◇SH3043◇経産省、第6回 新時代の株主総会プロセスの在り方研究会 角野 秀(2020/03/06)

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経産省、第6回 新時代の株主総会プロセスの在り方研究会

岩田合同法律事務所

弁護士 角 野   秀

 

1. はじめに

 本年2月18日、経済産業省が設置した「新時代の株主総会プロセスの在り方研究会[1]」(以下「本研究会」という。)の第6回が開催され、本研究会により策定された「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド(案)」(以下「本ガイド案」という。)に対する意見募集(昨年12月26日~本年2月7日)の結果が公表された。

本稿では、本ガイド案について概説した上で、本ガイド案に対する意見募集結果のうち実務担当者の関心が高いと思われる事項を中心に紹介する。

 

2. 本ガイド案の概要

 本ガイド案は、ハイブリッド型バーチャル株主総会[2]の実施を検討する企業に対し、実施に当たり問題となり得る法的・実務的な論点を明らかにし、望ましいと思われる具体的取扱いを示すことを目的としている。

 本ガイド案では、株主総会にインターネット等の手段を用いて参加する株主が、会社法上の出席となるか否かによって、「ハイブリッド参加型バーチャル株主総会」「ハイブリッド出席型バーチャル株主総会」に分類し、それぞれの取扱いを提示している。

 

出典:本ガイド案(5頁)

 

 本ガイド案の記載項目の概要は以下のとおりである。

ハイブリッド参加型バーチャル株主総会について
  1. ・ リアル株主総会の開催場所に在所しない株主が、会社から通知された固有のID等による株主確認を経て、WEBサイト等で配信される中継動画を傍聴する形態。
  2. ・ 参加型においては、インターネット等の手段を用いて参加する株主は「出席」していないため、会社法上の質問や動議はできないが、議長の裁量において参加者から受け付けたコメント等を取り上げることについては工夫の余地あり。
ハイブリッド出席型バーチャル株主総会について
  1. ・ リアル株主総会の開催場所に在所しない株主が、インターネット等の手段を用いて、株主総会に会社法上の「出席」ができる形態。
  2. ・ 現行の会社法の解釈において「開催場所と株主との間で情報伝達の双方向性と即時性が確保されている」ことを前提に、出席型による開催が許容されている。
  3. ・ 本ガイド案では、リアル株主総会での実務を応用することを基本としつつ、インターネット等の手段を用いた出席は新しい出席態様であることを踏まえ、現在利用可能な技術を前提に、新しい「あるべき実務」とその根拠となる法的考え方を整理。
  4. ・ 論点として、①本人確認、②前提となる環境整備(通信障害についての考え方)、③株主総会の出席と事前の議決権行使の効力の関係、④質問・動議の取扱い等を検討。

 

3. 本ガイド案に対する意見募集結果

 以下では、本ガイド案に対する意見募集の結果[3]の一部を紹介する。

  1. ① ハイブリッド出席型バーチャル株主総会では、株主がインターネット等の手段を活用するため、サイバー攻撃等による通信障害の発生リスクが考えられるところ、本ガイド案では、会社において「経済合理的な範囲において導入可能なサイバーセキュリティ対策」を取ることが必要とされている。この点に関し、決議取消事由に当たらないサイバーセキュリティ対策の具体的な例の提示を求める意見に対して、具体的対策は会社のおかれている状況によって異なることが想定され、本ガイドで示すことが困難であると考えている旨が回答されている(回答10番)。この点については、実務の蓄積を待つほかないと言えよう。
  2. ② また、本ガイド案では、ハイブリッド出席型バーチャル株主総会について、リアル株主総会に出席している株主のID/パスワードを用いて、別途(または同時に)バーチャル出席されてしまう懸念があり得るため、予め対応を定めておく必要がある旨記載されている。この点、対応の具体的な例として、会場出席した株主のID/パスワードでのログインを無効にするといった措置や当該旨の事前通知が考えられる旨の見解が示された(回答17番)。
  3. ③ 本ガイド案において、株主意思を可能な限り尊重し無効票を減らす観点から、株主総会の出席と事前の議決権行使の効力の関係に関して、バーチャル出席株主が事前の議決権行使を行っていた場合、審議参加のための本人確認としてログインを行った時点ではなく、当日の採決のタイミングで新たな議決権行使があった場合に限り、事前の議決権行使の効力を破棄する取扱いが考えられる旨が記載されているところ、出席態様の違いやシステム上の制約の要請から、バーチャル出席株主の議決権行使の締め切りをリアル出席株主よりも必要かつ合理的な範囲で早く設定することは許容されると考えられる旨の見解が示された(回答19番)。
  4. ④ 株主の質問の取扱いについて、バーチャル出席株主とリアル出席株主との間で質疑打ち切りのルールは共通にすべきか、出席態様に応じたルールの設定が考えられるのかとの意見に対し、バーチャル出席株主については、質問・動議の提出について濫用的な行使の可能性が相対的に高くなると考えられることから、予め必要かつ合理的な範囲での運営ルールを設けることは適切な取扱いであろうとの旨の見解が示された(回答21番)。

 

4. 実務への影響

 経済産業省は、本研究会での議論及び意見募集の結果も踏まえ、本年2月26日付けで本ガイドの策定を公表した[4]。今後、本研究会では、株主総会プロセスを巡る近年の内外の制度整備や実務の積み重ねを踏まえ、更なる対話のための環境整備等について検討を行い、検討結果を報告書として公表する予定であるとのことである。

 今後、昨今の新型コロナウイルス感染流行の影響により、バーチャル株主総会の普及が後押しされる可能性も想定される。本ガイドでは、前述のとおり、ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施にあたり問題となる法的・実務的論点を明らかにすることに加え、望ましいと思われる具体的取扱いを提示しているため、ハイブリッド型バーチャル株主総会を検討する会社にとって有益な情報であり参考になるものと考えられる。今後公表される報告書についても引き続き注視が必要である。

以上



[2] 「ハイブリッド型バーチャル株主総会」とは、取締役や株主等が一堂に会する物理的な場所において開催する株主総会(リアル株主総会)に加えて、リアル株主総会の開催場所に在所しない株主がインターネット等の手段を用いて遠隔地からこれに参加/出席することができる株主総会をいうとされている。

[3]ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド(案)に対するご意見の概要及びそれに対する回答https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2020/03/006_05_00.pdf

 

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