◇SH3173◇コロナ危機とドイツの電子株主総会――日本法への示唆 高橋英治(2020/05/29)

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コロナ危機とドイツの電子株主総会

―日本法への示唆―

大阪市立大学教授

高 橋 英 治

 

1 コロナ対処法の成立

 ドイツでは、2020年3月27日、「COVID-19パンデミックの影響に対処するための会社、協同組合、社団、財団および居住所有権の措置に関する法律[1]」(以下、「コロナ対処法」という)が成立し即日発効した。コロナ対処法は2021年末まで効力を有する時限立法である。コロナ対処法の柱は次の点にある。①2020年に開催される株主総会につき取締役は会社の株主総会をヴァーチャルオンリー型の電子株主総会[2]として、すなわち物理的な株主総会(「リアル総会」)を開かずに、会の画面および音声の中継および株主の質問可能性等を確保した上で、開催することができる(同法1条2項1文)。②ヴァーチャルオンリー型の電子株主総会において、取締役は、株主総会の開催日の遅くとも2日前までにメール等で会社に届いた質問についてだけについて義務的自由裁量の下で回答することを決定する(同法1条2項2文)、④ドイツ株式法131条1項[3]が規定する株主の質問権はヴァーチャルオンリー型の電子株主総会には適用されず、取締役はどの質問に答えるか選択でき、質問に義務的自由裁量の下で回答することを決定する(コロナ対処法1条2項2文)、③ドイツ株式法59条1項では定款の授権があった場合に限り取締役は貸借対照法に基づき株主に対して配当を支払うとされているが、コロナ対処法は、取締役に定款の授権なくとも、株主に対して配当を支払う権限を与えている(同法1条4項)、④ドイツの株式法175条1項では、株主総会は事業年度の開始から8ヵ月以内に開催されなければならないとされているが、コロナ対処法は、事業年度末までに株主総会は開催されればよいとしている(同法1条5項)、⑤有限会社の社員総会につき書面やメールでの決議を認める(コロナ対処法2条)。

 

2 バイエル社のヴァーチャルオンリー型の電子株主総会

 ドイツ製薬大手のバイエル社は、2020年4月28日、ヴァーチャルオンリー型の株主総会を開催した。その概要を、以下においてレポートする。

 2020年4月28日10時、ボンにあるコングレスホールの一室が映し出され、そこのバイエル社の監査役会会長が開会を宣言する。株主総会の議長は、ドイツの通常の株主総会と同様に、監査役会会長が務めている。監査役会会長は、本総会が、取締役の決定で、コロナ対処法に基づき、ヴァーチャルオンリー型の電子株主総会として開催されると宣言し、ボンのコングレスホールに参集している取締役と監査役会構成員を紹介し、このヴァーチャルオンリー型の電子株主総会に参加者している株主は、総会の開催の間、取締役と、直接電子的にコミュニケーションをとる機会も保障されていると説明した。

 まず、監査役会会長は資本金の63パーセント強の参加者があることを確認し、役員の任期満了による交代について報告した。それから監査役会会長として、役員の多様性の向上、特に女性役員の積極的登用を促した。その後、(連結計算書類を含め)計算書類が会計検査人によって承認されたことを確認し、その後の、筆頭取締役の年度報告へ移るとし、画面から退場した。

 ここで、取締役と監査役構成員がいるコングレスホールの一室の画面全体が映し出される。右に発言台があり、左に取締役・監査役会構成員がそれぞれ台の元に着席している。役員は全体で6名であり、2列に並んでいる。前方の中心に監査役会会長が着席している。これは、ドイツの(電子株主総会でない)通常の株主総会[4]の壇上の様子と全く変わらない。発言台に立つ者が監査役会会長から筆頭取締役に交代する間、係の人が発言台を念入りに消毒している様子もはっきりと映し出される。

