◇SH1517◇東芝、第三者割当により約5700億円を調達 深沢篤嗣(2017/11/28)

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東芝、第三者割当により約5700億円を調達

岩田合同法律事務所

弁護士 深 沢 篤 嗣

 

1 債務超過と上場廃止基準について

 株式会社東芝(以下「東芝」という。)は、米国子会社での巨額損失等により財務状態が急激に悪化し、2017年3月期の決算において5500億円を超える債務超過となった。

 東京証券取引所の有価証券上場規程(以下「上場規程」という。)では、2期連続の債務超過が上場廃止基準として定められている(上場規程601条5号。その他の上場廃止基準については後掲<上場廃止基準(東証一部・二部)一覧>参照)。したがって、東芝が2018年3月期において債務超過を解消できなかった場合には上場廃止となるのであり、これを回避するには、今後約4か月の間に、5500億円以上の資本増強が必要となる。

 この点、東芝は、主力事業であるメモリ事業を、会社分割によって東芝メモリ株式会社に承継して分社化し、同社株式をBain Capital Private Equity, LPを軸とする企業コンソーシアムにより組成される株式会社Pangeaに対して売却する方針であり、2017年9月28日、同社との間で約2兆円で株式譲渡契約を締結している。かかる譲渡が実現すれば、1兆円以上の利益が見込めるとされており、債務超過は解消されることとなる。

 しかしながら、この株式譲渡の実行については、競争法上の当局の承認を取得することが前提条件とされていることや、国際商業会議所(ICC)に提訴された米ウエスタンデジタル社からの差止請求等の不確定要素があり、2018年3月までに実行できない可能性が否定できない。また、東芝は、上場廃止を免れたとしても、主力事業であるメモリ事業を売却することとなるため、収益力を回復させるための財政基盤が必要となる。

 

2 東芝による第三者割当の概要

 このような状況を踏まえ、今般、東芝は、新株式の発行による資金調達を行う旨公表した。2017年11月19日に東芝が公表した、「第三者割当による新株式の発行に関するお知らせ」によると、東芝は、同年12月5日に、第三者割当増資により2,283,105,000株の新株式を発行し5700億円超を調達するとのことである(以下、この第三者割当を「本第三者割当」という。)。

 本第三者割当の発行株式数は、実に、東芝の発行済株式総数の54%に相当し、35%程度の希薄化が生じることとなる。上場規程上、上場会社が、第三者割当による新株式の発行を行う場合で、割り当てる株式の議決権数が、第三者割当の決定前の総議決権の25%以上となる場合等には、原則として、以下の①又は②のいずれかの手続を行う必要がある(上場規程432条、同施行規則435条の2)。本件では、①の手続として、東京証券取引所に独立役員として届け出がされている東芝の監査委員3名から、本第三者割当には必要性及び相当性が認められる旨の意見を取得している。

  1. ① 経営者から一定程度独立した者による当該割当ての必要性及び相当性に関する意見の入手
  2. ② 当該割当てに係る株主総会決議などによる株主の意思確認

 なお、上記のとおり、本第三者割当による希薄化率は35%程度になるが、本第三者割当の公表の翌日である11月20日の終値は、前取引日(同月17日)終値292円に対して275円と、6%安に止まっており、希薄化率を大幅に下回っている。これは、債務超過の解消の目途がつき、上場廃止の不安が後退したことが要因であると報じられている。

 また、本第三者割当の割当先は、著名なヘッジファンドなど60先であり、旧村上ファンド出身者らが設立したシンガポールのエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが含まれる。同社は、本第三者割当以前から東芝の発行済株式総数の9.89%を保有する大株主であったが、本件増資の引受けを行うことで、株式保有割合は11.34%となり、本第三者割当後は筆頭株主となる(2017年11月19日付「主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」参照)。

 

