◇SH2484◇法務省、「変則型登記の解消に向けた法律上の措置に関する担当者骨子案」に関する意見募集結果を公表 飯田浩司(2019/04/17)

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法務省、「変則型登記の解消に向けた法律上の措置に関する担当者骨子案」に関する意見募集結果

岩田合同法律事務所

弁護士 飯 田 浩 司

 

 法務省は、平成31年4月9日、「『変則型登記の解消に向けた法律上の措置に関する担当者骨子案』に関する意見募集結果について」をe-GovのWebページに掲載した(以下「本パブコメ結果」という。)。

 

 「変則型登記」とは、所有権の登記がない一筆の土地のうち、表題部に所有者の氏名又は名称及び住所の全部又は一部が登記されていないものをいい、本パブコメ結果に係る背景は、以下のものである。

 平成29年6月9日公表の閣議決定「経済財政運営と改革の基本方針2017」(いわゆる「骨太の方針」2017年版)は、人口減少に伴い所有者を特定することが困難な土地が増大することも見据えて、登記制度や土地所有権の在り方等の中長期的課題については、関連する審議会等において速やかに検討に着手し、経済財政諮問会議に状況を報告するものとする旨、定めていた(同方針第3章3(2)④)。

 これを受けて、平成29年10月2日、一般社団法人金融財政事情研究会設置・運営により、法務省の関与の下で、「登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会」が発足した[1]。同研究会は「登記制度や土地所有権の在り方等に関する中長期的課題について、民事基本法制の視点から、その論点や考え方等を整理すること」を目的としており、平成30年6月に「中間とりまとめ」を、平成31年2月28日に「最終報告書」(以下「本報告書」という。)を発表しているが、いずれにおいても「変則型登記の解消」が提唱されている。

 他方、本パブコメ結果については、同年1月11日に「変則型登記の解消に向けた法律上の措置に関する担当者骨子案」(以下「本骨子案」という。)の意見募集が公示され[2]、途中、同年2月22日における「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律案」(以下「本法案」という。)の閣議決定、国会提出を挟んで、同年4月9日に本パブコメ結果が発表されている。なお、「変則型登記の解消」について、本報告書の記載と本骨子案の記載はほぼ変わらず、また、本骨子案の内容が本法案の基本的骨格をなしている(本パブコメ結果5頁の回答の記載から、パブコメの意見の一部が本法案に反映されているものと思われる)。

 

 変則型登記の解消の方法については、本骨子案、本法案共に、大きくは、

  1. 登記官の職権による当該土地の所有者等の探索等(その結果による特定・不特定の判断結果についての表題部への登記(本法案15条)を含む。)
  2. 当該土地に所有者等を特定できない旨の表題部登記がされた場合の、利害関係人の申立てによる裁判所の土地管理命令(当該土地の管理・処分権限が専属する特定不能土地等管理者の選任と当該管理者による管理処分権限(保存行為・利用改良行為以外には裁判所の許可を要する)(本法案19条~21条)を含む。)

の規定に分かれている[3](図表1、図表2)。

 

 本パブコメ結果は8頁にわたる。回答の多くは、「運用に当たっての参考にさせていただきます」とするもの等だが、制度の解釈・運用に参考となるものを、要旨、以下に掲記する(末尾は本パブコメ結果の該当頁である)。

  1. ・ 登記官による所有者等の特定の判断は、時効取得も考慮するが実体法上の権利関係を確定するものではない(2頁)
  2. ・ 当該特定判断は、所有者等探索委員の意見を十分に踏まえた上で、最終的には登記官の権限と責任で行われる(2頁)
  3. ・ 表題部所有者とされた者への通知が法務省令で定められる予定(3頁)
  4. ・ 所有者がいずれであるかを特定できないような紛争性のある土地については探索手続きを中止する可能性がある(4頁。本法案17条参照)
  5. ・ 土地管理命令は、変則型登記という歴史的な経緯のある土地について、登記官の調査をもっても所有者等を特定できず、かつ、裁判所の許可を要することをもって正当化される(5頁)。
  6. ・ 対象土地から管理者の報酬や費用を支出できない場合には申立人が予納することを想定し、予納がなければ管理命令が取り消され得る(6頁。本法案29条参照)
  7. ・ 特定社団等帰属土地等管理命令[4]は、当該法人でない社団等の実態が失われている場合等を想定(7頁)

 

 本法案は表題部所有者不明土地に限定して、所有者等を探索し、必要に応じて管理者による管理・処分を認めるものであり、いわゆる所有者不明土地問題の解決に資するものと考えられる。そして、本パブコメ等は、本法案の解釈・運用について、当局(法務省民事局民事第二課)の見解を示すものとして、実務上のインパクトを有するだろう。



[3] 法人でない社団等に所有権が帰属しているが、登記すべき代表者が特定できない場合について特則が設けられている(本法案30条)。

[4] 「特定社団等帰属土地等管理命令」の要旨について、本骨子案は「裁判所は,変則型登記がされた土地・・・であって,第1の3(2)②の登記【著者注:登記官による本法案15条1項4号に定める内容の登記。】において法人でない社団又は財団に属することを理由とする旨の登記がされたものについて,当該法人でない社団又は財団の代表者又は管理人が選任されておらず,かつ,当該法人でない社団又は財団の全ての構成員を特定することができず,又はその所在が明らかでない場合において,必要があると認めるときは,利害関係人の申立てにより,その申立てに係る土地を対象として,第2の1と同様の管理を命ずる処分【著者注:本法案19条の土地管理命令に相当。】をすることができるものとする。」と記載している(本法案30条1項、2条4項、14条1項4号ロ、15条1項4号ロ)。

 

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