 満を持して、筆頭取締役が登場。画面は左に小さく、筆頭取締役の説明の様子が映し出され、右に、筆頭取締役の報告の要約が大きく、ちょうど、シンポジウムのパワーポイントのような形式で、話の流れに従って映し出される。まず、筆頭取締役は、今度のコロナ危機で、世界10万人の従業員の安全を第一に経営したと報告。バイエル社が、世界で展開する各地で医薬品を寄付したことも報告した。筆頭取締役は、特にバイエル社が製造するクロロキンがコロナヴィルスに効果があることをテストにより突き止め、世界各地の医療現場に寄付したことを報告した。また、筆頭取締役は、米国のバイエルの従業員が、コロナヴィルス対応のマスクを開発したことにも触れた。そして、筆頭取締役は、株主のおかげで、バイエル社がこのような社会的に意義ある活動に従事できることを感謝した。

 続いて、筆頭取締役は、2019年度の財務上・収益上の成果について報告した。そして、役員報酬について触れた。役員報酬については具体的には報告せず、研究上の成果の報告に移る。筆頭取締役は、このテーマについては、詳細に具体的に報告した。続いて、筆頭取締役は、収益が前年度比で18.5パーセント上昇したことに触れ、2019年は実効性のある成功の年だったと結論づけた。そして、筆頭取締役は、配当を株主に対し1株あたりで2ユーロ80セント支払いたいと提案した。筆頭取締役は、これは、コロナヴィルス対応で、コストも上昇している結果であると説明した。

 次に、筆頭取締役は、バイエル社を訴える米国での訴訟の状況を説明した。しかし、筆頭取締役は、これは会社の秘密事項であるから、あまり触れないと述べた。最後に、筆頭取締役は、2020年の事業見通しについて報告した。筆頭取締役は、バイエル社が関わる健康と栄養は2020年においても依然として人類にとって重要なテーマになり続けると説いて、楽観的な見通しを基調としつつ、地球温暖化対策や地球規模での持続性の貢献についても継続して貢献していきたいと述べた。最後に、筆頭取締役は、本総会をもって任期が満了し退任する監査役会会長に、これまでの貢献に感謝した。

 続いて、発言台に監査役会会長が再び登場し、監査役会会長による監査役会報告を行った。2019年に株式法改正(株主権指令法Ⅱ[5])で成立し2020年3月28日に発効した会社と取締役との取引(関連当事者取引、related party transactions)に関する監査役会の承認(2019年改正株式法111c条1項参照)に関しても、監査役会会長は「我々は承認した」と簡潔に報告した。監査役会会長は、特別検査事項についても、ボン大学名誉教授で会社法専門の実務家のホフマン=ベッキング教授(Michael Hoffmann-Becking)が任意の検査で、2019年度に行われたバイエル社のコンツェルンの内部取引につき株式法上違法な点がないという点を確認したと述べた。監査役会会長は、2019年度にバイエル社が行った企業買収については、ミュンヘン大学の商法・会社法・資本市場法を専門とするハバーザック教授(Mathias Habersack)の検査を得て、これが株式法に違反しないことを確認したと報告した[6]。2019年に株式法改正(株主権指令法Ⅱ)で成立し2020年3月28日に発効した取締役報酬に対する株主の関与(say on pay)についても、バイエル社は、株主総会招集通知に、報酬体系と固定報酬と変動報酬の割合(2019年改正株式法87a条1項3号参照)等につき記載していたが、監査役会会長は取締役の報酬体系(「上場会社の報酬体系」2019年改正株式法87a条参照)が「適正である」と説明した。続いて、監査役会会長は、監査役会構成員の選任について各候補者の紹介をし、自分は、この総会を最後に任期満了で退任し、別の者が監査役会会長になると述べて、発言台から去った。バイエル社の株主総会では、大規模な上場会社の(電子株主総会でない)通常の株主総会におけるのと同じく、業務事項の報告は筆頭取締役に、法務事項の報告は監査役会会長に委ねられているようである。

 続いて、これから監査役会会長となる現監査役会構成員が壇上に上り、これからの抱負について簡単に述べた。

 再びこの総会を限りに退任する監査役会会長が壇上に登場し、バイエル社を「私の企業」とも呼び、感傷も込めて、これまでの会社人生を振り返り、壇上から去る。

 監査役会会長(株主代表者)の代理人である別の監査役会構成員(労働者代表者)が(ネクタイなしで)壇上に現れる[7]。これまでの、監査役会会長との監査役会での共同作業を振り返り、監査役会会長に感謝の言葉を贈る。

