内田洋行、ストラテジックキャピタルによる株主提案に反対する旨を表明
岩田合同法律事務所
弁護士 山 田 康 平
1. はじめに
内田洋行は、2017年9月11日、同日開催の取締役会において、ストラテジックキャピタル[1]による株主提案(①定款変更、②剰余金の処分)について、いずれも反対することを決議した。
本年6月の株主総会では、全国証券取引所上場会社1,893社中36社(新興市場を含めると40社)[2]で株主提案権が行使されており、特に、黒田電気では社外取締役の選任を求める株主提案が可決された。近年、株主提案は増加傾向にあり、各企業にとって、いわゆる「物言う株主」の動向は無視できないものであることから、内田洋行に対するストラテジックキャピタルによる株主提案の概要を紹介することとしたい。
2. 株主提案の概要
(1) 定款変更
一つ目の株主提案は、純投資目的以外の目的で保有している上場株式を速やかに売却する旨の条項を追加することを内容とする定款変更議案である。ストラテジックキャピタルによる提案の理由及び内田洋行が当該提案に反対する理由の概要は以下のとおりである。
提案の理由の概要 | 反対する理由の概要 |
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コーポレートガバナンス・コード原則1-4は、上場会社が政策保有株式として上場株式を保有する場合には、「政策保有に関する方針」を開示するとともに、「政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための基準」を策定・開示することなどを求めている。
ストラテジックキャピタルも同原則に基づく内田洋行の開示の内容について言及しているが、同原則は純投資目的以外の目的で保有する上場株式を売却することまでは求めていない。
政策保有株式を保有する企業においては、その保有のねらい・合理性を慎重に検討の上、説得的な理由を開示することが肝要である。
なお、上記株主提案が定款変更(会社法466条)の形式をとっているのは、取締役会設置会社における株主総会決議事項は、会社法に規定された事項及び定款で定めた事項に限定されているからである(同法295条2項)。
(2) 剰余金の処分
二つ目の株主提案は、当期の連結の1株当たり当期純利益に相当する金額を配当することを内容とする剰余金の処分議案である。ストラテジックキャピタルによる提案の理由及び内田洋行が当該提案に反対する理由の概要は以下のとおりである。
提案の理由の概要 | 反対する理由の概要 |
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配当政策・株主還元に関する質問は、株主総会においてよくなされるものでもあり、各企業においては、十分な回答を準備しているところであろう。
3. おわりに
近年、株主提案は増加傾向にあるところ、株主提案を受けた場合、総会の事前準備や当日の議事運営に大きな影響があることから、各企業においては、弁護士と密接に連携の上、慎重に対応する必要があろう。
以 上
[1] 提案株主として、INTERTRUST TRUSTEES (CAYMAN) LIMITED SOLELY IN ITS CAPACITY AS TRUSTEE OF JAPAN-UPも記載されているが、これはストラテジックキャピタルが投資一任契約を締結しているファンドである(ストラテジックキャピタルのHP(http://stracap.jp/proposal/2017_uchida)参照)。なお、同社は、本年、内田洋行のほか、4社に対して、株主提案を行っている。
[2] 「株主総会概況―平成29年6月総会1,893社―」資料商事400号(2017)237頁。