◇SH1696◇債権法改正後の民法の未来14 不安の抗弁権(3・完) 中西敏彰(2018/03/09)

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債権法改正後の民法の未来 14

不安の抗弁権(3・完)

北浜法律事務所・外国法共同事業

弁護士 中 西 敏 彰

 

Ⅳ 立法が見送られた理由

 不安の抗弁権という抗弁権があること自体には争いはなかったが、上記のとおり、濫用のおそれから明文化に反対する意見が根強く、明文化に肯定的な意見もその要件においては明確かつ限定的であることを求める意見が多いなど、明文化について意見の一致を見ることができなかった。その結果、不安の抗弁権は明文化されるに至らなかった。

 

Ⅴ コメント

1 大阪弁護士会での検討状況(議論内容)

 大阪弁護士会においては、不安の抗弁権の明文化については、要件が適切かつ厳格に規定されることを前提に反対しない、という意見であった。不安の抗弁権という権利があること自体については争いがなく、国民にとってわかりやすい民法という観点からは明文化を積極的に否定する理由がないからであった。一方、不安の抗弁権はひとたび濫用されると相手方に深刻な影響を与えてしまうため、要件をどのようにして適切かつ厳格に規定するかが焦点となった。

 その後、法制審では、適用場面として倒産手続開始の申立てを例示する案が提案されたが、これに対しては強く反対した。これは、事業の再生を阻害するおそれがあること[4]や、倒産手続開始の申立てのみを例示することは、裁判例において不安の抗弁権が認められたのが、継続的取引における当事者の一方による爾後の商品供給停止という形態が中心を占めているにもかかわらず、その適用場面を狭めることになりかねないことからである。

 そこで、抽象的な要件での明文化を検討すべきという意見となったが、結局、法制審では、かかる抽象的な要件について意見の一致を見なかったことは上述のとおりである。

 効果論については、不安の抗弁権の適用範囲は限定的に解すべきであり、その効果についても限定的に解すべきこと、また、債権者がいまだ債務不履行をしたわけではないことからすれば、解除まで認める必要性に乏しいと解されるため、解除については反対意見であった。

2 今後の参考になる議論等の紹介

 不安の抗弁権が明文化されなかったことは、上記の通り、その要件について見解の一致をみなかったことにあり、不安の抗弁権自体が否定されたわけではない。したがって、従前どおり、解釈に委ねられていることになり、直ちに実務に影響を与えるものではない。もっとも、法制審における議論は、今後、不安の抗弁権がいかなる場合に認められるかの議論に寄与するものと思われる。

3 残された課題

 いかなる場合に不安の抗弁権が行使できるのかについてはなお不透明な部分がある。不安の抗弁権の濫用を防止する必要がある一方、真に権利行使すべき場面であるにもかかわらず、権利行使の可否が不透明であるがためにその権利行使を断念せざるを得ないというのも望ましい結果ではないであろう。今後、不安の抗弁権が行使できる場面に関する議論が深まることが期待される。

以 上

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