 再び議長である監査役会会長が現れ、コロナ対処法1条2項1文に基づきヴァーチャルオンリー型の電子株主総会の2日前にメールで会社に寄せられた事前の株主の質問に対し取締役と監査役会構成員が回答する場面となる。まず、ドイツの株主総会での慣例に従って、株主団体[8]の質問から取り上げられ、続いて一般の株主の質問が取り上げられた。取締役等に対する質問は、開催日の2日前までにメール等で、会社に寄せられていたため、取締役と(従業員も)その回答を準備できたようである。

 バイエル社のヴァーチャルオンリー型の電子株主総会では同社の(電子株主総会でない)通常の株主総会と同じように多くの質問が会社に寄せられた。バイエル社ではこの3年間の(電子株主総会でない)通常の株主総会では平均して51名の株主から239の質問が株主から出されていたが、2020年のヴァーチャルオンリー型の電子株主総会では50名の株主から245の質問(200頁に上るという)が寄せられた。同社の筆頭取締役は、(電子株主総会でない)通常の総会と同じく、寄せられた245の質問すべてに回答したと説明した。回答は、用意されている原稿に依拠して行われた。

 続いて、監査役会会長が現れ、投票(総会決議)の時間となった。まず、監査役会会長は、総会の出席者は資本金の62パーセント余りであることは確認した。その後、監査役会会長は、決議事項の一つひとつを読み上げた。これらは、配当、役員の任期満了や選任、監査役会構成員の任期に関する定款変更などであった。そして、監査役会会長、15時45分までに投票するように株主に指示した。

 画面は、「すこしの辛抱を願います。すぐに投票結果は出ます」という画面になり、ムード音楽が流れる。その間、画面は動かないままである[9]

 ヴァーチャルオンリー型の電子総会の最後に監査役会会長が現れ、投票結果を発表した。画面に投票結果が示され、それを監査役会会長が読み上げた。投票結果は電子株主総会の日のバイエル社のホームページでも公表された。開票結果は、個別の議案ごとに、賛成・反対・棄権の投票数、各パーセントが画面で示された。16時56分、監査役会会長が電子株主総会の終了を宣言した。7時間近くヴァーチャルオンリー型の電子株主総会はかかったことになるが、これはドイツの大規模な上場会社の(電子株主総会でない)通常の株主総会とほとんど同じ長さである。

 

3 日本法への示唆

 日本とドイツはコロナ危機を迎え、それぞれの会社法および会社実務において、対応がなされている。しかし、ドイツと日本の会社法におけるコロナヴィルスへの法および実務の対応の違いは、大きい。

 日本では、コロナ危機という予想外の事態のなか、大多数の上場会社は2020(令和2)年6月28日に株主総会を開催する予定である[10]。これにより、コロナヴィルスへの感染を恐れる株主は株主総会の出席を今年は見送らねばならない状態に陥っている。日本では、ヴァーチャルオンリー型の電子株主総会は株主が取締役等の経営者と対面で直接やりとりする機会を奪い、株主の権利に対し消極的な効果をもつともいわれてきた。しかし、今や、日本では電子株主総会を上場会社が導入しないことが、日本の上場会社の株主から、株主総会に参加する権利や会場で質問する権利を実質的に奪っている[11]

 ドイツのバイエル社で開催されたヴァーチャルオンリー型の電子株主総会の実態は日本にとっても示唆的である。コロナ対処法の下でドイツにおいて実践されているヴァーチャルオンリー型の電子株主総会では、会社側は総会の開催日の2日前までに株主からの質問を受け取れるようにすることができるため、株主の質問に大勢の株主を前に答える取締役の苦痛を和らげる効果がある。2020年のバイエル社のヴァーチャルオンリー型の電子株主総会では実際に総会前に回答は用意され、取締役は用意された原稿に基づき回答していた。

