◇SH1432◇金融庁、仮想通貨に関する情報の掲載 柏木健佑(2017/10/12)

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金融庁、仮想通貨に関する情報の掲載について

岩田合同法律事務所

弁護士 柏 木 健 佑

 

1 仮想通貨に関する情報の掲載

 9月29日、金融庁ホームページに、仮想通貨に関する情報が掲載された。仮想通貨に関連した法規制としては、平成29年4月1日に、「資金決済に関する法律」(以下「資金決済法」という。)等の改正を行う「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」(以下「改正法」という。)が施行されている。上記掲載情報は、改正法附則に定められた猶予期間が満了し、「仮想通貨交換業」の登録制度が実質的に動き出す今次において、改めて、「仮想通貨」に関連する制度に関する情報提供を図ったものである。

 本稿では、資金決済法における「仮想通貨」及び「仮想通貨交換業」の概要を紹介の上で、上記掲載情報の意義について述べる。

 

2 「仮想通貨」の定義等

 改正法による資金決済法の改正によって、仮想通貨交換業(仮想通貨の売買・交換やその媒介・代理やそれらに関する金銭・仮想通貨の管理等を業として行うことをいう。資金決済法2条7項)は登録制とされ(資金決済法63条の2)、業登録を受けた仮想通貨交換業者は一定の行為規制に服することとされている。

 そして、資金決済法上、「仮想通貨」は、以下のように定義される。

1号仮想通貨
(資金決済法2条5項1号)

物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。2号仮想通貨も同じ)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

2号仮想通貨
(同条同項2号)

不特定の者を相手方として1号仮想通貨と相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

 同じく資金決済法で定義される前払式支払手段(いわゆるプリペイドカードや電子マネーはこれに該当する)が、発行者やその指定する者(加盟店等)からの物品購入等の代価の弁済に用いられることが予定されている(資金決済法3条1項)のに対し、仮想通貨の定義では発行者の有無は問題とされていない。これは、ビットコインなど、ブロックチェーンを用いた仮想通貨においては特定の発行者を持たないとされていることから、そのような仮想通貨をも想定したものと考えられる。

 また、仮想通貨が「通貨」である要件として、不特定の者を相手方に使用や交換に供することができる財産的価値であることが要件とされている。金融庁の定める事務ガイドライン第三分冊:金融関係会社「16仮想通貨交換業者関係」Ⅰ-1では、仮想通貨への該当性を判断するにあたって、発行者と店舗等との間の契約等により仮想通貨を使用可能な店舗等が限定されていないか、発行者が使用可能な店舗等を管理していないか、あるいは、発行者による制限なく本邦通貨又は外国通貨との交換を行うことができるか、本邦通貨又は外国通貨との交換市場が存在するかといった点が考慮されることが示唆されている。ガイドライン上は本邦通貨又は外国通貨との交換というファクターも考慮に入れられるとされているが、資金決済法上の定義では、法定通貨との交換は必ずしも要件ではなく、不特定の者が財産的価値を認めることにより仮想通貨は「通貨」となると考えられているという点は、通貨の本質を考える上で興味深い。

 

3 仮想通貨交換業のスタートと今後の展望

 改正法附則第8条1項において、同法の施行の際現に仮想通貨交換業を行っている者は、施行日から起算して6ヵ月間は仮想通貨交換業を行うことができるとして猶予期間が置かれていた。金融庁ホームページによれば、9月29日付で株式会社bitFlyer等の11業者が仮想通貨交換業者として登録がなされ、19業者については猶予期間中に登録申請が行われて継続審査中とされている(10月2日現在)。継続審査中の業者についても、登録や登録拒否の処分があるまでは仮想通貨交換業を行うことができる。一方で、報道によれば、必要な条件を満たせず登録申請を行わなかった事業者も12社あり、それらの事業者は日本における仮想通貨取引から撤退することになるとのことである。

 改正法による仮想通貨交換業の規制は、世界に先駆けて仮想通貨取引に規制を導入したものと言われており、仮想通貨の定義も幅広に定義することにより仮想通貨を取り巻く環境の変化に対応することを想定していると思われる。もっとも、フィンテック分野における技術環境の進展は目覚ましく、今後も新たな取引形態が誕生することも想定される。今後も利用者の保護とバランスのとれた技術革新によるマーケットの発展が望まれる。

以上

 

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