金融庁、「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項及び有価証券報告書レビューの実施について(平成30年度)」を公表
--1月施行の改正企業内容等開示府令への対応等--
金融庁は3月23日、「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項及び有価証券報告書レビューの実施について(平成30年度)」を公表した。
以下、その概要を紹介する。
1 有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項について
平成30年3月期以降の事業年度に係る有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項は以下のとおり。
(1) 新たに適用となる開示制度に係る留意すべき事項
平成30年3月期に適用される開示制度の改正のうち、主なものは平成30年1月に施行された「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」による改正についての記載である(改正内容については、下記「参考」記載の松原論稿を参照)。
(2) 有価証券報告書レビューの審査結果および審査結果を踏まえた留意すべき事項
平成29年度の有価証券報告書レビューの審査結果およびそれを踏まえた留意すべき事項は次のとおりである。
① 繰延税金資産の回収可能性
- ○ 審査内容
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以下の事項について質問するとともに、必要に応じて根拠資料の提供を求めた。
- ・ 企業の分類および当該分類を行った理由
- ・ 一時差異の解消見込年度のスケジューリングおよび将来の課税所得の見積額
- ・ 有価証券報告書における他の項目の記載内容等と整合していない場合には、その理由
- ○ 審査結果
-
以下のような適切ではないと考えられる事例が確認された。
- ・ 過去(3年)および当期の事業年度において、課税所得が期末における将来減算一時差異を下回る年度があるにもかかわらず、(分類1)に該当すると判断している事例
- ・ 過去(3年)および当期の事業年度において、課税所得(臨時的な原因により生じたものを除く)が生じていない年度があるにもかかわらず、(分類2)に該当すると判断している事項
- ・(分類3)に該当する企業において、退職給付引当金や建物の減価償却超過額に係る将来減算一時差異などの解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異について、スケジューリングが行われていない場合
- なお、繰延税金資産の計上額の見積りに用いた業績予測において、現時点において必ずしも合理性を欠くものではないが、将来の大幅な損益改善を見込んでおり、その達成状況によっては当該業績予測を適切に修正する必要があると考えられる事例が確認された。
- ○ 留意すべき事項
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繰延税金資産の回収可能性について、以下の点に留意されたい。
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・ 企業を(分類1)に分類するためには、原則として、以下の要件をいずれも満たす必要があること(繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針第17項)
- ⑴ 過去(3年)および当期のすべての事業年度において、期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得が生じている。
- ⑵ 当期末において、近い将来に経営環境に著しい変化が見込まれない。
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・ 企業を(分類2)に分類するためには、原則として、以下の要件をいずれも満たす必要があること(繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針第19項)
- ⑴ 過去(3年)および当期のすべての事業年度において、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が、期末における将来減算一時差異を下回るものの、安定的に生じている。
- ⑵ 当期末において、近い将来に経営環境に著しい変化が見込まれない。
- ⑶ 過去(3年)および当期のいずれの事業年度においても重要な税務上の欠損金が生じていない。
- ・(分類3)に該当する企業においては、退職給付引当金や建物の減価償却超過額に係る将来減算一時差異などの解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異について、将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)において当該将来減算一時差異のスケジューリングを行う必要があること(繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針第35項)
- ・ 繰延税金資産の計上額を見積る場合に用いる将来の業績予測については、合理的な仮定に基づく必要があること(繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針第32項)
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・ 企業を(分類1)に分類するためには、原則として、以下の要件をいずれも満たす必要があること(繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針第17項)
② 企業結合および事業分離等
- ○ 審査内容
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以下の事項について質問するとともに、必要に応じて根拠資料の提出を求めた。
- ・ 企業結合および事業分離等の概要
- ・ 実施した会計処理
- ・ 有価証券報告書における他の項目の記載内容等と整合していない場合には、その理由
- ○ 審査結果
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以下のような適切ではないと考えられる事例が確認された。
- ・ 企業結合が期首に完了したと仮定したときの連結損益計算書に及ぼす影響の概算額について、算定が困難と認められる特段の事情がないにもかかわらず省略しているなど、取得による企業結合が行われた場合の注記の一部を記載していない事例
- ・ 取得の会計処理において、取得関連費用(外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等)を、発生した事業年度の費用として処理せず、取得原価に含めている事例
- ・ 連結キャッシュ・フロー計算書において、連結範囲の変更を伴わない子会社への投資に係る支出について、「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載せず、「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載している事例
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なお、社内基準により重要性が乏しいとして企業結合等の注記が省略されている場合において、当該社内基準を翌期以降継続することの要否について検討が必要と考えられる事例が確認された。
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○ 留意すべき事項
- ・ 企業結合等が行われた場合には、重要性が乏しい場合を除き、企業結合等の概要等を法令に従って具体的に記載する必要があること(連結財務諸表規則第15条の12、第15条の14、第15条の16、財務諸表等規則第8条の17、第8条の20、第8条の23等)
- ・ 取得の会計処理においては、取得関連費用を発生した事業年度の費用として処理する必要があること(企業結合に関する会計基準第26項)
- ・ 連結範囲の変動を伴わない子会社株式等の取得等に係るキャッシュ・フローについては、当該変動に関連するキャッシュ・フロー(法人税等に関するキャッシュ・フローを除く)を、非支配株主との取引として「財務活動によるキャッシュ、フロー」の区分に記載する必要があること(連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針第9-2項参照)
2 有価証券報告書レビューの実施について
平成30年3月期以降の事業年度に係る有価証券報告書のレビューについては、以下の内容で実施する。
(1) 法令改正関係審査
平成30年1月に施行された「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」による改正について、記載内容を審査する。
(2) 重点テーマ審査
今回(平成30年3月期以降)の重点テーマは、以下のとおりである。
- ・ 引当金、偶発債務等の会計上の見積り項目
- ・ 繰延税金資産の回収可能性
(3) 情報等活用審査
上記に該当しない場合であっても、適時開示や報道、一般投資家等から提供された情報等を勘案して審査を実施する。
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金融庁、有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項及び有価証券報告書レビューの実施について(平成30年度)(3月23日)
https://www.fsa.go.jp/news/29/sonota/20180323-2.html -
○ 別紙1(平成29年度の有価証券報告書レビューの審査結果及びそれを踏まえた留意すべき事項)
https://www.fsa.go.jp/news/29/sonota/20180323-2/01.pdf -
○ 別紙2(平成30年度 有価証券報告書レビュー実施について)
https://www.fsa.go.jp/news/29/sonota/20180323-2/02.pdf -
参考
SH1627 金融庁、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案に対するパブリックコメントの結果等について公表 松原崇弘(2018/02/06)
https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=5388105