 ドイツのバイエル社で開催されたようなヴァーチャルオンリー型の電子株主総会において、取締役は、質問に対する答えの原稿を、事前に十分に練り上げて書くこともできるので、ヴァーチャルオンリー型の電子株主総会を導入した日本企業の経営者は、自社の総会の様子を躊躇なく同時通訳を付けて世界同時発信することができる[12]。ヴァーチャルオンリー型の電子株主総会は世界的に事業展開する日本の上場会社にとって、メリットが大きい。実際に、バイエル社は、自社のヴァーチャルオンリー型の電子株主総会に自信を持ち、自社の投資家重視の姿勢をアピールする機会になると考えたからか、実際のヴァーチャルオンリー型の電子株主総会の映像[13]や総会関連の招集通知や同社の会社定款も自社のサイトにアップしている。ヴァーチャルオンリー型の電子株主総会は、株主だけでなく、会社側にとっても、メリットのある制度である[14]

 他方で、コロナ対処法1条2項1文に基づくヴァーチャルオンリー型の電子株主総会には株主の質問権について規定する株式法131条1項が適用されないので、そもそも質疑応答の時間がヴァーチャルオンリー型の電子株主総会では設定されず、取締役はただ回答だけを行う。コロナ対処法1条2項1文に基づくヴァーチャルオンリー型の電子株主総会では、取締役が株主からの質問に対し不十分な回答しかしなかった場合に、再度、株主が質問する機会が与えられていない[15]。コロナ対処法1条2項1文に基づくヴァーチャルオンリー型の電子株主総会では、取締役は株主からの質問に答えるか答えないかにつき、義務的とはいえ自由裁量を有する(コロナ対処法1条2項2文参照)。コロナ対処法の下でのヴァーチャルオンリー型の電子株主総会では株主には自己の質問が取締役によって答えられるという保障がない[16]。コロナ対処法の下でのヴァーチャルオンリー型の電子株主総会において、株主は、自分の質問が取締役によって取り上げられなかったとしても、株式法131条違反を理由とした株主総会決議取消訴訟等を提起できない。コロナ対処法1条2項1文に基づくヴァーチャルオンリー型の電子株主総会では、取締役に株主からの質問につき選択して回答することを(義務的自由裁量の下で)決定できるからである(同法1条2項2文参照)。コロナ対処法1条2項1文に基づくヴァーチャルオンリー型の電子株主総会では、株主の質問権が保障されていない点は、今後、ドイツがヴァーチャルオンリー型の電子株主総会を恒久の制度として根付かせる上で問題になるであろう[17]

以上


[1] “Gesetz über Maßnahmen im Gesellschafts-, Genossenschafts-, Vereins-, Stiftungs- und Wohnungseigentumsrecht zur Bekämpfung der Auswirkungen der COVID-19-Pandemie vom 27. März 2020 (BGBl. I S. 569, 570)”. 本法律の概観につき、商事2227号(2020)海外情報参照。本法律について論じるドイツの文献として、Noack/Zetzsche, Die virtuelle Hauptversammlung nach dem COVID-19-Pandemie-Gesetz 2020, AG 2020, 265-278; Mayer/Jenne, Hauptversammlungen in Zeiten von Epidemien und sonstigen Gefahrenlagen – zugleich Besprechung des COVID-19-Pandemie-Gesetzes, BB 2020, 835-844; Götze/Roßkopf, Die Hauptversammlung nach dem Gesetz zur Abmilderung der Folgen der COVID-19-Pandemie im Zivil-, Insolvenz- und Strafverfahrensrecht, DB 2020, 768-774がある。本法律の下での電子株主総会の実務上の問題を取り扱うドイツの文献として、Bücker/Kulenkamp/Schwarz/Seibt/Bonin, Praxisleitfaden zur virteullen Hauptversammung (COVID-19-Pandemie-AuswBekG), DB 2020, 775-783; Herb/Merkelbach, Die virtuelle Hauptversammlung 2020 – Vorbereitung, Durchführung und rechtliche Gestaltungsoptionen, DStR 2020, 811-817がある。またはコロナ渦での株主総会のあり方について論じるドイツの文献として、Wicke, Die virtuelle Hauptversammlung während der Corona-Pandemie – aktienrechtlicher Ausnahmezustand, DStR 2020, 885-889; Noack/Zetzsche, Die Hauptversammlung der Aktiengesellschaft in Zeiten der Corona-Krise, DB 2020, 658-664; Vetter/Tielmann, Unternehmensrechtliche Gesetzesänderungen in Zeiten von Corona, NJW 2020, 1175-1180; Rubner/Pospiech, Coronavirus und Gesellschaftsrecht – Online-HV, NJW-Spezial 2020, 239-240がある。本法律は、「私法、倒産法および刑事手続法においてCOVID-19パンデミックの効果を緩和するための法律(Gesetzes zur Abmilderung der Folgen der COVID-19-Pandemie im Zivil-, Insolvenz- und Strafverfahrensrecht)」のArtikel 2として制定された。

