◇SH1598◇社外取締役になる前に読む話(6)――取締役会での実質的議論への参画⑵ 渡邊 肇(2018/01/24)

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社外取締役になる前に読む話(6)

ーその職務と責任ー

潮見坂綜合法律事務所

弁護士 渡 邊   肇

 

VI 取締役会での実質的議論への参画――経営会議等の存在と社外取締役の葛藤(その2)

 先回に引き続き、経営会議等と社外取締役との葛藤について検討していきたい。

 ワタナベさんの疑問は以下のようなものであった。

ワタナベさんの疑問その4

 取締役会に出席して意見を述べ、重要な業務執行に関する決議に関与しているが、当社では取締役会の前に経営会議と称する会議が開催され、決議事項のみならず、報告事項についても、実質的議論は既に終了しており、会社の方針は既に決まっているようである。

 社外取締役は、経営会議での決定に異議を唱えることができるのだろうか。

 また、自分も経営会議に出席して経営の実質的議論に関与したいと思うのだが、それは可能なのだろうか。さらに取締役会において、社外取締役も含めて実質的議論をしてもらうために、経営会議を廃止することも提案したいのだが、それは可能かつ適切なのだろうか。

 

解説

 先回は、経営会議等の会議体には法律上の根拠なく、各社が任意に設置している機関に過ぎないこと、従ってその設置自体のみならず、誰がその構成員になるかについても、総て会社が任意に決めることが可能であるということをご紹介した。今回は先回の解説をふまえ、ワタナベさんはどのような点に考慮してその態度を決めていけば良いのか、考えてみよう。

 経営会議等が設置されている会社であっても、当該経営会議等と取締役会との関係については、会社によって相当に異なっているものと想像される。ワタナベさんが実際に、経営会議等への出席やその廃止を求めるべきか否かは、一般論で議論すべき問題ではなく、取締役会において経営会議での議論の経過やその結論が随時報告されているか、取締役会で社外取締役も含め、同一の問題を再度議論することが可能な状況になっているか、取締役会における議論の結果、経営会議での結論を変更することもまた実質的に可能になっているか、等の要素を斟酌しつつ、判断すべき事柄であろうと思われる。

 この点、取締役会で経営会議等での議論の状況を逐次報告させ、社外取締役との情報共有を図ることを可能にする体制を採っている会社も存在する。そのような会社においては、取締役会において経営会議等での議論がどの程度の深度で報告されているかという点が重要であるのは勿論、経営会議での決定事項に関しても、取締役会において社外取締役も含めて再度議論する体制が採られているか否かが非常に重要になると思われる。経営会議の議論の経過等が取締役会において報告されるだけでは、取締役会での実質的議論が担保されたことにはならないからである。更には、場合によっては経営会議等での結論を変更することが可能となっていなければ、最終的に社外取締役の意見が取締役会の意思決定に反映されないことになる。これらの点を勘案しつつ、社外取締役の見解が十分に取締役会の意思決定に反映される体制となっているか否かという点を見極めることが必要であろう。因みに、先回解説したとおり、経営会議等に法律上の根拠がない以上、経営会議等に出席していない社外取締役が、経営会議等での結論に異議がある場合、取締役会においてその旨の意見を述べることもまた、法律上なんら制約を受けていないし、取締役会において経営会議での決定事項を変更することも、法律上は可能であることを十分にご理解頂きたい。

 逆に経営会議等での議案の内容、議論の内容について、取締役会において一切報告されない会社があるとすれば、そのような会社においては、まずは取締役会において経営会議等での議論の内容の報告を求め、それに対する会社の対応をみるということもあり得るように思われる。

 いずれにしても、会社としては、経営会議等を開催することについて一定の必要性が存在するからこそ、法律上は必要とされていない、そのような会議をわざわざ開催しているわけである。議論の出発点は、そのような会社にとっての必要性を社外取締役と会社との間で共有することではないかと思われる。その上で、会社にとってのそのような必要性そのものが合理的なものなのか、仮にそうだとして、当該必要性は、社外取締役も含めた取締役会での議論によって本当に阻害されるものなのか等の問題につき、十分な議論を尽くすことが必要だと思われる。経営会議等を設置している会社の殆どは、当該会議は社外取締役を迎え入れる前から継続して行ってきていると想像する。しかしながら、社外取締役を迎え入れた以上、社外取締役を交えた取締役会構成員全員で実質的議論を行わない限り、会社法の要請が満たされたことにはならない。社外取締役としては、会社と十分な議論を行い、この点についての理解を共有し、その上で、経営会議等の在り方、取締役会との関係について、会社と十分に議論を深めることが必要であろう。

 

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