◇SH2018◇東証、東証上場会社における独立社外取締役の選任状況、委員会設置状況及び相談役・顧問等の開示状況を公表 伊藤広樹(2018/08/07)

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東証、東証上場会社における独立社外取締役の選任状況、
委員会設置状況及び相談役・顧問等の開示状況を公表

岩田合同法律事務所

弁護士 伊 藤 広 樹

 

 株式会社東京証券取引所は、本年7月31日、「東証上場会社における独立社外取締役の選任状況、委員会の設置状況及び相談役・顧問等の開示状況」を公表した。同資料では、本年7月13日までに上場会社が提出したコーポレート・ガバナンスに関する報告書(以下「CG報告書」という。)に基づき、①独立社外取締役の選任状況、②委員会の設置状況、及び③相談役・顧問等の開示状況について集計を行った結果が記載されている。

 独立社外取締役の選任及び指名・報酬に関する任意の諮問委員会の設置については、コーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」という。)の制定・改訂等を始めとする、近時のコーポレートガバナンスに関する議論の高まり等を受け、広がりを見せている。また、相談役・顧問等については、本年1月以降に提出するCG報告書に、新たに記載欄が設けられており、代表取締役社長等を退任した者が引き続き相談役・顧問等に就任している場合等に、その氏名、役職・地位、業務内容等を記載することが想定されている。

 以下では、公表資料において示された①独立社外取締役の選任状況、②委員会の設置状況、及び③相談役・顧問等の開示状況について概説する。

 

1. 独立社外取締役の選任状況

  2名以上 3分の1以上
市場第一部 91.3% 33.6%
JPX日経400 97.7% 40.6%

 以上のとおり、市場第一部の上場会社においては、2名以上の独立社外取締役を選任する会社が全体の9割を超え、また、独立社外取締役が全取締役の3分の1を超える会社が全体の3分の1を超えており、独立社外取締役の複数選任が「当たり前」になっていると言える。また、JPX日経400の上場会社では、独立社外取締役が全取締役の3分の1を超える会社が全体の半数に近付いている点も、特筆すべきであろう。

 この点に関して、CGコードでは、原則4-8において、「3分の1以上の独立社外取締役」の選任に触れているが、これは全ての上場会社に選任を義務付けるものではなく、「少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社」〔注:傍点は筆者〕についてのみ、十分な人数の独立社外取締役を選任すべきとするものであるに留まるが、実務的には、独立社外取締役の人数については、この「3分の1」が一つの基準として機能していると評価でき、また、実際に「3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社」が増えてきていることの現れであると言える。

 

2. 委員会の設置状況

  指名委員会(法定・任意) 報酬委員会(法定・任意)
市場第一部 34.3% 37.7%
JPX日経400 61.2% 63.7%

 以上のとおり、市場第一部の上場会社においては、指名委員会・報酬委員会ともに、これらの委員会を設置している会社が全体の3分の1を超えており、また、JPX日経400の上場会社では、全体の半数以上の会社が指名委員会・報酬委員会を設置している。

 この点に関して、CGコードでは、本年6月1日付の改訂により、監査役会設置会社・監査等委員会設置会社において、独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会等の独立した諮問委員会の設置が求められることとなり(改訂前は例示に留まっていた)(補充原則4-10①)、そのような実務動向も影響を与えていると考えられる。

 なお、上記表には現れていないが、「法定」の指名委員会・報酬委員会を設置している会社、即ち、指名委員会等設置会社は、市場第一部の上場会社でも全体の2.9%に留まっている。いわゆるモニタリングモデルを志向する上場会社も、その方法として指名委員会等設置会社制度を採用するのではなく、監査役会設置会社制度・監査等委員会設置会社制度を採用(維持)しつつ、「任意」の指名委員会・報酬委員会を設置することにより実現しようとする例が多数であると言えよう。

 

3. 相談役・顧問等の開示状況

  相談役・顧問等の開示あり 相談役・顧問等が1名以上
市場第一部 46.6% 55.5%
JPX日経400 69.7% 66.3%

 CG報告書における相談役・顧問等に関する記載は、義務ではなく、あくまでも任意であるものの、以上のとおり、市場第一部の上場会社全体の半数近くの会社がこれを記載し、相談役・顧問等の開示を行っている。また、その中でも、実際に相談役・顧問等が存在している上場会社は半数を超えている。

 相談役・顧問制度については、その適否に議論があるものの、必ずしも一概に否定されるべきものではない。寧ろ、CG報告書における開示等を通じて、株主・投資家に対してその実態を積極的に明らかにすることに加え、望むらくは、株主価値・企業価値の維持・向上に資するものであることを株主・投資家に理解してもらえるよう、積極的にアピールする姿勢が求められていると言えよう。

以 上

 

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