[2] 電子株主総会につき、北村雅史「株主総会の電子化」商事2175号(2018)5頁以下、神作裕之「株主総会のIT化(特集 最近の商法改正(2))」民商126巻6号(2002)778頁以下、岩本充=神田秀樹編『電子株主総会の研究』(弘文堂、2003)参照。

[3]「取締役は、各株主に対し、株主総会において請求があるときは、その説明が議事日程の目的である事項の適切な判断のため必要である限りにおいて、会社の業務に就いて説明しなければならない」(「株主の質問権」株式法131条1項1文)。本条項の下で、取締役は、ドイツの憲法に当たる基本法14条1項(財産権保障)によって保護された固有の社員権として質問権を有し(Hüffer/Koch, Aktiengesetz, 13. Aufl, München 2018,§131 Rdnr. 2)、株主総会の議事日程においては株主からの質問の時間を特に設けなければならないと解されている(Hüffer/Koch, AktG,§131 Rdnr. 10)。また、ドイツの下級審判例および支配説によると、株主の質問は(書面ではなく)他の株主が知ることができるよう口頭でなされなければならない(OLG Frankfurt AG 2007, 451, 452; OLG Frankfurt AG 2007, 672, 675; LG Köln AG 1991, 38; Hüffer/Koch, AktG,§131 Rdnr. 9)。

[4] ドイツの通常の株主総会の実態につき、高橋英治「ドイツBASF社の株主総会――日本の総会への示唆」商事1662号(2003)83頁以下参照。

[5] Gesetz zur Umsetzung der zweiten Aktionärsrechterichtlinie (ARUG II) vom 19. Dezember 2019, (BGBl. I S. 2637)”. 本法律は、EUの「第二株主権利指令」を国内法化するための法律であり、2020年3月28日に発効した。EUの「第二株主権指令」については、高橋英治『ヨーロッパ会社法概説』(中央経済社、2020年夏刊行予定)参照。

[6] バイエル社によるMonsanto社の買収はドイツでは批判されていた。ハバーザック教授は、バイエル社の監査役会の求めに応じて、この買収がバイエル社の取締役の経営判断の枠内といえるか否かについて(株式法93条1項2文参照)鑑定書を作成した。

[7] バイエル社では、共同決定法の適用により、取締役の選任権限を有する監査役会の構成員の半数が労働者代表によって占められる。この点につき、高橋英治『ドイツ会社法概説』(有斐閣、2012)169頁参照。

[8] ドイツにおける株主団体につき,布井千博「ドイツにおける株主団体の組織と活動(上)(中)(下)──株主団体による株主権行使を中心として」法律時報1644号(1998)15頁以下、1645号(1998)15頁以下、1647号(1998)23頁以下参照。

[9] 総会の開催中に、株主による投票とその結果を出すための時間を設定するというのはドイツの株主総会の実務である。投票結果が出るまで、昼食抜きで、総会での回答や議事に当たっていた取締役と監査役会構成員は簡単な食事をとるのが、ドイツの大規模な上場会社の株主総会では慣行となっている。なお、ドイツでは、株式法上、株主総会の議事録は公証人が作成し、公証人が議事録に署名し決議を認証することが義務づけられている(株式法130条1項・4項・5項)。

