SH4378 産業構造審議会知的財産分科会商標制度小委員会、「商標を活用したブランド戦略展開に向けた商標制度の見直しについて」を公表 関口彰正(2023/03/24)

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産業構造審議会知的財産分科会商標制度小委員会、「商標を活用したブランド戦略展開に向けた商標制度の見直しについて」を公表

岩田合同法律事務所

弁護士 関 口 彰 正

 

1 はじめに

 特許庁に設置された産業構造審議会知的財産分科会商標制度小委員会(以下「本委員会」という。)は、3月10日、報告書「商標を活用したブランド戦略展開に向けた商標制度の見直しについて」(以下「本報告書」という。)及び本報告書の案に対する意見募集の結果を公表した。

 本委員会では、①他人の氏名を含む商標の登録要件緩和、②コンセント制度の導入、③Madrid e-Filingによる商標の国際登録出願時の本国官庁への手数料納付の方法の変更を中心に、商標を活用したブランド戦略展開に向けた商標制度の課題について検討してきた。本報告書は、これらの本委員会における審議内容をまとめたものである。紙面の都合上、上記①及び②についてのみ以下で取り上げる。

 

2 他人の氏名を含む商標の登録要件緩和

 商標法第4条第1項第8号は、「他人の氏名若しくは名称(中略)を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」を商標の不登録事由としている。これは、出願人の商標登録を受ける利益と、他人の氏名・名称等に係る人格的利益の調整を図る趣旨の規定と解されている(最二小判平成17・7・22集民217号595頁参照)。

 従来は、構成中に氏名を含む商標について、同一人による同一の氏名に係る商標の出願の場合には、登録査定がなされていたこともあった。例えば、 (登録第4293672号)[1](登録第5178088号)[2]等である。

 しかし、近時、裁判所では、商標法第4条第1項第8号の適用について厳格に解釈しており、「他人の氏名」の知名度、出願人の知名度の有無等は考慮せず、文言どおり商標の構成中に「他人の氏名」を含むかどうかで同号該当性を判断する傾向にある。これを踏まえ、特許庁の審査・審判実務においても、近時は、出願に係る商標や他人の周知性・著名性、氏名を表記する文字種の相違(例えば、氏名の漢字表記に対するひらがな表記)等にかかわらず、同名の他人(他人が複数存在する場合にはその全員)の承諾が得られなければ、商標登録をすることができないものとして出願が拒絶されている[3]。例えば、過去に登録されたものの、近時同条項を理由に拒絶された例として、以下のようなものがある。

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(せきぐち・あきまさ)

岩田合同法律事務所アソシエイト。2014年慶應義塾大学法学部卒業。2015年弁護士登録。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>

1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

<連絡先>

〒100-6315 東京都千代田区丸の内二丁目4番1号丸の内ビルディング15階 電話 03-3214-6205(代表)

 

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