SH3417 味の素、指名委員会等設置会社への移行及びサステナビリティ諮問会議の設置 松橋 翔(2020/12/11)

組織法務経営・コーポレートガバナンス

味の素、指名委員会等設置会社への移行及びサステナビリティ諮問会議の設置

岩田合同法律事務所

弁護士 松 橋   翔

 

1 はじめに

 味の素株式会社(以下「味の素」という。)は、2020年11月26日付けで、「味の素㈱の指名委員会等設置会社への移行およびサステナビリティ諮問会議の設置に関するお知らせ」と題するプレスリリース(以下「本プレスリリース」という。)を公表した。本プレスリリースによれば、味の素は、2020年11月26日開催の取締役会において、2021年6月に開催予定の第143回定時株主総会にて承認されることを条件として、同社の機関設計を「監査役会設置会社」から「指名委員会等設置会社」に移行する決議をし、また、これに先立ち同年4月1日付で取締役会の下部機構としてサステナビリティ諮問会議を設置することも決議した旨を公表した。

 指名委員会等設置会社は、米国の上場会社に典型的ないわゆるモニタリング・モデルを参考にして平成14年に「委員会等設置会社」という名称で導入され、その後会社法(以下「法」という。)改正等を経て、現在の「指名委員会等設置会社」という名称に改められた会社である。

 指名委員会等設置会社においては、執行役が会社の業務執行を迅速に決定・実行し、取締役会は、経営の基本方針の決定と執行役の業務執行の監督を行い、社外取締役が過半数を占める指名委員会等が監督の実効性を確保することになる。そのため、指名委員会等設置会社は、機動的な経営と監督機能の強化を志向する機関設計であると言えるであろう。もっとも、日本取締役協会が2020年8月3日付けで公表している「指名委員会等設置会社リスト」[1]によれば、上場企業のうち指名委員会等設置会社の数は、2020年8月3日時点で、77社にとどまっており、日本企業において指名委員会等設置会社が浸透しているとは必ずしも言い難い状況である。このような状況の中で、指名委員会等設置会社への移行の方針を決定した味の素の判断は注目に値する。

 そこで、以下、本プレスリリースに基づき、味の素が指名委員会等設置会社へ移行することに伴って構築するコーポレート・ガバナンス体制について概観することとする。

 

2 本プレスリリースの内容

⑴ 指名委員会等設置会社への移行

 ア 概要

  指名委員会等設置会社移行による味の素のコーポレート・ガバナンス体制の変更概要は以下のとおりである[2]

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(まつはし・しょう)

岩田合同法律事務所アソシエイト。2015年中央大学法学部卒業。2017年慶應義塾大学法科大学院修了。2018年弁護士登録。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>
1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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