3 「第三者割当」とは

 一般に、上場会社の行う主なエクイティファイナンスの手法としては、

  1. ① 公募
  2. ② 第三者割当
  3. ③ 株主割当
  4. ④ ライツオファリング

などが挙げられる。

 公募とは、発行する株式を引き受ける者を、投資家から広く募集する形態であるが、引受証券会社により、発行者が将来にわたって投資者の期待に応えられるか否か、資本市場における資金調達としてふさわしいか否か及び当該発行者の情報開示が適切に行われているか否かの観点から審査が行われることから(日本証券業協会「有価証券の引受け等に関する規則」12条等)、東芝は、現状における公募の実施は困難と判断したようである。また、公募の場合、株価の変動によって調達価格が変動するため、調達総額が事前に確定しないというデメリットも存在し、債務超過を解消するために増資を行うという趣旨からは、本件に必ずしも適した手法とは言いがたい。

 これに対して、今回東芝が行う「第三者割当」は、発行体企業が、新株式を引き受ける者との間で、その総数の引受けを行う契約を締結した上で新株式を発行する手法である。かかる手法であれば、証券会社の引受審査は不要であり、また、当該契約において引受価格を合意することで、調達価格を事前に固定することが可能である。

 なお、株主割当ては、既存株主に対して、新株式の割当てを受ける権利を付与するものであり、最終的に発行される株式数は、どの程度既存株主がかかる権利を行使するかによるため、資金調達額が不確実であることから、本件では採用されなかった。ライツオファリング(新株予約権無償割当)については、一般的に行われているノンコミットメント型(新株予約権の保有者が権利行使しなかった場合、引受証券会社がその行使を約束する契約を締結しないライツオファリング)の場合、上場規程により債務超過でないことが必要であるため(同規程304条1項3号b)、本件では採用し得ない。

 

4

 本第三者割当により東芝の債務超過は解消される見込みであり、上場廃止となる可能性は低くなったと言える。しかしながら、巨額の損失を発生させた東芝が、失った市場からの信頼をどのように取り戻していくのか、今後も注視したい。

以上

 

 

<上場廃止基準(東証一部・二部) 一覧>

株主数

400人未満(猶予期間1年)

流通株式数

2,000単位未満(猶予期間1年)

流通株式時価総額

5億円未満(猶予期間1年)

流通株式比率

5%未満(所定の書面を提出する場合を除く)(猶予期間なし)

時価総額

  1. a. 10億円未満である場合において、9か月(所定の書面を3か月以内に提出しない場合は3か月)以内に10億円以上とならないとき
  2. b. 上場株式数に2を乗じて得た数値未満である場合において、3か月以内に当該数値以上とならないとき

債務超過

債務超過の状態となった場合において、1年以内に債務超過の状態でなくならなかったとき

売買高

最近1年間の月平均売買高が10単位未満

3か月間売買不成立

有価証券報告書等の提出遅延

監査報告書又は四半期レビュー報告書を添付した有価証券報告書又は四半期報告書を法定提出期限の経過後1か月以内に提出しない場合(有価証券報告書等の提出期限延長の承認を得た場合には、当該承認を得た期間の経過後8日目(休業日を除外する。)までに提出しない場合)

虚偽記載又は不適正意見等

  1. a. 有価証券報告書等に虚偽記載を行った場合であって、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると当取引所が認めるとき
  2. b. 監査報告書又は四半期レビュー報告書に「不適正意見」又は「意見の表明をしない」旨等が記載された場合であって、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると当取引所が認めるとき

特設注意市場銘柄等

  1. a. 特設注意市場銘柄の指定要件に該当するにもかかわらず、内部管理体制等について改善の見込みがないと当取引所が認める場合
  2. b. 特設注意市場銘柄に指定されている間に、内部管理体制等について改善の見込みがなくなったと当取引所が認める場合
  3. c. 特設注意市場銘柄に指定されたにもかかわらず、内部管理体制等について改善がなされ  なかったと当取引所が認める場合

上場契約違反等

上場会社が上場契約に関する重大な違反を行った場合、新規上場申請等に係る宣誓事項について重大な違反を行った場合又は上場契約の当事者でなくなることとなった場合

その他

銀行取引の停止、破産手続 ・再生手続・更生手続、反社会的勢力の関与等

 

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