◇SH3199◇改正著作権法・プログラム登録特例法が公布、改正項目ごと2020年10月・2021年1月の2段階で施行へ――ストリーミング形式の海賊版サイトはなお課題も衆・参とも全会一致で可決・成立 (2020/06/16)

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改正著作権法・プログラム登録特例法が公布、
改正項目ごと2020年10月・2021年1月の2段階で施行へ

――ストリーミング形式の海賊版サイトはなお課題も衆・参とも全会一致で可決・成立――

 

 海賊版対策の強化等を図る「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律」が6月5日、参議院本会議で全会一致をもって原案のとおり可決・成立し、6月12日、公布された(令和2年法律第48号)。

 改正法案は3月10日に閣議決定され、同日、国会提出されていた(SH3077 海賊版対策の強化等を内容とする著作権法改正法案が閣議決定される 冨田雄介(2020/03/27)参照)。衆議院においては5月14日に文部科学委員会に付託されたのち、翌15日、文部科学大臣から提案理由の説明を聴取。20日の委員会審議で①一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構代表理事、②出版広報センター副センター長・株式会社集英社代表取締役社長、③福井健策弁護士ら参考人からの意見聴取等を実施した。大臣・政府参考人らに対する質疑の際には、国立国会図書館長への質疑も行われている。続く22日の審議で質疑を終局、全会一致をもって原案のとおり可決された。26日の衆議院本会議においても可決、同日、参議院に送付。

 参議院においては5月27日に文教科学委員会に付託され、翌28日、文部科学大臣から趣旨説明を聴取したのち、6月2日の審議で大臣・政府参考人に対して質疑を行ったうえ、参考人として①一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構代表理事、②公益社団法人日本漫画家協会常務理事、③上野達弘早稲田大学法学学術院教授に対する質疑を行っている。続く4日、質疑を終局し、全会一致をもって原案のとおり可決。6月5日の参議院本会議で可決・成立したものである。

 なお、衆参両院の委員会採決に際し、両院ともそれぞれ6項目の附帯決議が付された。いずれも1項目は、今回の措置では対応できないストリーミング形式の海賊版サイトの存在に触れ「海賊版対策の徹底に向けた取組を政府一丸となって行うこと」を要請するものとなった。

 海賊版対策が急がれるなかにあって昨年の通常国会では改正法案提出が見送られており、侵害コンテンツのダウンロード違法化について「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」という2つの要請がバランスよく両立する制度設計等について検討を行うため、文化庁著作権課を事務局とし、侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会(座長・土肥一史一橋大学名誉教授、弁護士)を設置。昨年11月~本年1月の間、計3回の審議を経て1月16日付で「議論のまとめ」が公表されるなどの状況があった。

 結果、今般の改正法案の内容は、衆議院の委員会審議における参考人である出版広報センター副センター長・株式会社集英社代表取締役社長の意見によると、「申し上げる内容は、出版社と一枚岩となって海賊版に対峙してきた漫画家を含めた権利者側の総意でもございます」としつつ「かねてより出版社と漫画家が一貫して求めてきた、脱法行為を容易に招かず、かつ、善良なユーザーに過度な萎縮が生じない、バランスに配慮された適切な内容と受けとめております。御審議の後、一刻も早く成立することを切望しております」と述べており、好意的な受止めと捉えられるものとなった。

 多岐にわたる改正項目を改めて俯瞰しておくと、(A)インターネット上の海賊版対策の強化、(B)著作物の円滑な利用を図るための措置、(C)著作権の適切な保護を図るための措置、(D)プログラムの著作物に係る登録制度の整備といった4つに大別できる。これらのうち(A)が、①上記「検討会」での一大課題でもあったリーチサイト対策(改正後の著作権法113条2項~4項等)、そして②侵害コンテンツのダウンロード違法化(同法30条1項4号・2項等)を図るものとなっている。

 上記(B)の観点からは、③写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大(改正後の著作権法30条の2)により、スクリーンショットやインターネットによる生配信などを行う際の写り込みも幅広く認める、④行政手続に係る権利制限規定の整備(同法42条2項)により、(i)地理的表示法に基づく地理的表示の登録、(ii)種苗法に基づく植物の品種登録についても特許審査手続等におけると同様、権利者に許諾なく必要な文献の複製等ができることとする、⑤著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入(同法63条の2)により、特許法におけると同様、著作権者から許諾を受けて著作物を利用する権利に関し、著作権が譲渡された場合の譲受人等に対しても利用の継続を求めることができる――ものとされた。

 さらに、上記(C)の措置として、⑥著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化(改正後の著作権法114条の3)、⑦アクセスコントロールに関する保護の強化(同法2条1項20号・21号、113条7項等)が図られ、また(D)は、⑧プログラム登録特例法上の措置(改正後のプログラム登録特例法4条等)となる。

 改正法は原則として2021年1月1日から施行するものとされているが、①・③・④・⑤の各改正項目は本年10月1日から施行される。

 

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