後の提出期限を12月13日までとし、調査を拡大するための期間を確保したという。なお、不動産ソリューション部は上席部長1名・次長6名ほか計18名で構成され、調査対象者は上席部長A・次長BほかC・Dの計4名であった。

 調査の実施期間は2019年10月11日〜12月9日、対象期間は2008年4月〜2019年9月を原則として必要に応じこれ以前にも遡ることとされた。具体的な調査方法は、関連資料等の閲覧・検討、インタビュー、デジタル・フォレンジック、確認状の送付と回収、社内アンケート調査。インタビューは「本件不正行為を実行したことが疑われる当社の従業員3名」「本件不正行為に関する認識を有している可能性がある当社及び当社子会社の役職員21名」「本件不正行為に係る取引の社外の関係者及び下記エの確認状の結果に基づき事情を聴取する必要があると認めた社外の関係者」ら計16名に対して行われた。確認状の送付は、本件不正行為が「社内資料から不正の有無を調査することが困難な類型であることから、……本件不正行為に係る取引に関係する不動産取引の相手方、仲介業者等及び工事業者に対して、取引内容及び当社職員の行為を確認するため」に実施されたもので、取引規模・属性・工事金額等を踏まえて本件不正行為に係る取引以外の関係者を含めた計88件を11月2日付で発送、12月2日までに66社・84件の回答を回収した。

 調査結果によれば、A・B・Cは無許可での二重就業が就業規則で禁止されているにもかかわらず、事前の許可を得ることなく自らが全部または一部を出資する個人会社を実質的に経営し、または自らが代表取締役に就任するなどして不動産に関する事業を営んでいた。Aの個人会社は2014年および2015年設立の計3社、Bの個人会社は2015年設立の1社、Cの個人会社は2012年設立の1社となっている。

 事実認定として、たとえばキックバックについては、A・B・Cの個人会社が2014年9月〜2019年7月の間、平和不動産が関係する不動産取引に関して仲介業者等から報酬を受領していた計23件の案件のうち22件について、Aらが平和不動産に対する誠実義務に違反して個人会社で報酬を得たことにより、その全部または一部が平和不動産としては過大支払いまたは逸失利益になったと評価しうると判断。不動産ソリューション部所属のDについては「A氏の指示に従っていないことがA氏に伝われば、A氏の反感を買い、当社で仕事を続けることすら困難になると考えたため、A氏の前では仲介手数料の一部を受け取ったかのように振る舞っていた」もので、「仲介業者等から金銭を受領していることを示す客観的な証拠も本調査では顕出されなかった」とされている。

 工事費流用については、仔細は明らかになっていないながら結論として「当社の従業員であるA氏は、A氏の個人会社……において負担すべき……における工事費を実際よりも安くするために、当社の利益を犠牲にしたものであり、過大計上分は本来当社が負担すべきものではなかった」と評価しうるものとした。

 原因については(ア)不正の動機、(イ)不正を行う機会の存在、(ウ)自己正当化の事由に大別して、計14点を指摘。これらのうち(イ)の9点は、次のとおりである。業務のたこつぼ化、情報の抱え込み等による不透明さの増大、仲介業者等の起用・監視に関する明確なルール・基準の不存在、再委託先の管理の欠如、工事発注に関する明確なルール・基準の不存在、不動産ソリューション部の管理体制に係る機能不全、上長からの監視・監督の実効性不足および社内決裁プロセスの形骸化、他部署と協働する際の引継ぎ・役割分担の不明確さ、内部通報制度の不浸透。

 社内調査委員会の調査報告書における「再発防止策の提言」を踏まえ、同社では12月13日、同日開催の取締役会において(1)役職員の意識改革、(2)管理体制の強化・充実等、(3)内部通報制度の充実の3つの観点から計13項目となる再発防止策を決定、公表した。うち(2)を具体的にみると、①取引先の担当等の見直し、②情報の登録・管理の徹底、③仲介業者等の選定時および工事発注時におけるルール・基準の明確化、④再委託先の管理方法の見直し、⑤不動産ソリューション部に対する管理体制の改善、⑥上長による監視・監督および社内決裁プロセスの改善・強化、⑦他部署との協働に際しての引継ぎ・役割分担の明確化の7項目。

 たとえば、上記③についてはさらに具体的な対応とし、(a)媒介契約の締結前に、仲介業者の選定理由、契約内容の確認、業務内容の確認、仲介手数料が適切であるかの確認、複数の仲介業者に委託する場合の理由等に関するチェックリスト・取引スキーム図・仲介業者等の活動記録の作成、(b)新規の仲介業者の場合には取引先として適切であるかの監視、(c)工事発注時における複数業者による相見積りの取得の徹底ーーを掲げるものとなっている。

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