◇SH0754◇企業内弁護士の多様なあり方(第30回) 第11「 新人弁護士を採用する企業の期待」(下) 真銅孝典(2016/08/03)

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企業内弁護士の多様なあり方(第30回)

-「新人弁護士を採用する企業の期待」(下)

オリックス不動産株式会社

弁護士 真 銅 孝 典

第11 新人弁護士を採用する企業の期待 (下)

 では、企業としては、新人弁護士にどのようなことを期待して採用しているのか。

  1. ⑴ まず、法科大学院に進学し、司法試験に合格していることから、法的素養を備え、将来の法務部門を担う優秀な法務担当者になることを期待して採用していると考えることができる。つまり、法科大学院において、基本的な法律を学習し、実務教育を受けていること、司法試験に合格したことから、基本的法律知識を身につけ、一定の事務処理能力を有していることを評価していると考えられるのである。この場合には、「弁護士」であることそれ自体に特段の意味はない。実際に、弁護士登録を不要(または認めない)とする企業がある。
  2. ⑵ また、総合職の通常の社員として採用された場合には、部門間の異動もありえ、また法曹資格を有しない法務部員との調和も当然に求められる。この点、新人弁護士は、弁護士としての実務経験がないがゆえに、法律事務所勤務時に染みついた自己独特の仕事のやり方もないため(良し悪しの評価をしているのではない)、所属企業における仕事のやり方に比較的馴染みやく、周りとの調和を図りやすい要素があるといえる。
  3. ⑶ さらに、日系の企業では、できるだけ長く勤務して、当該企業内での様々な経験を積んで会社に貢献することを期待する傾向が強い。この点、新人弁護士の場合は、一定の経験を有する弁護士がキャリアップを念頭に短期的に企業に在籍するケースとは異なり、その企業へ定着し長く勤務することが期待できる。

 以上のとおり、新人弁護士の採用にあたっては、弁護士としての即戦力の法律実務能力に期待して採用しているのではなく、将来的に当該企業における法務部門を担う優秀な法務人材として、中長期的視点から当該企業において能力を発揮することを期待して採用している場合が多いと考えられる。

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