◇SH1645◇法務省、複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に関する研究報告書 徳丸大輔(2018/02/15)

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法務省、複数の者が所有する私道の工事において必要な
所有者の同意に関する研究報告書

岩田合同法律事務所

弁護士 徳 丸 大 輔

 

 法務省内に設置された共有私道の保存・管理等に関する事例研究会(以下「本研究会」という。)は、平成30年2月1日、「複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に関する研究報告書~所有者不明私道への対応ガイドライン~」(以下「本研究報告書」という。)を公表した。

 本研究報告書は、所有者を特定したり、その所在を把握したりすることが困難な土地(いわゆる所有者不明土地)に関連して、私道の共有者又は所有者の一部が所在不明な場合(以下「所有者不明私道」という。)を念頭に、所有者不明私道の補修工事等を実施するに際し、私道の共有者又は所有者全員からの同意を取得する必要があるか否かを判断する指針を示すとともに、所在が不明な共有者又は所有者からの同意取得が必要な場合に取り得る手段を整理したものである。

 本研究会が自治体やライフライン事業者を対象に実施したヒアリングによれば、民法の共有物の保存・管理に関する解釈が明確でないこともあり、①地方公共団体においては私道整備に対する助成や私道の補修工事に関し、②電気、上下水道等のライフライン事業者においては、共有私道内の設備の設置・補修工事に関し、私道所有者(共有者)全員の同意を得ることを原則としているとのことである。しかしながら、所有者不明私道については係る同意取得ができないため、主に次のような支障が生じているとのことである。

 

関係者

主な支障の内容

地方公共団体

  1. ・ 私道整備の助成金について、私道所有者全員の工事の同意を助成の条件としていることが多く、所有者不明私道については条件を満たさないため助成金を支出することができない。そのため、私道所有者の費用負担が重く、必要な工事を実施するのが困難となる。
  2. ・ 地方公共団体が私道を工事する場合に、所在不明の私道所有者を探索するために多大な金銭的・人的・時間的コストが生じる。

ライフライン事業者

  1. ・ 共有私道に設備を設置し又は私道内の設備を補修するために必要な工事を実施できず、住民の安全性の観点から望ましくない状態が生じている場合がある。

 

 本研究報告書は、このような支障を①私道の舗装に関する事例、②ライフラインに関する事例、③その他の事例に分類した上で、当該分類に沿って35事例を設定してケーススタディを行っている。例えば、②ライフラインに関する事例として、複数の者が私道敷を共有している場合において、当該私道の地下に設置されている共有者の1名が所有する給水管から漏水したため、当該私道を掘削し給水管を修復する必要が生じたが、共有者の一部が所在不明のため、工事の同意が得られないという事例において、民法249条を根拠に、当該私道下に設置した自己所有の給水管を補修するため、共有持分に応じた使用として、所在不明の共有者の同意がなくとも工事ができるものと考えられると整理している(本研究報告書の事例15参照)。一方で、相互持合型の私道(私道付近の宅地を所有する複数の者がそれぞれの所有する土地を通路として提供することで、数筆の土地により形成されている私道)で同様の給水管の補修事例について、地役権(民法280条)に基づく承役地所有者の受忍義務又は囲繞地通行権に関する民法210条から213条の類推適用による解決策を検討している(同事例16参照)。

 このように、ケーススタディにおいては、民法の共有物に関する規定(民法249条以下)を基礎に、地役権(民法280条以下)、建物の区分所有等に関する法律(私道所有者にマンション所有者が含まれる場合。)、ライフラインに関する法令(水道法、下水道法、ガス事業法、電気事業法など)や関連する判例等も踏まえて、私道の共有者又は所有者全員の同意を取得する必要があるか否かが整理されている。

 また、本研究報告書においては、所在が不明な共有者又は所有者からの同意取得が必要な場合に取り得る手段としての不在者財産管理制度(民法25条以下)や相続財産管理制度(民法952条以下)についても整理されている。

 このように、本研究報告書は、地方公共団体及びライフライン事業者が類似事案を検討する際に参考となるとともに、これらの事業者等に限らず、共有不動産の管理等を業務内容とする事業者にとって、検討・処理する上でのヒントが含まれており、参考となると思われる。

 

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