[10] 2020年5月13日付朝日新聞朝刊7面。

[11] 2020年6月の株主総会で、ハイブリット型の電子株主総会を導入する日本の上場会社は、ゲームソフト大手のカプコンなど、極めて少数である(2020年5月20日付日本経済新聞朝刊13面)。

[12] 日本法で可能な物理的な株主総会(「リアル総会」)も開催する電子株主総会である「ハイブリット型の電子株主総会」では、思いもかけない質問が「リアル総会」の会場に出席している株主から出されることで、取締役が不意を打たれ、世界で観ている大勢の株主の前で面目を失う可能性がある。ハイブリット型の電子株主総会につき、経済産業省「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」(2020年2月26日)https://www.meti.go.jp/press/2019/02/20200226001/20200226001-2.pdf

[13] 2020年のバイエル社のヴァーチャルオンリー型の電子株主総会の映像は、https://edge.media-server.com/mmc/p/ce6cniau/lan/en/dmediaset/auto/dformat/hlsで閲覧することが可能である(英語の音声も選択できる)。

[14]ドイツでは、(電子株主総会でない)通常の株主総会において、長時間におよぶマラソン総会になり、議長によって質問時間を5分間に制限された後、その制限時間を超えて質問し続けた大学教授(経営学専門)である株主が、発言途中で、議長の個人的事項の質問を始めた時に議長によってマイクを切られ、係員によって強制的に着席させられたことに対し、当該大学教授株主が、まず総会決議取消訴訟を提起し、これが認められなかったため、憲法上の財産権(基本法14条)等の侵害を理由として連邦憲法裁判所に憲法異議の訴えを提起した事件(憲法異議の訴えは認められなかった)があった(BVerfG, Kammerbeschluss vom 20. September 1999 – 1 BvR 636/95 –, ZIP 1999, 1798 “Wenger/Daimler-Benz”)。このような事態は、ヴァーチャルオンリー型の電子株主総会においては起こりえない。本事件の詳細につき、高橋英治『ドイツと日本における株式会社法の改革――コーポレート・ガバナンスと企業結合法制』(商事法務、2007)17頁以下参照。

[15]ドイツの大規模な上場会社の(電子株主総会でない)通常の株主総会では、取締役による回答は株主の質問が終わった後一括して行われ、再度質問する株主はほとんどいない。そのため、自分の質問が取り上げられなかったという理由で株式法131条(株主の取締役に対する質問権)違反が生じる余地は、ドイツの大規模な上場会社の(電子株主総会でない)通常の株主総会においては、ほとんどない。

[16] コロナ対処法の基になる法律の与党側草案は、コロナ対処法1条の立法理由につき「株式会社の経営陣はすべての質問に答える必要がない。株式会社の経営陣は株主からの質問を要約することができ、さらに他の株主にとって意味のある質問だけを選択することもできる」と説明する(Gesetzentwurf der Fraktionen der CDU/CSU und SPD, Entwurf eines Gesetzes zur Abmilderung der Folgen der COVID-19-Pandemie im Zivil-, Insolvenz- und Strafverfahrensrecht, BT-Drucksache 19/18110, S. 26)。コロナ対処法による株主の質問権の制限が、ヨーロッパ法または(ドイツの憲法である)基本法に違反するか否かについて検討するものとして、Noack/Zetzsche, a.a.O (Fn. 1), AG 2020, 265, 270 ff.がある。

[17] なお、日本法では、ドイツ法のような「株主の質問権」の保障(株式法131条1項参照)という法形式ではなく、「取締役等の説明義務」の設定(会社法314条)という法形式になっているため、ドイツのコロナ対処法下でのヴァーチャルオンリー型の電子株主総会におけるように、「質疑応答」の時間ではなく、「取締役の説明」の時間だけを設けるという法実務も、条文の文言解釈から許されると解する余地がある。

 

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