ベトナム:PPP法の成立③
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 澤 山 啓 伍
(8) プロジェクト会社の設立
PPP案件の実施者として選定された民間事業者は、案件実施のための特別目的会社(以下「事業会社」という。)を設立することが要求されている。事業会社の設立につき、政令第63号では、企業法の定めるところにより行われるとのみ記載されていた。PPP法では、原則として、事業会社の設立、組織管理、活動、解散、破産などに関しては、企業法その他の関連する法令及びPPPプロジェクト契約に準拠することになるとした上で、事業会社は、有限会社又は非公開株式会社形態で設立されることとしている。
事業会社の設立に当たっては以下の点に留意が必要である。
最低自己資本比率
政令第63号及びPPP法では、国による資本拠出部分を除く民間投資部分について、最低自己資本比率を以下のように定めている。政令第63号では、総投資額が1兆5千億ドン(約70億円)以上であるかどうかによって、要求される最低自己資本比率が異なっていたが、PPP法では総投資額の規模にかかわらず、一律に15%以上が求められる。
政令第63号
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PPP法
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総投資額が1兆5千億ドン以下の場合:20%以上 | 15%以上 |
総投資額が1兆5千億ドンを超える場合:1兆5千億ドン以下の部分の20%+1兆5千億ドンを超える部分の10%以上 |
ここでいう「総投資額」は、民間投資部分の自己資本及び借入上限額の合計を意味し、国による拠出部分を含まない。また、国による拠出部分には、資金的な拠出の他、土地、建物及びインフラの供与、土地収用費用などが含まれるとされている。国による拠出部分のうち、土地収用、インフラなどの建設費の部分は、プロジェクトの総投資額の50%を超えてはならないとされている。
事業者は、プロジェクト契約の締結から12ヶ月以内(国会又は首相が投資方針を決定するプロジェクトについては18ヶ月以内)に資金調達を完了する必要がある。当然ながらPPPプロジェクトを実施するに当たっては、その事業会社設立当初から資金需要が発生するわけではないため、当初から最低自己資本比率を満たす資本金を積んでおくことは資金の効率的利用の観点から望ましくない。そのため、政令第63号では、プロジェクト契約に増資のスケジュールを規定していれば、最終的な総投資額との関係で最低の自己資本比率に満たないことも認めている。PPP法では、単に、PPPプロジェクト契約で合意したスケジュールに従い出資しなければならないと定めているのみであるが、同様に、契約で合意されたスケジュールに従っていれば、当初から最低自己資本比率を満たす必要はないものと考えられる。
④につづく