◇SH0816◇日弁連、「民法の成年年齢の引下げの施行方法に関する意見募集」に対する意見書 徳丸大輔(2016/09/28)

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日弁連、「民法の成年年齢の引下げの施行方法に関する意見募集」に対する意見書

岩田合同法律事務所

弁護士 徳 丸 大 輔

 

 日弁連は、平成28年9月14日、法務省民事局が同月1日付けで意見募集を行っている民法の成年年齢の引下げの施行方法に関する意見募集[1](以下単に「意見募集」という。)に対して、意見書(以下単に「意見書」という。)を提出した。

 意見募集は、法務省民事局が行っている民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げる法改正(以下単に「法改正」という。)の準備作業に関して、改正法の具体的施行方法、施行日、経過措置等について意見を募集するものである。これに対し、日弁連は、意見書において、「民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げることについては引き続き慎重に検討すべきである。」との趣旨の意見を述べている。

 平成21年10月の法制審議会の答申及び意見募集要領によれば、民法の成年年齢の引下げによって、民法上、①18歳、19歳の者が行った契約は、未成年であることを理由として取り消すことができなくなる、②18歳、19歳の者は、親の親権に服さないことになる、③18歳、19歳の者は未成年後見制度の対象ではなくなる等の影響が生じるとされている[2]。また、日弁連の意見書によれば、上記の他、④離婚後の養育費の支払終期の繰上げ、⑤未成年者の労働契約の解除権(労働基準法58条2項)の喪失、⑥児童福祉法・児童扶養手当法などにおける児童福祉上の支援の後退などといった影響も生じるとされている。
 これらを企業活動の観点から検討すると、主に契約締結の場面において、次のような影響が生じることが予想される(なお、以下はあくまで現時点で予想される法改正の内容を前提としており、実際に行われる法改正の内容次第では更なる影響が生じる可能性がある点に留意されたい。)。

 

改正に伴う影響 企業活動への影響

18歳、19歳の者について、法定代理人の同意(民法5条1項)が不要となり、同意がない場合の取消権(同条2項)がなくなり、単独で(法定代理人の関与なしに)取引できる範囲が拡大する。

18歳、19歳の者と契約する際に、法定代理人の同意の確認が不要となる。

法定代理人が関与しない点を踏まえて、説明義務(情報提供義務)[3]や適合性原則といった法規制遵守や、取引相手方の適切な意思決定の確保の観点から、18歳、19歳の者と契約する際の情報提供や審査の在り方を再検討する必要が生じ得る。

 

 法改正の今後の予定は現時点では明らかとなっていないが、企業活動への影響もあり得る内容の改正であり、今後とも留意が必要と思われたことから紹介する次第である。



[1] http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080150参照。なお、意見等の受付締切日は本月30日までである。

[2] なお、養子をとることができる年齢(民法792条)については、20歳とする現状を維持することが予定されている。

[3] 説明義務(情報提供義務)が課されている取引として、金融商品取引(金融商品取引法、金融商品販売法)、割賦販売取引(割賦販売法)、不動産取引(宅地建物取引業法)、訪問販売取引等(特定商取引法)などがあるほか、これら個別法に規定がない取引でも信義則上の義務として説明義務が課される場合もある。

 

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