企業内弁護士の多様なあり方(第1回)
-連載にあたって-
日清食品ホールディングス
弁護士 本 間 正 浩
連載にあたって
今回から約8ヵ月にわたって「企業内弁護士の多様なあり方」という連載を行う。
これは2010年から2011年にわたり、日本弁護士連合会・弁護士業務改革委員会・企業内弁護士PT(現在は「小委員会」に改組)においておこなわれた研究をもとに、当時、研究に関与した有志および現小委員会メンバーにおいて、再整理を行ったものである。
2009年、日弁連は『企業内弁護士』と題する書籍を出版した(商事法務刊)。
これは、「体験記」の域を超えて、企業内弁護士の実態及びこれを巡る諸問題について客観的な研究を行うことを目指したもので、その価値は現在においてもいささかも減ずるものではないと自負するものではあるが、その取りまとめにあたり終始問題となったのは、企業内弁護士を分析/議論していくための共通の基盤となる観念が定立されていないということであった。
本研究は、かかる問題への対応の一助として、企業内弁護士について、各種の視点から、「ありうる態様」を鳥瞰することを目的としたものである。いわば、「カフェテリアのメニュー」として、「この視点においては、当社の企業内弁護士(あるいは企業内弁護士である自分は)ここまでやっているが、この点はやっていない」と分析できるような尺度を提供しようとするものである。
したがって、記述上、各視点間の相互関係は意識されていない。また、両極端を示すという記述法がとられたものも少なくないが、その中には無数の中間項があり、その中での相対的な位置づけを考えることが前提とされている。
具体的には次のような視点が選択された。
(なお連載に際し、事情により順番が前後する可能性があることは了承されたい。)
1、企業内弁護士の業務の性質
2、業務に対する積極性の態様・程度
3、外部弁護士との関係
4、訴訟への関与
5、法務部門の組織の作り方
6、仕事の形態
7、企業内弁護士の待遇の決め方
8、企業内弁護士の「仕事の内容」
9、ゼネラリストvsスペシャリスト
10、企業内弁護士の「仕事の段階」
11、新人弁護士を採用する企業の期待
12、シニア弁護士を採用する企業の期待
番外、外部弁護士から見た企業内弁護士
もとより、これが企業内弁護士の諸要素の全てを網羅しているものはない。しかし、これにより、企業内弁護士についての議論について、多少でも共通の基盤ができるようであれば、望外の幸いである。
以 上