◇SH0228◇厚労省、ストレスチェック制度紹介のページを開設 大櫛健一(2015/02/25)

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厚労省、ストレスチェック制度紹介のページを開設

岩田合同法律事務所

弁護士 大 櫛 健 一

 

 厚生労働省は、平成27年2月16日、改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度(以下単に「ストレスチェック制度」という。)の概要と流れを紹介するウェブサイト(以下「本ウェブサイト」という。)を開設した。

 ストレスチェック制度は、平成26年6月25日に公布された改正労働安全衛生法によって定められたものである。その主な内容は、事業者において、①労働者に対して、医師、保健師等による心理的な負担の程度を把握するための検査(以下「ストレスチェック」という。)を実施すること(改正労働安全衛生法第66条の10第1項)、②必要に応じ、労働者に対して、医師による面接指導(以下単に「面接指導」という。)を行ったり、就業上の措置を講じること(同条第2項及び第6項)、及び、③職場の一定規模の集団(部、課など)ごとにストレスチェックの結果(以下「ストレスチェック結果」という。)の集団分析を行い、職場改善に努めること等の義務(従業員数50人未満の事業場については当分の間努力義務)を負うというものであり、実施の具体的な流れは下図のとおりである。

 ストレスチェックや面接指導それ自体は医師等一定の有資格者によって実施されるため、一般的な事業者においては、これらに関する情報管理等や、面接指導の申し出を理由とした労働者に対する不利益取扱いの禁止(同条第3項第2文)等により注意を払う必要がある。

 こうした注意点については、本ウェブサイトに概要が記載されているほか、厚生労働省がストレスチェック制度の具体的な実施方法に関する省令等を策定するために有識者検討会を開催し、その検討結果をとりまとめた平成26年12月17日付「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度に関する検討会報告書」(以下「検討会報告書」という。)[1] に詳しいが、代表的なものを挙げると以下のとおりである。

  1. ストレスチェックを行った医師等は、労働者の同意を得ないで、ストレスチェック結果を事業者に提供してはならない(同条第2項第2文)。ここでいう「労働者の同意」は、受検後にその都度取得することが必要と考えられている(検討会報告書11頁)。
     
  2. ストレスチェック結果や面接指導の結果は、原則として5年間保存しなければならず、事業所内で利用・閲覧する場合にも必要な範囲に限定されることが見込まれている(検討会報告書11~12頁、15~16頁)。
     
  3. 労働者による面接指導の申出を理由として、労働者を不利益に取扱うことは許されない(同条第3項第2文)。また、ストレスチェックを受けないこと、ストレスチェック結果の提供に同意しないこと、面接指導を申し出ないことを理由とした不利益な取扱いや、面接指導の結果を理由とした解雇、雇止め、退職勧奨、不当な配転・職位変更等も行ってはならないとされることが想定されている。

 ストレスチェック制度は平成27年12月1日より施行されるため、事業者においては、それまでに、ストレスチェックや面接指導等の実施を委託する外部機関や弁護士等の専門家と連携しながら、上述した情報管理を含めた社内体制を適切に整備する必要がある。また、ストレスチェック結果や面接指導の結果は保存が義務付けられるため、争訟上のリスク(事業者にとって不利な証拠となり得るリスク)にも留意が必要であろう。

 なお、検討会報告書を踏まえたストレスチェック制度に関する事業者の留意点については、拙稿「ストレスチェック制度に関する事業者の留意点-労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度に関する検討会報告書を踏まえて」NBL1042号98頁も併せて参照されたい。

以上


本ウェブサイト[2] より


[1] http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000069013.html
[2] http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/kouhousanpo/summary/

 

(おおくし・けんいち)

岩田合同法律事務所弁護士。2004年上智大学法学部卒業。2006年弁護士登録。主に、流動化・証券化取引、各種金融機関規制法(銀行法、金融商品取引法等)の検討等のファイナンス案件を専門とする。店頭デリバティブ取引やノックイン型投資信託をはじめとした金融商品の販売に関する訴訟等の紛争解決案件も数多く手がける。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>

1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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