◇SH0588◇企業内弁護士の多様なあり方(第10回)-外部弁護士との関係(上) 平泉真理(2016/03/09)

未分類

企業内弁護士の多様なあり方(第10回)

-第4 外部弁護士との関係(上)-

ベーリンガーインゲルハイム ジャパン
法務部長 ジェネラルカウンセル

弁護士 平 泉 真 理

第4 外部弁護士との関係

1 はじめに

 企業内弁護士が所属する企業においても、法務業務を完全に内製化し、外部弁護士を一切利用しないという場合は稀であり、何らかの形で外部弁護士への依頼を行う場合が多い。企業内弁護士と外部弁護士とは、企業法務において、相互に補完する関係にある。以下、企業内弁護士と外部弁護士の関係につき検討する。

2 外部弁護士への依頼の要否の判断

 (1) 企業内弁護士が所属する企業において、外部弁護士への依頼の要否の判断はどのように行われるだろうか。

 まず、企業内弁護士の存在により法務業務が十分に内製化できている場合は、当然ながら、その範囲内の日常的な業務は外部弁護士へ依頼する必要がない。

 また、非日常的な業務であっても、法律問題が存在するか否かすら不明な未成熟な案件や、秘密性が特に高く、きわめて限られた人数で迅速に意思決定する必要がある案件などについては、企業内弁護士の判断に基づき案件を進め、それ以上に外部弁護士の助言を求めないことが多いと思われる。

 また、業界特有の専門知識やノウハウが必要とされる案件について、企業内弁護士以上にそのような知識やノウハウに精通した外部弁護士が存在しない場合も同様であろう。  

 他方で、企業内弁護士がいても外部弁護士への依頼が必要と判断される場合がある。

 まず、社内のリソースが不足する場合がある。予期せず発生した訴訟などの紛争解決や、新規事業の立ち上げ、M&A、不祥事対応など、通常の社内のリソースだけでは対応しきれないような、大量の事務処理を要する事案が発生した場合などがその例である。

 また、高度に専門的な法律分野に関する知識やノウハウを必要とする案件につき、社内にそのような専門家が存在しない場合が挙げられる。

 さらに、客観性や中立性を担保する必要性の高い場合がある。例えば、法的に適正であるという意見書や、不祥事発生時の調査報告書など、監督官庁や社会から見て十分に客観的・中立的であると評価される意見書が必要な場合が挙げられる。企業内弁護士はあくまで「内部者」「身内」と位置付けられがちであるため、企業内弁護士が、どれだけ客観的で中立な意見を提出したとしても、世間よりその客観性・中立性に疑義を呈されるおそれがあるためである。

 (2) 上記のような外部弁護士への依頼の要否判断は誰が行うのであろうか。

 まず、企業に法務担当部署が存在する場合には、法務担当役員や法務部長などが外部弁護士への依頼の要否の判断を一任されることが多いように思われる。

 これに対し、外部弁護士の支援を必要とする部署が、法務担当部署を通さず、独自に外部弁護士への依頼の要否の判断を行い、直接コンタクトまで行う場合もある。企業規模の比較的大きな会社の人事部門、知財部門などに多いようである。

(以下、次号)

タイトルとURLをコピーしました