◇SH3106◇厚労省、新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)を更新(4月6日) 関口彰正(2020/04/17)

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厚労省、新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)を更新(4月6日)

岩田合同法律事務所

弁護士 関 口 彰 正

 

1 「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」について

 「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」(以下「本Q&A」という。)は、令和2年2月に公表が開始された後、随時更新され、今月11日時点で42個のQ&Aが公表されている。その内容は、労働者を休業させる場合の休業手当・特別休暇に関するものや、雇用調整助成金の特例措置、労働者に新型コロナウイルスの感染者が確認された場合の感染症法や労働安全衛生法の観点からの対応措置等幅広くの論点に対応している。

 今回は、本Q&Aのうち、特に、労働者を休業させる場合の休業手当の取扱いについて触れたQ&Aを取り上げて解説する。

 

2 休業手当の取扱いについて

(1) 法律上の休業手当の取扱い

 休業手当については、労働基準法(以下「労基法」という。)26条に規定されており、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」の場合には、使用者は、当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払う必要がある。すなわち、使用者は、不可抗力によって労働者を休業させる場合には、休業手当を支払う必要はない。

 そして、不可抗力とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2要件を満たす必要があると解されている。例えば、自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分検討するなど休業の回避について通常使用者として行うべき最善の努力を尽くしていないと認められた場合には、不可抗力によるものとはいえないとされている(本Q&A4-問1[1])。

(2) 個々の労働者が休業した場合の休業手当の取扱い

 社内において、感染者が発生した場合、又は感染が疑われる労働者が発生し当該労働者が休業した場合に、休業手当を支払う必要があるか。本Q&Aでは以下のとおり整理されている。

ケース 休業手当に関する対応方法
感染した労働者を休業させる場合 都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合、休業手当を支払う必要はない(本Q&A4-問2)。
感染が疑われる労働者を休業させる場合 保険所等に設置される「帰国者・接触相談者センター」での相談を受けてもらい、当該結果を踏まえても職務継続が可能な労働者や、発熱などの症状があるのみの労働者を、使用者の自主的判断で休業させる場合、休業手当を支払う必要がある(本Q&A4-問3、4)。
感染者が疑われる労働者が自ら休業する場合 感染しているか不明な段階で、発熱などの症状があるために労働者が自主的に休業する場合、通常の病欠と同様、休業手当を支払う必要はない(本Q&A4-問4)。

(3) 事業自体が休止した場合の休業手当の取扱い

 今月7日に7都府県を対象に緊急事態宣言が発令された。また、10日には、東京都が一定の業種には休業要請を行い、11日時点において、緊急事態宣言の対象地域となった府県においても休業要請を行うことが予定されている[2]

 このような緊急事態宣言や休業要請を受けて事業を休止する場合の休業手当の支給の要否について、本Q&Aにおいては、不可抗力の要件である①その原因が事業の外部より発生した事故であること、及び②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることのうち、①については、満たすとされている。そして、②については、例えば、自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分に検討しているか、労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず休業させていないかといった事情から判断すべきとしている(本Q&A4-問7)。

 また、緊急事態宣言の対象外の道府県に所在する会社において事業を休止する場合にも、諸般の事情を総合的に考慮して、不可抗力によるものか否かを判断することになるが、例えば、海外の取引先が新型コロナウイルス感染症を受け事業を休止したことに伴う事業の休止である場合には、当該取引先への依存の程度、他の代替手段の可能性、事業休止からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、判断する必要があるとされる(本Q&A4-問5)。

3 総括

 令和2年4月11日時点での厚生労働省の整理は以上のとおりであるが、厚生労働省の加藤勝信大臣は、同月7日の記者会見において、今般の緊急事態宣言を踏まえて直ちにQ&Aを作成する旨を述べている[3]。今後更新されるQ&Aを注目しておく必要があることに加え、最終的には諸般の事情を総合考慮する必要があることには変わりなく、専門家に判断を仰ぐことが望ましいであろう。

以上

 


[1] なお、労基法26条の「使用者の責めに帰すべき事由」とは、民法上、自己の負う債務を「債権者の責めに帰すべき事由」によって履行をすることができなくなった場合に反対債務の履行を受ける権利を失わないこと(いわゆる危険負担(債権者主義))を定める民法536条2項よりも広いものであるとされている(最二小判昭和62・7・17民集41巻5号1350頁)ことから、本Q&Aの議論が民法上の不可抗力の議論にそのまま当てはまるわけではないことに留意が必要である。

[2] 2020年4月11日付日本経済新聞朝刊33面参照https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57945270Q0A410C2CC1000/

[3] 厚労省、加藤大臣会見概要(令和2年4月7日(火)9:33~9:48)https://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000194708_00231.html

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