◇SH3499◇成長戦略会議「競争政策の在り方ワーキンググループ」の初会合が開かれる――競争当局の体制拡充、アドボカシー の強化などを求める複数の意見 (2021/02/24)

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成長戦略会議「競争政策の在り方ワーキンググループ」の初会合が開かれる

――競争当局の体制拡充、アドボカシーの強化などを求める複数の意見――

 

 成長戦略会議(議長・内閣官房長官)に設置された「競争政策の在り方ワーキンググループ」の初会合が2月10日、開催された。

 成長戦略会議が2020年12月1日に取りまとめた「実行計画」では第9章で競争政策を取り上げ、「競争政策の在り方を独禁当局や関係省庁の協力の下、重要課題として取り組む」と位置付けたうえで「幅広い分野について議論するための検討の場を設ける」としている。これを受けて開催されたのが、競争政策の在り方ワーキンググループ(以下「WG」という)である。開催要領には「WGにおける検討結果は成長戦略会議に報告し、議論いただく」とされており、2月17日に開かれた成長戦略会議における審議は今般のWG初会合での議論を踏まえたものとなった。検討結果は、今夏の閣議決定が見込まれる新しい成長戦略に反映される。

 WGへの参加者は「成長戦略会議有識者のほか」次の3名とされている。泉水文雄神戸大学教授(独占禁止法)、高橋進株式会社日本総合研究所チェアマン・エメリタス/規制改革推進会議議長代理、田村次朗慶應義塾大学教授(独占禁止法)。なお、成長戦略会議には有識者として8名が参画しているところ、WGの2月10日会合には竹中平蔵慶応義塾大学名誉教授、デービッド・アトキンソン株式会社小西美術工藝社代表取締役社長の2名が上記3名に加わった。また、当日の会合出席者として、公正取引委員会から経済取引局長・取引部長の2名、事務局となる内閣官房成長戦略会議事務局から事務局長代理補・事務局次長の2名が参加している。

 初会合で事務局から示された「論点案」によると、検討すべき「競争政策の在り方」は(1)時代の変化を踏まえた、今後の競争政策の在り方、(2)スタートアップなどの新規参入・成長促進と競争政策の在り方、(3)インフラ企業と健全な競争市場維持のための競争政策の在り方、(4)地方創生につながる競争政策の在り方の4分野となっており、近時の論点を幅広く取り込んだものと捉えられる。

 「論点案」から各分野における現状認識・問題意識を具体的にみると、上記(1)の関連では「成長戦略の鍵は、これまで実施してきている規制改革の推進と併せ、競争環境の整備を図る競争政策の強化である」「成長戦略の重要課題として、時代の変化を踏まえて、今後の競争政策の在り方を……リデザインする必要がある」と、競争政策に対する現時点の取組方針を改めて示した。

 (2)については「我が国の場合……スタートアップや中小企業の新規参入が抑制されている可能性があるのではないか」「スタートアップや中小企業の新規参入・成長促進を促すための競争政策の在り方を検討する必要があるのではないか」といった問題意識のもと、より具体的には、①大企業とスタートアップ企業の連携に当たってはスタートアップ企業から「大企業と共同研究すると特許権が大企業に独占されたり、周辺の特許を大企業に囲い込まれたりする」といった契約実態の指摘があることとともに、②「足腰の強い中小企業を構築するためにも、独占禁止法及び下請代金法の執行強化を検討することが必要ではないか」といった視点が示されている。

 同様に、上記(3)においては「デジタル市場やエネルギー市場といったインフラ分野において、個別業法に基づく競争環境の整備に加えて、健全な競争市場を維持する観点から競争政策として取り組むべき課題があるのではないか」との指摘が、また(4)では、令和2年5月27日法律第32号として公布された「地域における一般乗合旅客自動車運送事業及び銀行業に係る基盤的なサービスの提供の維持を図るための私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の特例に関する法律」を引合いに出しながら「地域の生活インフラを守る観点から、競争政策の運用の在り方を再検討する必要があるのではないか」とする指摘が掲げられている。

 なお、WGの初会合では公正取引委員会からの説明資料として「競争政策の最近の動向」が配付・公表され、本資料は2月17日の成長戦略会議でも同一資料として用いられた。公取委の広範な取組みを上記(1)~(4)の各視点から取り上げながら、これまでの施策の経緯を把握できるものとなっており、たとえば、上記(2)の関連では「スタートアップとの事業連携に係る指針」が策定中であることなどが確認できる。必要に応じて参考とされたい。

 初会合当日の意見概要によれば、「世界の競争当局に伍し得るようなIT分析チーム、経済分析チーム、逆に言えばGAFAのチームに対抗できるようなチームの創設が必要」「独禁法の執行とともに競争環境整備というのも非常に重要になると思われるが、……公正取引委員会の執行体制は質的にも量的にも全く足りないので、整備が急務」「公正取引委員会の体制を一層拡充し、とりわけアドボカシーに関しては、外部の人材活用も含めて強化すべきではないか」「公取の機能強化は、さらに職員を増やして、今度は専門家をもっともっと増やすというところを頑張らない限り、カバレッジが広くて対応できない」「競争法の執行の問題と競争政策・アドボカシーの問題は車の両輪である。アドボカシーについては、事業・制度の所管官庁が管轄している分野に対して、公取委が競争政策の観点から積極的に参画していく形が望ましいのではないか」「やはりアドボカシーの機能を強化するというようなことが当面の課題になってくると思う。公取のアドボカシー機能がどのぐらいの力を持っているのかと、その力を強めるためにはどうしたらいいのかというのを是非方針として示していくべき」といった声が高い。

 当の公取委が「アドボカシー」として整理するところには「ガイドラインの策定」「実態調査」「規制改革に関する推進・提言」「国際連携」「国民的理解の増進」といった諸施策があり、これらに関する機能強化とともに、公取委の組織としての質的・量的な拡充が見込まれる情勢となっている。

 

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