経産省、環境省、「サーキュラー・エコノミーに係るサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」を公表
岩田合同法律事務所
弁護士 深 沢 篤 嗣
1「サーキュラー・エコノミー」とは
2021年1月19日、経済産業省及び環境省は、「サーキュラー・エコノミーに係るサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」(以下「本ガイダンス」という。)を公表した。本ガイダンスは、2020年5月から5回に渡って開催された「サーキュラー・エコノミー及びプラスチック資源循環ファイナンス研究会」(両省が事務局を務めた。)における議論を経て策定されたものである。
既に相当に定着しているESGやSDGsという言葉に比べ、「サーキュラー・エコノミー」(循環経済)という言葉はまだあまり馴染みがないが、従来の「大量生産・大量消費・大量廃棄」のリニアな経済(線形経済)に代わる、製品と資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、廃棄物の発生を最小化した経済を指す言葉である。
我が国でも、政府は、2019年5月、”3R[1]+Renewable(再生可能資源への代替)”を基本原則としたプラスチックの資源循環を総合的に推進するための戦略「プラスチック資源循環戦略」を策定し、取組みを進めている。2020年7月に開始されたレジ袋の有料化もこの一環である。
2 本ガイダンスの概要
サーキュラー・エコノミーに関する取組みは、中長期的な事業活動の持続可能性を高めるとともに、競争力の強化に資するものと言えるが、短期的には企業収益・消費者便益に繋がらない場合も多いため、十分に取組みが進んでいないのが現状である。このような取組みを推進していくためには、企業と投資家等が、より長い時間軸の中で、「企業のサステナビリティ」(企業の稼ぐ力の持続性)と「社会のサステナビリティ」(将来的な社会の姿や持続可能性)を同期化させるための対話やエンゲージメントを行っていくこと(サステナビリティ・トランスフォーメーション、SX)が重要となる。
本ガイダンスは、SXの推進のため、企業が行う情報開示や、それに基づき投資家等と対話・エンゲージメントを行う際に参照される手引きとの位置づけであり、それに当たって双方が着眼すべき項目として次の6項目を示し、各項目の解説や実際の開示・取組みの好例を紹介するものである。
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(ふかざわ・あつし)
岩田合同法律事務所パートナー。2008年慶應義塾大学大学院法務研究科修了。2009年弁護士登録。2013年4月から2014年3月まで、金融庁証券取引等監視委員会取引調査課に出向、インサイダー取引、相場操縦行為等の調査に携わる。金融法務、企業法務等を専門とする。
岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/
<事務所概要>
1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。
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