金融庁、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案を公表
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業
弁護士 安 藤 紘 人
弁護士 德 永 大 誠
1 はじめに
2023年6月30日、金融庁から「企業内容等の開示に関する内閣府令」、「特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令」、および「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」の各改正案が公表され、パブリックコメントによる意見募集の手続が開始された(募集期間は2023年8月10日12時00分(必着)まで)。これらの改正案は、ガバナンス、保有株式処分・買増しに関する合意や財務上の特約など、有価証券報告書、有価証券届出書(以下「有価証券報告書等」)および臨時報告書において開示すべき重要な契約の類型や求められる開示内容を具体化したものであるため、以下で概観する。
なお、開示の対象となる合意の類型や開示内容については、今後のパブリックコメントによる変更の可能性も考えられるところであり、引続き注視していく必要がある。
2 改正案の概要
⑴ 企業・株主間のガバナンスに関する合意
現在の有価証券報告書においては、企業が経営上の重要な契約を締結している場合に「【経営上の重要な契約等】」の項目でその概要を記載する必要があるが、企業と株主間のガバナンスに関する合意に関する企業側の開示状況は様々である。
改正案では、有価証券報告書等の提出会社が、株主との間で会社のガバナンスに影響を及ぼし得る合意((a)役員候補者指名権の合意、(b)議決権行使内容を拘束する合意、(c)事前承諾事項等に関する合意)を含む契約を締結している場合において、「【重要な契約等】」の項目(改正案で「【経営上の重要な契約等】」から項目名が変更されている)で当該契約についての開示を求めている。
開示内容としては、当該契約の概要(当該契約を締結した年月日、当該契約の相手方の氏名又は名称及び住所並びに当該合意の内容を含む。)、当該合意の目的、取締役会における検討状況その他の当該提出会社における当該合意に係る意思決定に至る過程及び当該合意が当該提出会社の企業統治に及ぼす影響(影響を及ぼさないと考える場合には、その理由)の各項目を具体的に記載することが要求されている。
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(あんどう ひろと)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。2001年東京大学法学部卒業。2002年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。2008年米国Columbia University School of Law (LL.M.)修了。2009年ニューヨーク州弁護士登録。国内外の資本市場における資金調達を中心とするキャピタル・マーケッツ分野をはじめ、国内・クロスボーダーでの企業買収・提携、企業再編など、企業法務全般において豊富な経験を有する。
(とくなが・たいせい)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2019年東京大学法学部卒業。2021年東京大学法科大学院卒業。2022年弁護士登録(第二東京弁護士会)。
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