SH4937 東証、「プライム市場における英文開示の拡充に向けた上場制度の整備について」パブリック・コメントの概要 新實研人(2024/05/21)

組織法務経営・コーポレートガバナンス

東証、「プライム市場における英文開示の拡充に向けた上場制度の整備について」パブリック・コメントの概要

岩田合同法律事務所

弁護士 新 實 研 人

 

1 はじめに

 プライム市場上場会社における英文開示については、コーポレートガバナンス・コードにおいて、開示書類のうち必要とされる情報について実施すべきであると定められている[1]。もっとも、その開示の範囲については、投資家のニーズ等も踏まえて各企業において適切に判断すべきものとされ、具体的な指針は示されていなかった[2]

 東京証券取引所(以下「東証」という。)の調査[3]によれば、多くのプライム市場上場会社において、英文開示が実施されており、特に決算短信および株主総会招集通知(通知本文・参考書類)については、2023年末時点において約9割の会社が英文開示を実施している。

 もっとも、その他の資料については英文開示が進んでおらず、決算短信を除く適時開示資料については約半数程度、有価証券報告書については約25%程度の会社しか英文開示を実施していない。

 

(東証『英文開示実施状況調査集計レポート』(2024年1月24日)5頁)

 

 東証が海外機関投資家等へ実施した英文開示に関するアンケート結果[4]によれば、ほぼ全ての資料について、必須(英文開示がなければ投資しない。)または必要(英文開示を必要としている。)という回答が75%を上回る結果となっており、英文開示のニーズと企業の実施状況に乖離が生じていた。

 

(東証『英文開示に関する海外投資家アンケート調査結果』(2023年8月31日)17頁)

 

 そのような中、2024年2月26日、東証は、プライム市場上場会社への更なる海外投資家の呼び込み、対話を通じた企業価値向上の促進の観点から、プライム市場における英文開示制度の拡充を行う旨を公表した[5](以下「本公表」という。)。

 本公表の概要は以下の通りである。①は東証による『企業行動規範』[6]の「望まれる事項」に、②は「遵守すべき事項」にそれぞれ追加予定である。

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(にいみ・けんと)

岩田合同法律事務所アソシエイト。2018年大阪大学法学部法学科卒業。2019年弁護士登録。ファイナンス、経済法・競争法、ジェネラルコーポレート等の企業法務全般を取り扱う。

 

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

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1902 年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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