◇SH0419◇女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案が参院本会議で可決・成立 泉 篤志(2015/09/09)

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女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案が参院本会議で可決・成立

岩田合同法律事務所

弁護士 泉   篤 志

 平成27年8月28日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」が成立した。同法は、自らの意思によって職業生活を営み、又は営もうとする女性の個性と能力が十分に発揮されることの重要性に鑑み、女性の職業生活における活躍を推進し、豊かで活力ある社会の実現を図ることを目的としている。かかる目的を実行する施策として、同法は、国及び地方公共団体による基本方針等の策定、女性の職業生活における活躍を推進するための支援措置、事業主行動計画の策定等を規定しているところ、本稿においては、民間事業主の関心が高いと思われる事業主行動計画の策定等について解説することとする。

 まず、301人以上の労働者を雇用する事業主においては、(i)採用者に占める女性比率、(ii)勤続年数の男女差、(iii)労働時間の状況、及び(iv)管理職に占める女性比率(以上は必須項目であり、任意項目については本年10月頃に省令で定められる予定)につき把握し、課題分析を行わなくてはならない(8条3項)。また、これを踏まえて、当該事業主は、女性の活躍推進に向けた①行動計画の策定、②都道府県労働局への届出、③労働者への周知、及び④外部への公表を行わなければならない(同条1項、4項、5項)。この点、①の行動計画においては、計画期間、数値目標、取組内容、及び取組実施時期を盛り込む必要があり(同条2項)、効果的な取組内容については本年10月頃に行動計画策定指針で定められる予定である(下記表を参照)。また、④の外部への公表の方法に関しては、来年2月頃に厚労省のHPにおいてデータベースが公表される予定であるので、これを利用して行うことが可能である。当該事業主は、かかる行動計画に定めた内容について、その取組を実施し、かつ、目標を達成するよう努めなければならない(同条6項)。なお、かかる行動計画の策定等は、同法が施行される平成28年4月1日までに行わなければならない。

 次に、301人以上の労働者を雇用する事業主においては、女性の職業選択に資するよう、女性の活躍に関する情報として本年10月頃に省令で定められる予定の事項から当該事業主が適切と考えるものを定期的に公表しなければならない(16条1項)。かかる公表についても、上記厚労省のHPにおけるデータベースを利用して行うことが可能である。

 以上については、300人以下の労働者を雇用する事業主においても努力義務が課されている点に留意が必要である(8条7項、16条2項)。

 さらに、上記行動計画の策定・届出を行った事業主のうち、女性の活躍推進に関する取組の実施状況等が優良な事業主は、都道府県労働局への申請により、厚生労働大臣の認定を受けることができる(9条)。そして、かかる認定を受けた事業主は、厚生労働大臣が定める認定マークをその商品等に付することができるとされている(10条1項)。この認定マークを活用することにより、女性の活躍が進んでいる企業として、企業イメージの向上や優秀な人材の確保につながる等といったメリットが期待できるものと思われる。

 従前から、企業における女性の活躍を推進する施策として、政府が公表に同意した上場企業における女性の活躍に関する情報をHPで公表したり、経団連においても掲載を希望した会員における女性の役員・管理職登用に関する自主行動計画を公表するなどしているところである。また、上場企業は、コーポレートガバナンス報告書において、役員等の男女別構成比や、役員への女性登用の現状等の積極的な開示が要請されている。今般成立した「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」は、これらの動きを更に推し進め、法律上の義務として官民が一体となって女性の活躍を促進する点に意義があると思われる。女性活躍推進の取組及びその実現は、優秀な人材の確保のみならず企業価値を高め株主及び投資家にとって魅力ある企業となるためにも重要な課題であることから、各企業においては同法に基づいた取組を積極的に行っていく必要があろう。

 

行動計画策定指針において示される予定の取組分野

  • 女性の積極採用に関する取組
     
  • 配置・育成・教育訓練に関する取組
     
  • 継続就業に関する取組
     
  • 長時間労働是正など働き方の改革に向けた取組
     
  • 女性の積極登用・評価に関する取組
     
  • 雇用形態や職種の転換に関する取組
      (パート等から正規雇用へ、一般職から総合職へ等)
     
  • 女性の再雇用や中途採用に関する取組
     
  • 性別役割分担意識の見直し等職場風土改革に関する取組

 

 

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