◇SH1577◇最高裁、マンション管理組合の理事長を理事の過半数の一致で解任できると判断(2018/01/11)

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最高裁、規約に基づき理事の互選により選任されたマンション管理組合の理事長につき、理事の過半数の一致で解任できるとの判断

−−福岡高裁に審理を差し戻す−−

 

 最高裁判所第一小法廷(大谷直人裁判長)は平成29年12月18日、理事の互選により選任する旨の定めがある規約を有するマンション管理組合の理事長につき、理事の過半数の一致で解任できるとの判断を示した。

 判決などによると、本件は、福岡県のマンション管理組合(上告人)と理事長だった男性(被上告人)との事案である。

 上告人が定めた本件マンションの管理規約(以下「本件規約」)には、次のような定めがある。

「管理組合にその役員として理事長及び副理事長等を含む理事並びに監事を置く(40条1項)。理事及び監事は、組合員のうちから総会で選任し(同条2項)、理事長及び副理事長等は、理事の互選により選任する(同条3項)。役員の選任及び解任については、総会の決議を経なければならない(53条13号)。」

 本件の経緯は次のとおりである。

 

平成25年1月 上告人の臨時総会において、被上告人を含む役員10名が選任される
同年3月 上告人の理事会において、理事の互選により、被上告人が理事長に選任される
同年8月 上告人の通常総会において、上記の役員10名に加え、新役員5名が選任される
同年9月 上告人の理事会において、役員15名のうち13名出席の下、同年10月20日に役員の役職決定を議題とする理事会を開催することが決定される
同年10月
10日
被上告人が、理事会決議を経ないまま、他の理事から総会の議案とすることを反対されていた案件を諮るため、理事長として臨時総会の招集通知を発出
同月10月
20日
上告人の理事会において、被上告人を除く役員14名のうち11名(理事10名、監事1名)出席の下、本件規約40条3項に基づき、理事10名の一致により、Aを被上告人に代わる理事長に選任し、被上告人の役職を理事長から理事に変更する旨の決議(以下「本件理事会決議」)

※本件では、上記の経緯の後に、上告人の組合員の請求に基づいて招集された臨時総会における決議についても争いとなっているが、ここでは省略する。

 

 本訴は、被上告人が、本件理事会決議等が本件規約に違反しているとして、その無効確認等を求めたものである。

 原審(福岡高判平成28・10・4)は、「本件規約は、区分所有法に定める管理者である理事長を理事の互選により選任する旨を定めているが、これは解任についての定めではないこと、理事長を管理組合の役員とし、役員の解任は総会の議決事項とする旨を定めていること等からすると、本件規約40条3項を根拠として、理事長の地位を喪失させることは許されないと解すべきである」旨の判断を示し、「被上告人の役職を理事長から理事に変更する旨の本件理事会決議は、本件規約に違反して無効である」とした。

 これに対して最高裁は、次のような理由を示して、原審の判断は是認することができないとの判断を示した。

 

  1.  「ア 区分所有法によれば、区分所有者は、全員で、建物等の管理を行うための団体を構成し、同法の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができるとされ(3条)、規約に別段の定めがない限り、集会の決議によって、管理者を選任し、又は解任することができるとされている(25条1項)。そうすると、区分所有法は、集会の決議以外の方法による管理者の解任を認めるか否か及びその方法について区分所有者の意思に基づく自治的規範である規約に委ねているものと解される。
  2.   イ そして、本件規約は、理事長を区分所有法に定める管理者とし(43条2項)、役員である理事に理事長等を含むものとした上(40条1項)、役員の選任及び解任について総会の決議を経なければならない(53条13号)とする一方で、理事は、組合員のうちから総会で選任し(40条2項)、その互選により理事長を選任する(同条3項)としている。これは、理事長を理事が就く役職の1つと位置付けた上、総会で選任された理事に対し、原則として、その互選により理事長の職に就く者を定めることを委ねるものと解される。そうすると、このような定めは、理事の互選により選任された理事長について理事の過半数の一致により理事長の職を解き、別の理事を理事長に定めることも総会で選任された理事に委ねる趣旨と解するのが、本件規約を定めた区分所有者の合理的意思に合致するというべきである。本件規約において役員の解任が総会の決議事項とされていることは、上記のように解する妨げにはならない。
  3.   ウ したがって、上記イのような定めがある規約を有する上告人においては、理事の互選により選任された理事長につき、本件規約40条3項に基づいて、理事の過半数の一致により理事長の職を解くことができると解するのが相当である。」

 

 その上で判決は、「(本件の)事実関係等によれば、本件理事会決議は(略)、上告人の理事会において、理事の互選により理事長に選任された被上告人につき、本件規約40条3項に基づいて、出席した理事10名の一致により理事長の職を解き、理事としたものであるから、このような決議の内容が本件規約に違反するとはいえない」とした。

 そして、原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決中被上告人の本訴請求に関する部分を破棄し、「本件理事会決議の手続の瑕疵の有無等について更に審理を尽くさせるため、同部分につき本件を原審に差し戻す」こととしたものである。

 

 

  1. ○ 最一小判(大谷直人裁判長)、理事を組合員のうちから総会で選任し、理事の互選により理事長を選任する旨の定めがある規約を有するマンション管理組合において、その互選により選任された理事長につき、理事の過半数の一致により理事長の職を解くことができるとされた事例(平成29年12月18日)
    http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87311

 

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